ネット通販でもイオンvs.セブン 新ECサイト「イオンドットコム」で「オムニ7」を追撃
イオンはこのほど、グループ企業が運営する通販サイトを横断して利用できるECサイト「AEON.com(イオンドットコム)」を開設した。運営を手がけるのは子会社のイオンリンク。1月12日現在、グループ企業が運営する29サイトが参加している。イオングループは中期経営計画で「デジタルシフト」を掲げており、グループ横断の通販サイト開設もその一環。イオングループは、「コト・モノ・ネット」が融合したオムニチャネル化の取り組みを進めていく。
「イオンドットコム」はイオングループのECサイトを集めたeコマースポータル
「イオンドットコム」に掲載されているのは、イオングループが運営する通販サイトで扱っている商品。運営主体のイオンリンクによると、「開発中というステータスである為、掲載商品数や開設の狙いに関してはまだお話できる段階にはない」と説明している。
「イオンドットコム」の位置付けは、イオングループの受け皿となるeコマースポータルサイト。扱っているのは1月12日現在、次にあげる29のグループECサイトの商品。
- イオンネットスーパー
- イオンショップ
- イオンサクワ
- グラジェネ
- イオン de ドラッグ
- スポーツオーソリティ など
取り扱う商品は幅広い。食料品、服、シューズ、腕時計、DIY、ペット用品、コスメ、ゲーム、家電、車・バイク、書籍……。商品品目は非公開としているが、日本経済新聞の報道によると、数百万品目という。
現在のところ「開発中」(イオンリンク)ということもあり、ショッピングカートに入れた商品は、「イオンドットコム」内で購入することはできない。カート内に入れた商品には、当該商品を販売する通販サイトに移動するためのリンクを設置。リンク先の各サイトで購入手続きを行う仕組みとなっている。
イオンリンクに対し、「『イオンドットコム』内で商品購入できるようにするのか?」と尋ねたところ、「『イオンドットコム』内での商品購入やオムニチャネル施策に関しても同様の考え方となる」と回答。将来的には「イオンドットコム」内で購入手続きが行える環境にする方針だ。
「イオンドットコム」の利用には、グループ企業のネットサービスなどが使用できる「イオンスクエアメンバー」への登録が必要。会員登録をすると、イオングループのポイントサービス「ネットWAONポイント」(ネットWAONポイントが利用できるECサイトは現在のところ20サイト)の保有ポイント数がトップページ(パソコンで見た場合)で確認できるようにしている。
また、会員登録と同時に「イオンネットスーパー」で必要な情報を登録しておくと、登録住所の近隣店舗で販売している「ネットスーパー」の商品が表示される。
Webシステムなどは社内開発で「デジタルシフト」を推進
グループ横断の通販サイトを開設し、オムニチャネル施策を先行させているのはセブン&アイ・ホールディングス。2015年11月に「omni7(オムニセブン)」を開設した。
「omni7」では現在、グループ企業が扱う商品をサイト内で購入手続きが行えるようにしているが、異なるサイトの商品を購入した場合、それぞれで注文手続きを踏む必要がある。
「omni7」で注文した商品は、全国約1万8000店のセブン-イレブンで送料や手数料無料で受け取ることが可能。新たなサービスとして、「omni7」で購入した商品をセブン-イレブン店舗で返品・返金できるサービス、注文したその日に店舗で受け取ることができる「お急ぎ受取りサービス」などを提供している。
一方のイオングループでは、
- AEONBIKE オンラインショップ → ネットで注文し、店頭で受け取り
- イオンネットスーパー → ネットで注文し、店頭で受け取り
- タッチ・ゲット → 店頭にない商品を店頭に設置したタブレットからネットで注文(一部店舗で実施)
など、各通販サイトや店舗ごとでオムニチャネル施策を実施している。
現状では「omini7」のセブン&アイが、コンビニ店舗数の優位性などからネット連動で先行している状況。「イオンドットコム」がイオングループの受け皿となるeコマースポータルサイトとして成長を遂げるには、グループの各店舗や通販サイトとの連動が不可欠となる。
その鍵を握るのが、「イオンドットコム」の運営主体であるイオンリンク。オムニチャネルの推進にはシステム連携などの開発が不可欠だが、「イオンドットコム」を含むWebシステムの開発は、「その大部分を社内の内製リソースにて行っている」(イオンリンク)。新規開発や刷新などを迅速、柔軟に対応できる体制の整備を進めている。
2015年6月に、「デジタルシフト」強化の開発拠点として渋谷オフィスをオープン。大手ECメディア運営の経験者など優秀な技術者を集めているようだ。
その筆頭格が取締役の長谷川憲司氏や窪島剣璽氏。「livedoorデパート」の運営を引き継いだ「買う市ショッピングモール」(当時の運営はカウイチ)のシステム開発などに携わった長谷川氏、ライブドアなどを経てLINE Business Partners社長などを歴任した窪島氏といった、ITやECに精通しているスタッフが事業に参画し、「イオンドットコム」の開発を進めている。
インターネットと店舗が融合したオムニチャネル戦略の強化を進めるイオンが、セブン&アイを今後どのように追撃するのか、注目していきたい。