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【2023年EC市場を米国専門誌が予測】ビックテック企業への反発、大手による買収加速、反トラストでAmazonに新たな動き?

米国政府によるビッグテック企業の取り締まりから、Amazonの不審な行為への反トラスト(独占禁止)対応まで、2023年にオンライン小売事業者が注目すべき点について考察します

Digital Commerce 360[転載元]

2023年1月19日 8:00

コロナ禍が始まってから3年経っても、消費者はECサイトでの買い物を続け、その利用拡大が止まる気配はありません。2023年、消費者の習慣はどのように変化するのか――。米国のEC専門誌大手『Digital Commerce 360』の編集部が、2023年にオンライン小売事業者が注目すべき点について考察します。『Digital Commerce 360』の試算によると、コロナ禍でオンラインショッピングは加速し、Eコマースの市場の規模を本来の3年先まで押し上げました。

現在、2023年はこの勢いを維持できるかどうかがポイントになります。米国政府によるビッグテック企業の取り締まりから、Amazonの不審な行為への反トラスト(独占禁止)対応まで、編集部が注目する2023年の動きを紹介します。

ビッグテック企業への反発、「数十年前と同じような状況が起こる」

『Digital Commerce 360』のポール・コンリー氏(編集、リサーチ担当ディレクター)は、2023年にビッグテックとソーシャルメディアに対する反動が起こると予想しています。また、それがオンライン小売事業者に劇的な影響を与えると考えています。

中国の影響力が増大していることやデータ収集への懸念が高まるなか、米国の政治家はTikTokに対して警戒を強めています。

テスラCEOの実業家であるイーロン・マスク氏が買収する以前から広告主の悩みの種だったTwitterは「今やブランドがこぞって逃げ出している」とコンリー氏は指摘。ソーシャルメディアが廃れ、巨大企業が敬遠される新たな世界市場で、小売業はどのように変ぼうしていくのでしょうか。

コンリー氏はこれについて「数十年前と同じような状況が起こる」と考えています。

Barnes & Noble Booksellers(編注:米国最大の書店チェーン)、Ross(編注:米国のディスカウントデパートチェーン)、T.J. Maxx(編注:米国のデパートチェーン)、 Marshalls(編注:米国のデパートチェーン)などは、Eコマースのユニコーン企業がコロナ禍初期の追い風を失った今、急速なペースで新店舗を建設している。(コンリー氏)

サステナビリティは引き続き重要な要素に

消費者にとってサステナビリティの重要性が増すにつれ、販売店もサステナビリティを優先する必要があります。

しかし、リテール部門編集ディレクターのエイプリル・ベルテン氏は「“サステナブル”という言葉を並べるだけでは十分ではない」と言います。消費者は透明性を求めているのです。

消費者は、自分たちの消費習慣が環境にどのような影響を与えるかを考えています。これまで以上に、販売店がどのように商品を製造しているのか、詳細を知りたがっているのです。「小売事業者は、もはや根拠を示さずにサステナブルであると主張することはできないでしょう」とベルテン氏は話しています。

リテールメディアネットワークへの依存度を高めるデジタルマーケティング担当者
シニアエディターのグレッチェン・サロイス氏は次のように予想しています。

2023年にデジタルマーケティング担当者は消費者の共感を得るために、リテールメディアにより依存し、貴重なファーストパーティデータ(=自社で取得したデータ)を活用するようになる。(サロイス氏)

また、消費者の買い物の仕方はさらに変わってきていくでしょう。そのため、デジタルマーケティング担当者は、消費者がWebサイト、ソーシャルメディア、または店舗を歩いているときに広告を見るかどうかにかかわらず、アピールするための顧客データ活用の方法を学んでいきます。

3700万人以上のロイヤルティ会員を誇るUlta Beautyは、独自の小売メディアネットワーク「UB Media」を立ち上げました。UB Mediaの副社長ブレント・ロッソ氏は「“比類ないファーストパーティデータの力を利用して”美容愛好家とつながることを計画している」と説明しています。

Ulta Beauty(ウルタビューティー)のECサイト
Ulta BeautyのECサイト(画像は編集部がキャプチャして追加)

オンライン通販利用者を惹きつけたいと考えている老舗小売事業者にとっても、リテールメディアの運用はチャンスとなるでしょう。

その1つの例として、米国の老舗百貨店チェーンのLord&Taylorは旗艦店を閉店、2021年春にオンライン専用店舗に生まれ変わりました。2023年には、動画内でショッピングが可能なブランドビデオを配信する予定です。

大手企業が資金難のオンライン小売事業者を買収

編集長のドン・デイビス氏は、「WalmartやTargetといった小売事業者や、小売に特化したプライベートエクイティファンド(編注:未公開株に関する運用を行うファンド)のSycamore Capitalなどの傘下に入るオンライン小売事業者が増えるだろう」と予測しています。

Sycamore CapitalのWebサイト
Sycamore CapitalのWebサイト(画像は編集部がキャプチャして追加)

ベンチャーキャピタルと資金調達の話をしても、ネット専業の小売事業者や、ネットを中心に事業を展開する新興ブランドは、ほぼ門前払いされている。(デイビス氏)

オンラインベースの小売事業者のほとんどは、利益を上げるのに苦労しています。そして、成長余地のあるハイテク企業のIPO市場は飽和状態です。

このため「ベンチャーキャピタルがこれらの企業に投資しても、大きな報酬を得られる可能性はほとんどない」とデイビス氏は指摘。少なくとも収支を合わせることができないオンライン小売事業者は、新しい方法を模索することになるでしょう。

独占禁止法への回答を迫られるAmazon

最後にデイビス氏は、連邦取引委員会のリナ・カーン委員長にとって、Amazonに対しての反トラスト(独占禁止)理論のアクションを「やるか、黙るか(やらないか)」の時期だと言います。

カーン氏は「消費者に明らかな被害がなくても、Amazonの支配には反トラスト法(独占禁止法)上の措置が必要」だと主張し、その名を知られるようになりました。2023年はFTC委員長に就任して3年目になります。次の大統領選挙の前の最後の年であり、連邦当局が行うすべてのことが2024年11月の大統領選挙に影響を及ぼします。

カーン氏が反アマゾンの反トラスト理論を、ますますビジネス寄りの連邦司法の前で展開するのであれば、2023年がアクションを起こすタイミングになる。(デイビス氏)

「Amazonは、労働者側と消費者側の両方から寄せられている不満に答える必要がある」とコンリー氏は考えます。

Amazonは、その労働慣行や、マーケットプレイスにおける粗悪品の存在に対する苦情に長い間直面してきました。それらの不満も限界を迎えているようです。(コンリー氏)

その他の2023年オンライン小売予測

また、「マーケティング担当者は、Facebook広告以外の戦略を多様化し続ける」とベルテン氏は予測しています。

プライバシーと消費者データの追跡への注目が高まるなか、2023年には顧客データの所有が小売事業者の最重要課題となるでしょう。(ベルテン氏)

一方、リサーチアナリストのジェームス・リスリー氏は、アップルのiOS 14のプライバシー変更後にFacebookが失った地盤を、Shopifyが獲得すると予想しています。

ビジネス向けの各種サービスを展開しているShopify(画像は編集部がキャプチャして追加)

Shopifyは、Amazonに対抗する準備ができているようですが、自分たちをマーケットプレイスであると示すことに尻込みしているようです。それでも、すべての要素が揃っています。Shopifyは、アプリ、決済プラットフォーム、在庫状況へのアクセス機能を備えています。フルフィルメントを行う計画もあります。(ジェームス・リスリー氏)

この記事は今西由加さんが翻訳。世界最大級のEC専門メディア『Digital Commerce 360』(旧『Internet RETAILER』)の記事をネットショップ担当者フォーラムが、天井秀和さん白川久美さん中島郁さんの協力を得て、日本向けに編集したものです。

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