アリババやJDなど中国のEC企業が注目!次の成長ビジネス「スマートホーム市場」の今とこれから
中国では近年、本を「読む」のではなく「聴く」ことが隙間時間の活用法の1つとして日常生活に浸透してきました。IoTやAI技術の発展に伴い、スマートスピーカーが音声配信プラットフォームに接続することが広く普及してきたからです。
また、スマートスピーカーに対応しているスマート家電製品は巨大な市場ポテンシャルを持つため、ハイテクノロジー大手企業が次々とスマート家電製品の展開を進めています。
時代の潮流に乗って誕生したオーディオブック
現代人の生活テンポが速くなると同時に、隙間時間を有効活用するオーディオブックは中国人の読書習慣に深く影響してきました。ここ数年のオーディオブックの目覚ましい進化で、音声配信プラットフォームは誕生しました。
時間や場所を選ばず情報を得られる音声配信プラットフォームは、手軽に文字を音声に変換できます。たとえば、AI読み取り技術はテキストを高品質な音声形式に変換することにより、ユーザーのさまざまなニーズを満たします。
中国市場で人気の「喜馬拉雅(Himalaya)」
2013年に配信がスタートしたアプリ「喜馬拉雅(Himalaya)」は、中国市場で業界シェア1位の音声配信プラットフォームです。7年間でモバイルユーザーが4.8億人を突破しました。
単純なオーディオブックプラットフォームから、UGC(User Generated Contents:ユーザー自身が作る共有コンテンツ)音声配信プラットフォームとし発展し、ベストセラーとなった音声著作権の70%を保持しています。
プロや読者が朗読した音声をはじめ、ラジオ、音楽、児童教育、漫才、生放送などさまざまなオーディオコンテンツがあります。
喜馬拉雅(Himalaya)のアプリをはじめとした各音声配信プラットフォームは成長を続けており、サービスもコンテンツもより豊富になりました。
大手企業は次々と傘下企業のスマートスピーカーを音声配信プラットフォームに接続し、ユーザーに高品質な音声再生サービスの提供を開始。EC・IT企業からも注目されています。
スマートスピーカーの新たなチャンス
前述の通り、音声配信プラットフォームは膨大なユーザーを抱えているからこそ、各スマートスピーカーブランドから注目を集めました。
具体的な例では、アリババグループの「天猫精霊(Tmall Genie)」、総合家電メーカの小米科技(Xiaomi)の「小愛(XiaoAI)」、京東集団(JD)の「DingDong」、バイドゥの「小度(Xiaodu)」といったスマートスピーカーは相次いで音声配信プラットフォームに接続され、多くのユーザーに利用されています。
「音楽を流す」「オーディオブックやニュースを読み上げる」「宅配便をチェックする」など、ユーザーのニーズに合わせたサービスを提供できる音声配信プラットフォームは、スマートスピーカーに新しいチャンスをもたらすと言っても過言ではありません。
スマートスピーカーの普及を促した「天猫精霊(Tmall Genie)」
アリババグループの「天猫精霊(Tmall Genie)」を例に説明します。
「天猫精霊(Tmall Genie)」に「天猫精霊(Tmall Genie)、喜馬拉雅(Himalaya)を流して」と話しかけると、スマートスピーカーは自動的に喜馬拉雅(Himalara)の人気番組を探して再生。本の名称や作者を言えば、ユーザーの好みに従って本を朗読します。
2017年のW11(ダブルイレブン)で、アリババグループは「天猫精霊X1(Tmall Genie X1)」をタオバオのVIP会員向け優遇価格「99元(約1,515円)」(定価499元、約7,635円)で販売しました。
以降、スマートスピーカーは潜在ニーズを顕在化した製品となり、各世帯への普及が始まりました。
世界シェアを伸ばす中国企業のスマートスピーカー
科学技術分野の市場分析を行うStrategy Analyticsが公表した『2019年Q2世界スマートスピーカー市場出荷量』によると、スマートスピーカーでAmazonは市場シェアの21.9%で1位を維持していますが、Googleがシェア18.5%でAmazonに続いています。そして中国メーカーのバイドゥ(15.3%)、アリババ(14.1%)小米(11.1%)が続き、3社合計で世界市場シェアの40.5%を占めています。
データからも分かるように、スマートスピーカーは世界規模で急速に普及が進んでおり、中国市場には膨大な潜在能力があります。中国の大手ハイテク企業はスマートスピーカー市場で激しい競争を繰り広げており、スマートスピーカーの発展を後押ししています。
また、AIとIoTの応用範囲が拡大するにつれて、EC・IT大手企業はスマートスピーカーの背後にある巨大なスマートホーム市場に相次いで進出しています。
スマートスピーカーからスマートホーム市場へ
今、中国スマートホーム市場では2大陣営であるアリババグループの「天猫精霊(Tmall Genie)」と小米科技グループの「小米スマートエコチェーン(EcoChain smartmi)」が激しい競争を続けています。
「天猫精霊(Tmall Genie)」
2017年、「天猫精霊公式旗艦店」では黒と白のスマートスピーカー「天猫精霊X1(Tmall Genie X1)」しか販売していませんでしたが、現在は若年層向けの多くのコラボレーション版を展開。たとえば、「天猫精霊(Tmall Genie)」でスターバックスのコーヒーが注文できるスターバックス版、ドラえもん版などがあります。
それ以外に、「天猫精霊公式旗艦店」はデバイスのON/OFFを音声コマンドで操作できるスマートスケットや、調光・調色が可能なスマートLEDランプなどのスマート家電製品を販売しています。商品を購入後、天猫精霊アプリでデバイスを追加すると、音声制御ができるようになります。
小米スマートホーム用品エコシステム
アリババグループと異なり、小米科技(Xiaomi)は自社ブランド製品開発からスマートホーム用品市場へ参入し、第三者ブランドと業務連携をしていきました。2017年4月に小米参加のECサイト「小米有品」をリリースして、スマートホーム用品の分野に乗り出しました。
「有品」はスマートホーム用品を専門に取り扱うプラットフォームから発展した小米傘下の生活用品ショッピングモール。自社ブランド製品だけでなく第三者ブランドの製品を販売し、スマホに限らずアパレル、美術品、調理用品、ペットなども取り扱っています。
オンラインECプラットフォームのほかに、ハイテクノロジー技術を持つ小米は、「米家(MI HOME)」アプリを使い、loTプラットフォームとスマートデバイスの一元管理を実現しました。
米経済誌「フォーチュン(Fortune)」が2019年7月に発表した2019年世界企業番付「フォーチュン・グローバル500」では、初めて小米が468位にランクインしました。また、2019年世界企業番付「フォーチュン・グローバル未来50」の中でも7位にランキングされるなど、高い評価を受けています。(「フォーチュン・グローバル未来50」は、「市場潜在力」と「潜在力を引き出す能力」によってランキングされます)
海外メディアによると、Appleは2019年に人員募集を行いスマートホーム用品の事業展開を計画しているようです。また、音声配信プラットフォーム「喜馬拉雅(Himlalaya)」は「小雅」スマートスピーカーを開発、音声コンテンツをスマートデバイスに接続するとのことです。
オーディオブックからスマートスピーカーへ、またスマートホーム用品へと、変化の激しい中国市場が製品技術とサービスの成長を後押しています。今後loTやAI、5Gなどが急速に普及することで、スマートホーム企業の黄金時代になることが予想されます。
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