【2023年の投資方針】EC実施企業はどんなテクノロジーへ投資する? 重要ポイントは「導入が簡単で、使い勝手が良いこと」
米国のEC専門誌『Digital Commerce 360』が公表したレポート「2023 Leading Vendors Report」では、小売事業者がどのようにテクノロジーを使ってカスタマージャーニーをトラッキングしているのか、その事例を紹介しています。どのようにデータを収集し、新規顧客の獲得や既存顧客の維持に活用しているかをひも解いていきます。
- オンライン通販事業者の39%が、2023年にはテクノロジーへの投資が10.1%から15%増えると回答
- 回答者の70%が、自社で構築するよりもアウトソーシングすることを計画
コロナ禍で多くの小売事業者がeコマースに参入し、消費者はオンラインショッピングを楽しむようになりました。
小売事業者は今、どのようなテクノロジーが既存顧客の維持と新規顧客の獲得に役立つかを見直すために、一歩を踏み出しています。
『Digital Commerce 360』の2023年版「Leading Vendors Report」では、テクノロジーが小売業にどのように貢献しているかを示す調査データとケーススタディを掲載しています。
2022年9月から10月にかけて実施した『Digital Commerce 360』の調査によると、対象の小売企業の4分の3(76%)が2023年に新規顧客の獲得とロイヤルティの維持のため、テクノロジーへの投資を増やす予定です。
※記事初出時、グラフの数値に誤りがあったため数値を修正いたしました(12/2)
小売事業者が自問すべきは、テクノロジーをアウトソーシングするか、それとも自社で構築するかということです。調査によると、回答企業の70%が自社でシステムを構築するよりも、アウトソーシングすることを計画しています。
小売業にとって重要なテクノロジーは何か?
オンライン通販事業者は、どのテクノロジーが最も効果的かを判断しています。可能な限り自動化を進め、データを読み解き、活用する方法を学びたいと考えてます。
そのためには投資が必要です。2023年の投資について小売事業者の4社に3社は、2022年比で15%以下の投資増を見込んでいます。また、39%は投資が10.1%から15%増加すると予測しています。
多くのオンライン通販事業者の最優先事項にフォーカスすると、約半数(46%)がeコマース・プラットフォームへの投資をトップにあげました。
その他の優先事項としては、顧客管理に関するテクノロジー(34%)、オンラインマーケティング(30%)、コンテンツ管理およびカスタマーサービス・ソフトウェアがそれぞれ27%でした。
重要ポイントは「導入しやすく、使いやすいテクノロジー」
米国の小売衣料品ブランド「PacSun」は、15年前に導入した一昔前のソフトウェアを最新のテクノロジーで刷新。オンラインと店舗でのカスタマージャーニーをリンクさせ、出荷とフルフィルメント戦略をアップデートしました。
「PacSun」のデジタルの普及率(EC化率)は、「ビジネス全体の約35%」(最高情報責任者のシャーリー・ガオ氏)。さまざまなテクノロジーを導入することで、消費者が期待する迅速な出荷を実現しながら、コストを削減する方法を見つけ出そうとしています。
半数以上(54%)の小売事業者は、「新しいソフトウェアは導入が簡単であること、そして使い勝手が良いことが重要なポイント」にあげています。
米国の食品ギフト企業「Hickory Farms」のジェン・パーティン氏(メール・SMS担当シニアマーケティングマネージャー)は、メールソフトウェアを使用して、メールの開封率とその後のデータ収集を自動化した例を紹介します。
「Hickory Farms」の2021年におけるEC売上は、コロナ禍前の2019年と比較して59%増加しました。新たに獲得した顧客をリピート購入・ファン育成につなげるため、メールからの訪問者の直帰率を最小化するソフトウェアに投資しました。1年間で最も忙しい時期である2021年のホリデーシーズンに向けて、直帰率が3倍近くに跳ね上がっていたためです。
受信箱のスペースを奪い合い、1日に4通もメールを送っているうちに、もう12月がやってきました。どうしたら「Hickory Farms」のメールに気づいてもらえるか、真剣に考える必要がありました。(パーティーン氏)
小売事業者は、忙しいため可能な限り業務を自動化することを望んでいます。