売上1000億円をめざすドコモのネット通販事業の現状とこれから
NTTドコモは2年前から、新たな収入源としてコンテンツ販売や物販の売り上げを高めていく方針を掲げ、ネット通販事業「dショッピング」を中心に事業を進めている。目標は「dショッピング」を含む「dマーケット」全体で2012年度の売り上げの5倍となる1000億円。現在、「dショッピング」はどのような戦略のもと、事業拡大を進めているのか。規制緩和により店頭での通販商品の販売などもできるため、今後はどのような展開を見据えているのか。NTTドコモ・コンシューマービジネス推進部コンシューマーサービス第1コマース担当課長の光田克氏に話を聞いた。
開始から2年半、土台作りを進めてきた
――「dショッピング」では現状、どのような戦略のもと事業運営しているのでしょうか。
「dショッピング」は2012年12月にスタートし、約2年半となります。これまで商品ラインアップの拡充を進めてきました。まずは、身近なものから商品を増やし、訪問してもらう機会を高めました。
爽快ドラッグと協業して日用品の取り扱いを、らでぃっしゅぼーやと食品の取り扱いを始めました。いまでは、家電、ファッション、ギフト、お酒などの取り扱いを始めています。現在の協業パートナーは7社(爽快ドラッグ、らでぃっしゅぼーや、オークローンマーケティング、マガシーク、NTTレゾナント、三越伊勢丹、やまや)。商品数は17万点程度です。
これまでは、ECに必要な機能の追加を優先して開発してきました。たとえば、商品をより見つけやすくするためのUI(ユーザーインターフェース)の改良や、決済の拡充などです。
つまり、これまでは売り上げを高めるための土台作りをしてきた2年半ということです。
他サービスとのクロスマーケティングに成果
――「dショッピング」の集客は、「dマーケット」の利用者を誘導していくとされていました。現状、「dマーケット」からの送客効果は出てきているのでしょうか。
当社の強みは、いろいろなサービスを提供することで、そのなかでの利用履歴、購入された商品などから読み取れる情報を得られることだと思っています。そのため、こうした情報を生かしたマーケティングを始めています。たとえば、「dマガジン」でダイエットに関係する雑誌を読んでいる人に対して、オークローンマーケティングの健康器具や爽快ドラッグの健康食品をメルマガでオススメするといったことを行っています。
こうしたことを進めてきたこともあり、順調に購入者数は増えてきています。
――売上高1000億円という目標に対する現状の進捗状況は。
具体的な売上高は公表していませんが、EC市場の成長率よりは大きい伸び率を記録しています。とはいえ、目標とする数字まではまだまだ。あらためて、EC市場がそんなに簡単ではない市場であることを認識しているところです。
――「dショッピング」の強みはどこにあると考えていますか。
2つあると考えています。まず、ドコモの会員に対しては、携帯電話契約時に登録した情報を使うことで、会員登録なしで購入できるという点。特にスマホの場合、住所やクレジットカード番号などを打ち込むのが面倒なので、会員登録することなく利用できるのはとても便利だという声を聞いています。
もう1点目はドコモポイントが利用できる点。ポイントが付与されるタイミングに売り上げが伸びたり、ポイントが失効するタイミングで購入されるユーザーが多いので、ポイント効果はとても大きいと感じています。
ポイントキャンペーンは基本的にクローズド。かなり安く販売している商品もあります。実際、大手価格比較サイトと比べても安い商品が増えています。こうしたクローズドキャンペーンを行うことで、商品提供会社からより良い商品を提供してもらえるようになっています。
――今後も協業するパートナーを増やしていくことは考えているのでしょうか。
もちろん増やしていこうと考えています。具体的にどことは言いにくいですが、まだ足りない商品ジャンルも数多くありますので、協業先を増やすことで、商品の拡充を図りたいと思っています。
配送スピードのアップやCRMの取り組みを強化へ
――ドコモショップなどリアル店舗との連携については、どのように考えていますか。
リアル店舗というのは重要なチャネルで、かつこれほどの全国各地に店舗があるような企業は他にはあまりないので、活用したいと考えています。とはいえ、まだ具体的なプランはないため、今後の大きな課題。しかし、チャンスであると捉えています。
――今後、力を入れていこうと考えている点は。
配送スピードの改善です。昨今、当日配送や翌日配送を行うEC事業者さんが増えているなか、当社の配送スピードはまだまだ遅い。パートナーと相談しながら、スピードアップのための取り組みを行っていこうと考えています。
また、「dマーケット」で得られる情報を活用したマーケティング、CRM活動についてはさらに進めていかなければならないと思っています。ここがまさに当社の強みの部分であると思うので、「ドコモだからこそできるEC」を実現できればと考えています。