藤田遥[執筆] 2023/5/11 7:00

STORESの店舗アプリ作成サービス「STORES ブランドアプリ」は、店舗独自のアプリ作成のほか、実店舗のPOSレジとECサイトの顧客情報連携など、事業者のオムニチャネルマーケティングの実現も支援する。2022年12月には「Shopify」と連携し、「Shopify」を使う事業者は「STORES ブランドアプリ」を使って、モバイルアプリを立ち上げることができるようになった。数あるECサイト構築プラットフォームのなかから「Shopify」と連携した理由、「STORES ブランドアプリ」の強みや特徴などをSTORESの内田皓大氏(STORES CRM事業部門長)に聞いた。

OMOの高まりを受け「STORES ブランドアプリ」をリリース

「STORES ブランドアプリ」は、ユーザーの利用頻度が高く、実店舗とネットショップを運営している比較的規模の大きな飲食店・小売店を中心に導入されている。アプリ作成のほか、実店舗のPOSレジとネットショップの連携による顧客情報の一元管理、CRMなどの機能がある。

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STORES が提供する「STORES ブランドアプリ」

サービス提供に至った経緯について、内田氏は「顧客管理、顧客コミュニケーションにおけるOMOのトレンドが高まるなか、その観点に対する価値貢献をするプロダクトが必要になった」と話す。

新型コロナウイルスの感染拡大により店舗のデジタル化が急速に進み、物販のEC化率が高まったことで、ユーザーが実店舗とネットショップを併用・使い分けるユーザーも増えてくるとSTORESは予想。そうした状況において、実店舗とネットショップのユーザー情報の統合管理、管理した情報を元にした最適なマーケティング、ユーザーとのコミュニケーションなどが事業者にとって大きな課題になっていると考えていた。

また、ユーザーの行動が多様化、SNSの発展などにより多くの情報を得られるようになったことで、事業者はユーザーの情報を正しく取得できないと、興味・関心のない情報を送ってしまい、ブランド・店舗への愛着を薄れさせる可能性がある

実店舗とネットショップを、顧客管理、顧客コミュニケーションの観点で両立をしていくことを支援するサービスとして、「STORES ブランドアプリ」のようなものがあると望ましいと考えた。(内田氏)

STORES CRM事業部門長 内田皓大氏
STORES CRM事業部門長 内田皓大氏

「STORES ブランドアプリ」提供からまもなく1年が経つが、導入企業数は順調に増加、企業からは「こういうサービスを求めていた」といった声が寄せられているという。

導入企業の1つである、台湾生まれのハーバルケアブランド「阿原YUAN(ユアン)」は、日本公式アプリを「STORES ブランドアプリ」で構築した。

導入以前もアプリを運用していたが、実店舗で取得できる顧客情報は来店日時・回数のみで、購入商品の情報が取得できなかった。また、実店舗とネットショップの顧客情報を別々に管理していたため、毎日1時間ほど両者の顧客情報の紐付けを手動で行わなければならないという課題を抱えていた。

こうした課題を解決するため「STORES ブランドアプリ」を導入。実店舗とネットショップの顧客情報を一元管理できるようになったことで、作業負荷の軽減、効率化につながった。また、どういったユーザーがいつ・どこで・何を買ったのかを細かく把握できるようになり、ユーザー1人ひとりに合わせたコミュニケーション施策をスムーズに打てるようになったという。

STORES STORES ブランドアプリ YUAN ユアンの日本公式アプリ
「阿原YUAN (ユアン)」の日本公式アプリ(画像提供:STORES )

複数のアプリケーション導入が不要。手間やコストをかけずにオムニチャネル化を実現

アプリを構築するサービスは多くあるが、他社との差別化ポイントについて、内田氏は「始めからオムニチャネルを前提にプロダクトを設計していること」と話す。

「STORES ブランドアプリ」にはアプリ構築機能だけでなく、実店舗とネットショップを連携し、顧客情報を一元管理する機能を搭載。統合した情報を活用・分析した施策を実施できるという。また、ポイントや会員ランク制度といったロイヤリティプログラムや、ロイヤリティや属性・購買情報などのセグメントを活用したプッシュ通知機能を実装している。

STORES STORES ブランドアプリの仕組みについて OMO オムニチャネル アプリ作成 顧客情報の一元管理
「STORES ブランドアプリ」の仕組みについて

「STORES ブランドアプリ」1つあれば、CRM(顧客管理)やマーケティングツールなど複数のアプリケーション・ソフトウェアを導入しなくて済むため、コストを抑えることができる。また、企業とやりとりをする窓口が1つになるので、事業者の負荷軽減にもつながると考えている。(内田氏)

「Shopify」移行後の企業も継続して支援していく

2022年12月から「Shopify」との連携をスタート。多くのECサイト構築プラットフォームのなかから「Shopify」を選んだ理由について、内田氏は「『STORES ブランドアプリ』は、ネットショップのなかでも比較的規模の大きい事業者に対する価値貢献をめざしているプロダクト」であることをあげた。

よりオムニチャネルの課題が顕在化している事業者がネットショップ開設時に「Shopify」を選ぶケースが多く、「Shopify」との連携は合理的だと判断し、最初の連携先に選んだ。

また、元々「STORES」を利用してネットショップを構築していた事業者が、成長に合わせて「Shopify」に移行するケースもある。「移行後もSTORES のプロダクトを継続的に利用してもらい、事業者の支援をするという観点からも『Shopify』を選んだ」(内田氏)。

「1顧客1ID」を実現。ユーザーの体験価値向上にも寄与

連携により、事業者にとってどのようなメリットがあるのか見ていく。

1つ目は「Shopify」を利用している事業者は「STORES ブランドアプリ」を利用できるようになり、ネットショップが内製されたモバイルアプリを簡単に作れるようになることだ。こうしたアプリを構築することで、ECサイトのアカウントでアプリにもログインできる「1顧客1ID」を実現、ユーザーの体験価値向上につなげているという。

2つ目はロイヤリティプログラム。同サービスは、実店舗とネットショップの購入金額と利用回数を集計し、ユーザーのランクやポイント付与に反映する設計になっている。「この機能を活用することで、ブランドの世界観をより作っていくことを支援できるのではないか」(内田氏)。

3つ目は実店舗のPOSレジとの連携が容易であること。現在、「Shopify」と標準連携できるPOSは限られている。しかし、同サービスはどんなPOSとも連携が可能。同サービスを「Shopify」とPOSのハブとして機能させることで、ECと店舗の顧客情報の統合が簡単に実現できる。つまりオムニチャネルの顧客管理・活用を実現する上で、事業者がPOSを切り替えたり他のアプリケーションを導入したりする必要がない

「Shopify」で使用できるアプリを提供している企業は海外企業も多く、英語でのやりとりやサポートを十分に受けられないケースもある。こうしたなかで日本品質のサービスを提供できるという強みもあるという。

STORES はネットショップだけでなく、予約サービス、決済、POSレジなど事業者のデジタル化を支援するソフトウェアを多岐にわたって提供している。アプリ以外の運営に必要な知見・ノウハウがあるので、事業者をさまざまな面で支援する体制が整っていることも大きい。(内田氏)

「STORES」との連携、UI・UXのバリエーション拡大などをめざす

今後は、同社が提供するネットショップ構築サービス「STORES」、POSレジアプリ「STORES レジ」と「STORES ブランドアプリ」の連携を進めていく予定だ。

また、UI・UXのバリエーション拡大、管理画面のブラッシュアップ、ポイントやロイヤリティプログラムの柔軟性向上をめざしていくという。

アプリは店舗の顔になる。そこを通じて事業者がユーザーにより最適な情報を伝えていくことを考えると、各社に合わせた工夫や世界観の再現が求められると考えている。(内田氏)

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