Amazonの激安ECプラットフォーム「Amazon Haul」とは? 「Temu」「SHEIN」に対抗する低価格サイトの特長
Amazonは11月13日、低価格を重視したECモール「Amazon Haul(ホール)」を開設しました。「拼多多(Pinduoduo、ピンドウドウ)」を展開する中国EC大手PDDHDが海外向けに展開している越境ECサイト「Temu(ティームー)」、SHEIN Grpup(シーイン・グループ)が展開するファストファッションブランド「SHEIN(シーイン)」に対抗するのが狙いです。現時点で判明している「Haul」の特長を解説します。
大半の商品が10ドル以下、「Temu」「SHEIN」に対抗する激安EC
ベータ版として開設した「Amazon Haul」は、「amazon.com」内で専用ページを設ける形で運営をスタートしました。多くの消費者が価格高騰に直面しているなか、低価格を重視する米国消費者を獲得しようとしています。これは、「Temu」「SHEIN」など大手ディスカウントECモールに対抗するための、Amazonにとってこれまでで最大の取り組みと言えます。
「Amazon Haul」で販売する商品の上限価格は20ドルで、ほとんどの商品は10ドル以下です。なかには、値付けが1ドルの超低価格商品もあります。ほとんどの商品を中国の販売業者から直接仕入れることで低価格を実現。注文を受けた商品の配送にかかるリードタイムは、通常1週間から2週間となっています。
Amazonのワールドワイド販売パートナーサービス担当副社長であるダルメッシュ・メータ氏は「Amazon Haul」について次のように説明しています。
お客さまにとって、気に入った商品を低価格で見つけられるのは大切なことです。Amazonは販売事業者と協力して、販売事業者が超低価格で商品を出品できる方法を模索し続けています。(メータ氏)
オンラインで低価格での買い物を好む人たちの大半は、モバイル端末で買い物をする
「Amazon Haul」は現在、米AmazonのモバイルアプリとWebブラウザでのみ利用できます。Amazonによると、オンラインで低価格での買い物を好む人たちの大半は、モバイル端末で買い物をする傾向があるそうです。
Amazonは今後、「Amazon Haul」を利用する顧客からのフィードバックに基づいて改善、拡大する計画です。拡大に向けた具体的な構想はまだ明らかになっていません。
「Amazon Haul」では手頃な価格のさまざまな商品を販売しています。取扱カテゴリーはファッション、家庭用品、電化製品など。米国の消費者が「Amazon Haul」にアクセスする方法は、Amazonのサイト上で「Haul」を検索する、Amazonのメインメニューからたどり着く、モバイルブラウザーで「www.amazon.com/haul」にアクセスする――の3種類です。
送料無料ラインや割引でまとめ買いを推奨
「Amazon Haul」は、「Temu」や「SHEIN」に似たグリッドスタイルのサイトデザインを採用。そして、低価格の商品を取り扱っていることをPRしています。
バナーには「信じられないほどの激安価格」といったキャッチコピーを使用して商品を宣伝。たとえば冬用手袋が3.21ドルなどで販売しています。激安販売の例は、ほかにも、iPhoneケースが1.79ドル、グリル用トング2個セットが4.99ドルなどがあげられます。
合計25ドル以上の注文を受けた場合は送料無料。それより少ない注文には3.99ドルの手数料を徴収します。Amazonは顧客にまとめ買いを促すため、送料無料ラインの設定だけでなく、50ドル以上の注文で5%の割引、75ドルを超える注文で10%の割引を提供しています。
商品の保証による顧客保護の取り組み
Amazonは激安商品に対する消費者からの信頼を得るため、「Amazon Haul」で取り扱う商品はすべて安全性、真正性、ルールに準拠しているかどうかを審査しています。購入品はAmazonのA-to-Z保証によって裏付けられています。A-to-Z保証は、Amazonが提供する購入者保護プログラム。購入商品の破損、欠陥、不当表示などの問題をカバーし、購入者が安心して買い物できるよう保護します。
さらに、「Amazon Haul」で購入した商品は、15日以内であれば3ドル以上の商品は無料で返品できます。顧客は各地のAmazonロッカーや、スーパーマーケットのWhole Foods(ホールフーズ)、物流業者UPS、文房具店Staplesなどが提供する全国8000か所以上の返却場所で商品を返品できます。
当局による「Temu」「SHEIN」の規制の動き
Amazonがこのように「Amazon Haul」で取り扱う商品の安全性やコンプライアンスを重視している一方、競合他社の「Temu」「SHEIN」は欧州と米国で取りざたされている規制上の問題に直面しています。
「Temu」を展開するPDDHDは、違法商品の販売を未善に防止できなかったとして欧州委員会の調査を受けています。欧州圏では現在、約9200万人のユーザーが「Temu」を利用しています。PDDHDは規制当局に対し、調査に全面的に協力すると表明しています。
2023年に欧州で前期比68%増の売上アップを記録した「SHEIN」を運営するSHEIN Grpupは現在、企業が行う環境活動に関して消費者をだます「グリーンウォッシング」の疑いでイタリアの規制当局から調査を受けています。
米国では、バイデン政権が提案した改革案により、800ドル以下の小口貨物には関税を課さずに簡易な手続きだけで輸入できる制度(デミニミスルール)を見直す可能性があります。まさに「Temu」「SHEIN」などの激安商品を扱うプラットフォームがターゲットになっています。
一部の評論家は、激安商品を扱う企業は関税を課せられることを回避するために、デミニミスルールを乱用していると批判しています。政府側はこの抜け穴を一部の企業が利用し、不当な利益を享受していると主張しています。