楽天店舗向けクレカ不正利用の損失補償サービス化の背景と狙い~楽天グループ担当者に聞く
楽天の100%子会社で、「楽天生命」などの保険サービスを展開する楽天インシュアランスプランニングは5月1日、楽天市場の出店店舗を対象に、クレジットカードの不正利用で発生した損失を補償するチャージバック補償サービスの受付を開始した(関連記事)。
チャージバックを補償するサービスはEC業界では珍しく、楽天が始めた狙いは何なのか。今後の展開を含めて楽天インシュアランスプランニングの堀籠太郎リーダーと加藤拓之営業推進部長に聞いた。
チャージバック補償制度を求める多くの出店者の声でサービス化
――チャージバックサービスを始めた狙いは何なのか。
堀籠:従来、チャージバックに対する損害はすべて出店店舗が負担することになっていた。ただ、出店者の多くは中小企業なので、チャージバックの被害によって事業が傾くというケースも少なくなかった。そのため、多くの出店者から、チャージバックを補償するサービスを作って欲しいという話をいただいており、保険会社のシステムを利用することでサービスを展開できると考えた。
――楽天市場内のチャージバック発生率は高まっていたのか。
堀籠:そんなことはない。チャージバック発生率は、楽天や楽天カードが随時新たな施策を打ってきた効果で、年々下がってきている。とはいえ、チャージバックに困っているという出店者の声は聞いていたので、それに対するサービスを考えて用意することになった。
――すでにチャージバック補償サービスを展開している決済代行事業者の場合、保証会社と組んでサービス提供する事例が多いが、御社ではどのようにサービスを提供するのか。
加藤:今回は保険の枠組みを利用できるため、どこか他の保証会社と組むことはなく、楽天インシュアランスプランニングとしてサービスを提供する。
――今回、2種類のコースを用意した。
加藤:店舗の大きさや商品構成によってグレードを2つ分けた方が利用しやすいと考え2種類にした。今後、提供していく中で、より高額な補償を行うコースなどが必要であれば将来的に検討したい。
日々増える問い合わせ、数千店舗の加盟を見込む
――取扱商品ジャンルによってチャージバックが発生しやすいジャンルと、発生しにくいジャンルがある。たとえば、発生しやすいジャンルの店舗はサービス導入に条件が付くといったことはあるのか。
堀籠:どんなジャンルでもサービス導入に制限をかけるということはない。確かに発生しやすいジャンルというのはあるだろうが、今回は加入のしやすさに重点を置いたため、どのジャンルでも同じサービスにした。
――海外からの注文に対しても今回の補償の対象となるのか。
加藤:国際販売においてはチャージバック補償サービスをすでに提供しており、今回のサービスは国内からの注文に限って補償するサービスとなる。今後も、両サービスを併存する形で続けていく考えだ。
――5月1日にサービスを発表して半月、反響はどうか。
堀籠:日々お問い合わせの電話が増えており、スタートとしては順調だと思う。今後、「楽天EXPO」などを通じて店舗に伝えていくことで、このサービスについて知らない店舗がないようにしたい。
――目標とする加入店数は。
加藤:具体的な数値は話すことができないが、数千店舗の加入を見込んでいる。
――今後の展開は。
堀籠:まずは、チャージバック補償サービスを多くの店舗について知ってもらえるように活動を行っていく。当社ではこのほか、情報漏えい保険などEC事業者向けサービスを行っており、今後こうしたサービスを合わせて提案し、EC事業者にとって楽天インシュアランスプランニングがより身近な存在になるようにしていきたい。