
【GoogleのAI活用】オンラインで服を試せるAI搭載のバーチャル試着機能+AI検索「AI Mode」へ搭載する新機能とは?

Googleのバーチャル試着ツールが、Google検索、画像、ショッピングで広く展開され、米国の百貨店チェーンMacy's(メイシーズ)、Kohl's(コールズ)などが取り扱うアパレル商品でも利用できるようになります。
バーチャル試着ツールを強化、ユーザーの顔で“試着”できる仕様に刷新
Googleの親会社であるAlphabetが7月23日に実施した2025年1-6月期(中間期)決算説明会で発表した内容によると、米国の消費者は、Googleのバーチャル試着ツールを使って自分の写真をアップロードし、AIツールを使って試着イメージを確認できるようになりました。

AIツールを搭載したバーチャル試着機能は、2025年の初頭に導入。ユーザーは現在、Google検索、ショッピング、画像の商品リスト全体で広く利用できます。この対象には、Macy's、Kohl's、米小売大手のWalmart(ウォルマート)、高級百貨店チェーンNordstrom(ノードストローム)などの小売店が取り扱う何十億点もの商品が含まれます。
全米で刷新版バーチャル試着ツールの展開を予定
Googleの最高ビジネス責任者であるフィリップ・シンドラー氏は、第2四半期決算説明会で次のように説明しました。
今では、消費者の皆さんは何十億点もの衣料品をバーチャルで試着できるようになりました。バーチャル試着ツールの対象範囲を拡大したことによる、初動の結果とエンゲージメントは非常に好調で、特にZ世代のユーザーからの反応が良いです。この機能は、まもなく米国の全ユーザーに提供する予定です。(シンドラー氏)
バーチャル試着ツールの対象拡大は、Googleが7月24日に発表したショッピングに関連する複数のアップデートの1つです。検索大手であるGoogleが小売分野でのAI活用を拡大し続けていることを示しています。
試着ツールのそのほかの機能には、ユーザーが希望する価格や、サイズや色を設定でき、条件に合う商品が入荷されると知らせるアラート機能などがあります。
Googleはまた、この2025年秋に登場する新しいAI検索機能「AI Mode」で、生成AIを活用したコーディネートや部屋のレイアウトデザインのヒントが得られるツールを追加する予定です。
ファッション特化の画像生成AIが“試着”を実現
Googleのバーチャル試着ツールは、2023年にモデルを使ったバーチャル試着のプレビュー表示をスタート。2025年に入り、「Search Labsポータル」(生成AIによる新しい検索体験をユーザーにテストしてもらうため、Googleが提供を開始した開発初期段階のプログラム)での試験運用として、よりパーソナルな試着ができるように機能が向上しました。
このバーチャル試着ツールを使えば、ユーザーは自分の全身写真をアップロードし、トップス、ドレス、パンツ、スカートなどをバーチャルで試着できます。
Googleによると現在、バーチャル試着機能はより広範にユーザーのニーズに対応するようになりました。
米国の消費者は、対象となる商品のリスト内に表示される「試着する」アイコンをタップすると、試着ツールを利用できます。
バーチャル試着ツールに写真をアップロードし、試着のプレビューを見たり、お気に入りを保存したり、試着プレビューを友人と共有したりできます。ユーザーの許可を得て、バーチャル試着のためのユーザーの画像をツール側が保存するため、ユーザーは自身の画像を毎回アップロードする必要はありません。(バックリー氏)

Googleによると、この機能はGoogleの「Shopping Graph(ショッピンググラフ)」という膨大な商品データと、さまざまな生地が人の体に沿ってどのように形を変えるかを理解する、ファッションに特化した画像生成AIモデルによって実現されています。
「Shopping Graph」は、大手小売事業者から地元の店舗まで、レビュー、価格、在庫状況、色の選択肢などの詳細を含む、500億以上の商品リストをリアルタイムで保持しているデータセットです。
顧客エンゲージメント+コストパフォーマンスの両軸をアップ
バーチャル試着技術は、消費者と小売事業者の両方から注目を集めています。米国の市場調査会社eMarketer(イーマーケター)が2024年9月に発表したレポートによると、Google検索で提供されるバーチャル試着画像は、通常の商品の画像と比べて、質の高い閲覧が60%も多いという結果が出ています。
また、消費者行動の平均を見ると、1つの商品に対して4種類のバーチャルモデルで試着を試みており、この試着ツールを使った後、実際にブランドのECサイトを訪問する可能性が高いとのことです。
同レポートによると、バーチャル試着ツールは、小売事業者にとって顧客エンゲージメントと売り上げの両方を向上させることができます。
Estée LauderはCVR2.5倍
米国の化粧品メーカーEstée Lauder(エスティローダー)は、消費者がリアルタイムで商品をテストできるAI搭載試着ツールを、台湾に本社を置く、ビューティーテック企業Perfect Corp.(パーフェクト)と共同で立ち上げた後、コンバージョン率が2.5倍に向上しました。
「e.l.f. Cosmetics」はCVR3倍
Perfect Corp.によると、米国の化粧品メーカーe.l.f. Beauty(エルフビューティー)が手がけるZ世代の消費者に人気の美容ブランド「e.l.f. Cosmetics」は、320点以上の商品に関して、写真をベースとした試着体験を導入し、その結果としてコンバージョン率が200%増加しました。
小売事業者は、顧客1人ひとりにパーソナライズされたスムーズなショッピング体験を提供し、返品率を削減する方法として、バーチャル試着の技術に期待を寄せています。
返品率削減にも貢献
市場調査会社Valuates(ヴァリューズ)は、2025年5月に発表したプレスリリースで、「小売事業者にとって、バーチャル試着技術の導入は、コスト圧縮および販売力アップの両方で利点があります」と説明しています。
返品の減少によって得られる効率は、収益性の向上、顧客からの信頼、持続可能性につながります。バーチャル試着の技術は小売市場全体の市場拡大を後押ししています。(ヴァリューズ)
Valuatesは、世界のバーチャル試着市場が2024年の58億ドルから2031年までに277億ドルに成長すると予測しています。Valuatesは、この成長は、スマートフォンの普及やAIによるパーソナライゼーションに加え、ファッションや化粧品カテゴリーでは返品率が高い傾向にあるということが、(返品率を下げる目的で)バーチャル試着ツールの導入を加速させる――ということによってもたらされると予想しています。
買い逃しを防ぐ“価格アラート”
バーチャル試着の拡大に加えて、Googleは7月24日にさらに2つのAIショッピング機能を発表しました。
価格アラートも刷新され、米国のGoogleユーザーは、商品の「価格を追跡する」をタップすると、希望するサイズ、色、予算を指定できるようになりました。Googleによると、これにより、間違ったサイズや高すぎる価格など、探しているものに合わない商品の通知を避けることができます。
商品がすべての条件を満たした場合、消費者に通知が届きます。
通知により、米国のGoogleユーザーはもう、狙っているバッグが適切な価格になったか常にチェックしたり、気に入った商品を後で確認したりするのを忘れたりすることはありません。(バックリー氏)
Googleは発表で、刷新された価格アラート機能が、新しいAIエージェントチェックアウト機能と統合されているかどうかは言及しませんでしたが、価格下落通知を受け取った後、消費者が「私に代わって購入」をタップすると、AIエージェントが小売事業者のサイトで商品をカートに追加します。Google Payを使用して消費者に代わって購入を完了するこの機能は、今後数か月以内に広く展開される予定です。
生成AIの提案から直接購入できる仕組みを構築
Googleはさらに、2025年秋に展開を予定しているGoogle検索の新機能「AI Mode」のショッピング機能を発表しました。
Googleによると、消費者は「ガーデンパーティーをするときの服装」や「寝室のルームデザインのアイデア」などのプロンプトで検索できるようになり、「Shopping Graph」から購入可能な商品と組み合わせたAI生成のビジュアルを受け取ることができます。
現在、Googleの画像マッチング技術は、ドレスやトップスのような、一枚の服の写真から、見た目がよく似た別の服を見つけ出すのに役立っています。Googleによると、この技術は2025年秋から「AI Mode」でさらに進化し、全身の服装や部屋全体のレイアウトデザインといったアイデアをAIが生成できるようになります。そして、ユーザーはそのデザインに似た商品を、直接購入できるようになります。
Googleの生成AI「Gemini」モデルを搭載した「AI Mode」は、検索と生成AIを組み合わせたもので、2025年初めにSearch Labsを通じて初めて導入されました。
AlphabetおよびGoogleのCEOであるサンダー・ピチャイ氏は次のように説明しています。
「AI Mode」のショッピング機能はまだ初期段階ですが、すでに米国とインドで月間1億人以上のアクティブユーザーがいます。私たちは、優れた機能を迅速に提供することで、「AI Mode」を通じたユーザーのショッピング体験向上を継続的に強化していく計画です。(ピチャイ氏)