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米国のEC専門メディア「Digital Commerce 360」は2021年、小売事業者は新たな機会と課題、技術の進歩を経験すると同時に、事業売却や統合といった業界再編の可能性があると考えています。「消費者の購買行動が2019年後半の“ノーマル”だった頃に戻る可能性は低いでしょう」と語る『Digital Commerce 360』のスタッフが、2020年の出来事から予測する2021年のEコマーストレンドとは?

2021年も落ち込みが深刻な米国経済

新型コロナウイルスワクチンが徐々に普及する中、米国経済は依然として新型コロナウイルス関連のロックダウンや規制の影響で深刻な落ち込みを見せています。場合によっては、2020年の小売事業やEコマースの傾向が2021年も継続すると考えられます。

小売業界が不可逆的な変化を遂げた今、多くの企業、投資家、起業家が2020年当初には予想しなかった機会や恩恵を受ける可能性がある一方で、2021年はビジネスを行うことが難しくなる企業もあるでしょう。

『Digital Commerce 360』のスタッフが、2021年に期待することを紹介します。

再編成と成長の機会が訪れる

『Digital Commerce 360』編集長のドン・デイビス氏は次のように言います。

テクノロジー企業は伝統的な小売店やショッピングモール(商業施設)を買収するでしょう。Amazon、Google、Facebookなど、テック企業の株式市場価値は急上昇しており、コロナ禍から経済が立ち直る2021年にはさらに上昇する可能性が高いでしょう。

一方で、実店舗の小売事業者やショッピングモールは、投資家の目にはほとんど価値がないものになります(ドン・デイビス氏)

従来型の小売事業者への評価が低いため、「ハイテク企業が小売チェーンやショッピングモールの中から、将来性のある小売事業者を選ぶことが容易になる」とデイビス氏は説明します。

オンライン小売事業者が、大手百貨店チェーンの「J.C. Penney Co. Inc.」(北米EC事業トップ1000社データベース2020年版で31位)、スーパーマーケットを運営する「Sears Holdings」(同41位)のような企業を買収し、店舗をオンライン注文の便利な集荷場所として利用することも考えられます。

そのような物理的な場所を獲得することに加え、Amazonはカナダのデパートチェーン「Hudson's Bay」(同28位)傘下の百貨店チェーン「Neiman Marcus」(同40位)や「Saks Fifth Avenue」などの小売店を買収し、ラグジュアリーカテゴリーへの進出を深めていく可能性があります。

他には、オンライン食料品ジャンルにもチャンスが出てくるでしょう。多くのアメリカ人は、パソコンやスマートフォンで食料品を注文し、自宅への配送やカーブサイドピックアップ(道端受け取り)で受け取る方法に慣れてきています。

2021年も食料品のオンライン注文は続く

主任技術編集者のケイティ・エヴァンス氏は、食料品のオンライン注文は今後も続くだろうと言います。

食料品のオンライン注文が主流になり、多くの店舗型食料品店は店を閉めるか、オンライン注文のためのフルフィルメントセンターになるでしょう。そうすれば、レジ係、カート、大規模な駐車場などのコストが必要なくなります

食料品オンライン通販は、2019年と比較しても高水準で推移するでしょう。また、小規模チェーンや独立系の企業がAmazonやスーパーマーケットチェーンの「Walmart」のような巨人に追いつこうとする中、「Instacart」「Mercarto」「DoorDash」「Rosie」のようなアプリベースの配送サービスがより多くの顧客を獲得すると考えています。

Instacartのウェブサイトトップページ
「Instacart」のWebサイトトップページ(画像:サイトよりキャプチャ)

Amazonがオムニチャネルに特化した生鮮食料品店の出店ペースを速めるか

Amazonは、オムニチャネルに特化した生鮮食料品店を2020年よりも早いペースで出店していくでしょう。国内最大の食料品店であるWalmartは、食料品の注文受け取りで優位性を押し出し、より多くの場所で商品受け取りサービスを展開するはずです。

シニアリサーチアナリストでビジネスレポーターのジェシカ・ヤング氏は、「2020年のコロナ禍の影響で、オンラインでの買い物に慣れた高齢の消費者のニーズに応えようとする小売事業者が増えるだろう」と予想しています。これには食料品などの生活必需品も含まれます。

食料品のような必需品のオンライン購入は今年も急増し、コロナ禍前のレベルに戻ることはないでしょう。(ヤング氏)

とは言え、食料品のEコマースでは生鮮食品の選定を他人に任せたり、カートに入っているすべての商品に(品切れがあった場合などに)手動で“代替品の必要なし”を選択するフラストレーションを思うと、多少の「後退」はあるだろうと考えています。

しかし食料品オンライン通販事業者は、配送プロセスを合理化してカスタマーエクスペリエンスを向上させれば、チャンスがあることを知っています。(ヤング氏)

技術・業務改善に向けたテクノロジーへの投資

拡大が見込まれる「バーチャル相談」「プライベートショッピング」

「2021年は同じ場所にいなくても顧客との距離が縮まる年になるかもしれない」とシニア消費者インサイトアナリストのローレン・フリードマン氏は言います。

今のような厳しい時期でも顧客に対応できるよう、小売事業者がバーチャル化を進めているため、バーチャル相談やプライベートショッピングの拡大が見込まれています。

また、ヤング氏は「小売事業者はカスタマーサービス業務の改善を目的としたテクノロジーに投資するだろう」とも述べています。

最近普及してきたバーチャル相談のような機能を増やすため、小売事業者は、テクノロジー、マーケティング、従業員のトレーニングに投資し続けるでしょう。また、買いあさりや店舗閉鎖の可能性といったリスクを軽減するため、最低価格保証や返品ルールは緩和されたままになるでしょう。

デジタル系編集者のステファニー・クレッツ氏は、「2021年は小売事業者がテクノロジーを強化させる年になるだろう」と述べています。

オンライン通販事業者がEコマースのプラットフォームに投資し、新たな機能を追加すると見ています。消費者がオンラインでの買い物をますます快適に感じると同時に、小売事業者が店頭でのショッピング体験を家庭でも再現できる方法を模索しているため、「ECサイト機能の重要性は今後も高まっていくだろう」とクレッツ氏は言います。

テクノロジーの重要性は、小売事業者のフルフィルメント業務にも顕著に表れているそうです。

新型コロナウイルスの影響で、フルフィルメントセンターや作業員に過度な負担がかかっています。効率性と生産性向上のために、ロボットやAIなどの自動化技術を採用する小売事業者が増えるでしょう。(クレッツ氏)

エヴァンス氏は、「2021年、小売事業者はサプライチェーン改善に注力するだろう」と話します。

小売事業者はサプライチェーンの多様化に向けて真剣に投資し、商品調達のために複数の代替プランを持つようになるでしょう。フルフィルメントや倉庫管理についても同様です。小売事業者はより多くの投資を行い、ビジネスの緊急時対応策をじっくりと考えるようになるでしょう。(エヴァンス氏)

便利な「カーブサイドピックアップ」は利用され続ける

編集長のエイプリル・バーテン氏は、「カーブサイドピックアップは今後も続くでしょう」と付け加えます。

より多くの小売事業者がこのサービスを提供するでしょうし、ワクチンが広まっても、消費者はとても便利なカーブサイドピックアップのサービスを利用し続けるでしょう。

コンテンツ・マネージャー兼リサーチ・アナリストのタビサ・キャシディ氏は、ソーシャルメディアとメッセンジャーアプリが、独立したEコマースチャネルとして台頭するだろうと予測しています。

Eコマース事業者が、従来のデスクトップ型のウェブサイトで販売を始める前に、これらのチャネルのみで運営するのを目にするようになるでしょう。

エヴァンス氏と同様、キャシディ氏も小売事業者がサプライチェーンを変えることを期待しています。

小売事業者が海外生産のロジスティクスを見直す中、国内での商品調達がより重要になってくるでしょう。(キャシディ氏)

小売りを取り巻く“新たな挑戦”

Eコマースは、2020年よりも2021年の方が厳しくなるでしょう。今まで通り、機敏で適応力があり、革新的な小売事業者が有利ですが、そのためには「良心」を持つことがますます重要になってくるとバーテン氏は言います。

多くの小売業者が、自社ビジネスの差別化ポイントとして、Webサイト上で環境と持続可能性への取り組みを強調しています。環境以外にも、多様性やメイド・イン・アメリカ商品の促進など、より多くの事業者が価値観を前面に出す取り組みを行うようになるでしょう。(バーテン氏)

エヴァンス氏は一方で、消費者は安全だとわかれば再び店頭での買い物をするため、それに備えておくべきだと述べています。

ワクチンが予定通りに普及し、ほとんどの人がワクチンを利用できるようになれば、2022年にはEコマースに対する流れが変わるでしょう。人々は店頭ショッピングの社会的、感情的、物理的なつながりに憧れ、コンピュータ画面の前に座っているのが嫌になり、店舗ベースの買い物が大幅に増加するでしょう。

デイビス氏は、投資会社による買収のおかげで、Amazonで販売している小規模ブランドのマーケットプレイスでの競争力があがることを期待しています。

近年、多額の資本を調達してAmazonの小規模ブランドを買収する、新しいタイプの買収会社が出現しています。彼らは、小規模ブランドに多くのリソースを投入し、売り上げと利益を増加させていくのです。このような買収会社が成長すればするほど、小規模ブランドが単体でAmazonで販売することは難しくなっていくでしょう。

同時に、大手消費財(CPG)ブランドがAmazonでの販売を増やしており、競争がさらに激化しているとデイビス氏は言います。

これまで多くの起業家がAmazonで生計を立ててきましたが、2021年以降はそう簡単にはいかなくなるでしょう。

この記事は今西由加さんが翻訳。世界最大級のEC専門メディア『Digital Commerce 360』(旧『Internet RETAILER』)の記事をネットショップ担当者フォーラムが、天井秀和さん白川久美さん中島郁さんの協力を得て、日本向けに編集したものです。

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Digital Commerce 360

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