中川 昌俊 2016/1/22 9:00

約7%だったメールのクリック率が28%まで向上し、ECサイトの売り上げが順調に拡大――。日本各地の生協や生協連合会が加入する全国組織「日本生活協同組合連合会(日本生協連)」のECサイト運営が軌道に乗っている。ユーザーごとに最適化したメールを配信するターゲティングメールを導入したことが背景にあるという。ターゲティングメールを導入した背景や今後の展望などを日本生協連通販本部カタログ供給企画部インターネットグループの峰村健史グループマネージャーに聞いてみた。

各地の生協との兼ね合いで、売り上げ拡大手段に制限、EC売上成長も鈍化

日本各地の生協では生鮮食品を含め各種食品、飲料のほか日用品などを販売しているのはご存知の通り。一方、全国組織である日本生協連では、全国共通のカタログ「くらしと生協」を発行し、衣料品、靴・バック、寝具、家具、子供用品などの販売を手がけている。

カタログは各地の生協が配布するカタログ同梱して会員に手渡され、食品などと合わせて購入できるようになっている。利用人数は、全国の宅配登録会員の約3分の1にあたる約380万人。年間売上は約600億円という事業規模。

「くらしと生協」のカタログに掲載した商品をネット販売するECサイト「くらしと生協」を始めたのは約10年前。現在、ECサイトを利用しているのは約40万人で、2015年3月期の売上高は前期比5%増の52億円となっている。

EC化率は10%にも満たないのには理由がある。「くらしと生協」は会員生協のみが購入できるECサイト。そのため、リスティング広告やアフィリエイト広告を含め、外部のユーザーを獲得するための広告を展開できない。各地の生協が運営するECサイトにバナーなどを貼り、そこから誘導するものが主な集客施策になっている。

組合員への販促にも制限がある。「くらしと生協」で購入したことがあるユーザーは各地の生協の組合員でもあるため、メールマガジンを配信し過ぎると各地の生協に迷惑がかかってしまう。そのため、年間のメルマガ発行回数も制限がかけられ、自由に発行することができない状況となっている。

組合員は生協にとても親近感を持っている方が多い。そのため、当初は同一内容のメルマガを一斉配信しても開封率やクリック率も高かった。「これでいいかな」と思っていたのですが、最近で開封率やクリック率が他社の通販サイトとあまり変わらない水準になってきた。こうしたことが、売り上げを思ったように伸ばせない理由になっていた。(峰村氏)

まずは2回目の購入につなげる施策を実施、1回目の購入品に合わせた商品を紹介

そんな環境下で、峰村氏が目を付けたのがターゲティングメール施策。配信回数が制限されているメルマガを顧客ごとに最適化した内容で配信してレスポンス率を高め、売り上げ拡大につなげようと考えた。

峰村氏はECに関わるセミナーや展示会などに参加。事例や情報を収集し、CRM施策を実行するための製品を探した。そこで着目したのがデジミホのパーソナルマーケティングプラットフォーム「アール・エイト」だった。

「アール・エイト」は機能が豊富で、ターゲティングメール施策だけではなく、マーケティングを自動化するさまざま機能があった。CRM施策以外にも、売り上げアップのための施策がいろいろと利用できると考えた。(峰村氏)

日本生協連通販本部 峰村健史グループマネージャー

日本生協連通販本部
カタログ供給企画部インターネットグループ
峰村健史グループマネージャー

導入に当たり、まずは過去の購入履歴データなどを基に顧客ごとに最適化したメールを配信できるようにした。

デジミホに過去2年間のデータを分析してもらうと、ある共通した消費行動が判明した。リピート購入する消費者は100日以内に再度購入する傾向があることがわかったのだ。そこで、まずは100日以内に2回目の購入を促すことをメール配信の目的にした

また、1回目に生活必需品であるインナーを購入する顧客は、継続して「くらしと生協」でインナーなどを購入するのに対し、ファッション性の高いアウターの購入者は、さまざまな高単価商品を購入するという分析結果を得ることができた。そのため、配信する内容は、1回目に購入した商品に応じて顧客ごとに最適なメールを配信するようにした。

こうした施策を行った結果、徐々に成果が出始めている。約7%だったメールのクリック率は28%まで向上。2回以上購入するユーザーも飛躍的に増えてきているという。

今後は、年間購入金額の高い「ロイヤルカスタマー」作りを、「アール・エイト」を使って進めていく。

会員数を増加させることは難しいが、生協には生協の強い部分がある。それがロイヤルカスタマー作り。まだ、利用できていない機能がたくさんあり、「アール・エイト」を使えば可能だろう。チャレンジして売り上げ拡大につなげていきたい。(峰村氏)

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