Digital Commerce 360[転載元] 8/29 8:00

Amazonは、ユーザーが自身のAmazonアカウントを写真共有サービス「Pinterest」または動画共有アプリ「TikTok」に連携すると、シームレスにAmazonの商品を買い物できる新機能を発表しました。専門家は、Amazonにとって顧客層が広がるといったメリットのほか、デメリットも生じる可能性があると指摘しています。

Amazon、PinterestとTikTokでの販売ルートを開拓

Amazonはソーシャルメディアとの連携を進めており、「Pinterest」や「TikTok」にログインしたユーザーがアプリ内でそのまま買い物できる機能の提供を始めました。

この新機能は「TikTok」と「Pinterest」のユーザーが、自身のアカウントをAmazonのアカウントに連携すると利用できるようになります。

「TikTok」とAmazonが連携(画像は「TikTok」のニュースリリースから編集部がキャプチャ)
「TikTok」とAmazonが連携(画像は「TikTok」のブログから編集部がキャプチャ)

米国のEC専門誌『Digital Commerce 360』のインタビューに、Amazonの広報担当者は、Amazonが「Pinterest」や「TikTok」と提携する狙いを次のように説明しました。

Amazonは、SNSアプリ内のショッピング機能を拡大することで、顧客がソーシャルメディア上で買い物することをより便利にしています。顧客は今や「TikTok」や「Pinterest」のアプリを離れることなく、ポップアップ表示されるAmazonの広告をクリックして買い物できるのです。(Aamzonの広報担当者)。

米国でAmazonアカウントを「TikTok」や「Pinterest」に連携する顧客には、表示されるAmazonの商品広告にリアルタイムの価格、プライム特典、配送予定、商品詳細が表示されます。

ただし、Amazonの買い物を「TikTok」や「Pinterest」のアプリ内ですべてできるわけではありません。

「TikTok」や「Pinterest」のアプリ内ショッピングでPRされる商品は、Amazonの直販またはAmazonに出品している小売事業者が販売している一部の商品のみです。(Aamzonの広報担当者)

提携のメリットとリスク

小売業界に詳しい専門家は、Amazonによる「TikTok」「Pinterest」との新たな提携にはメリットとデメリットがあると見ています。

Amazonと「TikTok」で美容·化粧品ブランドの販売代理サービスを提供しているSuperOrdinaryのジュリアン・レイズ創業者兼CEOは、Amazonによるプラットフォームとの新たな提携を注視しています。

「TikTok」との連携は、Amazonの売り上げを伸ばし、デジタルマーケティングを加速する機会をもたらす一方で、販売されるブランドの管理、小売事業者によるプラットフォームへのますますの依存、独占禁止法などの規制の問題などに関する潜在的なリスクももたらします。(レイズ氏)

また、Amazonに出品するブランドがこれらのプラットフォームでのプレゼンスを完全にコントロールし続けるためには、これまで以上にAmazonと「TikTok」の両方で、隅々まで管理することが不可欠だとレイズ氏は説明しています。

提携先サービスの人気や事業方針に影響される懸念

Amazonにとって最も大きなリスクは、コントロールが効かなくなることです。「TikTok」を入口としたAmazonでのショッピング体験がシームレスでなければ、Amazonのブランドイメージが損なわれるが可能性があるとレイズ氏は指摘します。

何らかの理由で「TikTok」の人気が落ちれば、Amazonにも影響がおよぶ可能性があります。あるいは、「TikTok」や「Pinterest」が方針を転換すれば、そのことがAmazonにも影響するかも知れません。

もし、売り上げの大部分を「TikTok」に依存すると、Amazonは「TikTok」のアルゴリズム、方針、事業戦略の変更に影響されるリスクを負うことになる可能性があります。(レイズ氏)

Amazon、脱・平面カタログのUIに挑戦、「Temu」に対抗する布石

小売事業者向けのコンサルティング会社5 New Digitalの創設者兼チーフストラテジストであるマイケル・ザックール氏は、今回の動きはAmazonにとってプラスになると述べています。

今回の提携は、Amazonにとって異例かつ大胆な動きだと言えます。Web上で平面的なカタログのように商品を陳列して見せる従来の手法から、「TikTok」や「Pinterest」などを介して「没入型コマース」のモデルへの移行をめざす、より大きな取り組みの一環です。(ザックール氏)

この提携は、中国EC大手「拼多多(Pinduoduo、ピンドウドウ)」のPDD Holdingsが海外向けに展開している激安ECサイト「Temu(ティームー)」に対抗するため、格安の越境ECプラットフォームを提供すると発表したAmazonの戦略にも合致しているとザックール氏は指摘しています。また、Amazonが若年顧客層をさらに獲得することにも役立つでしょう。

提携により、Amazonにとって自社で新たなSNSを構築することなく、ソーシャルメディアでのリーチを拡大できます。「TikTok」や「Pinterest」のユーザーに利便性を提供し、消費者のインサイトとデータを獲得できるなど、Amazonにメリットをもたらします。(ザックール氏)

この記事は今西由加さんが翻訳。世界最大級のEC専門メディア『Digital Commerce 360』(旧『Internet RETAILER』)の記事をネットショップ担当者フォーラムが、天井秀和さん白川久美さん中島郁さんの協力を得て、日本向けに編集したものです。

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