楽天新春カンファレンス2016の注目企画「ほぼ仲山市場 探索ツアー」に潜入レポート
「楽天新春カンファレンス2016」の注目企画を聞いたインタビューで(インタビュー記事はこちら)、今年新たに始まる注目企画としてあがったのが「ほぼ仲山市場 探索ツアー」。楽天大学の仲山進也学長、元「ほぼ日刊イトイ新聞」でプロデューサーを務めた西本武司さんが、イベントスペースにブースを構えるショップの話を聞いて、買いたいと思う商品を一緒に探すツアー企画。今回、そのツアーに潜入した。
消耗戦に陥らないネットショップが提供している価値や施策を紹介
仲山学長によると、「ほぼ仲山市場 探索ツアー」のコンセプトは、消耗戦に陥らないネットショップがどのような価値を提供し、どんな施策を行っているか、を知ってもらうことだという。
ツアーを行う前、西本さんがなぜツアーに参加することになったかについての説明が行われた。西本氏は、仲山学長と仕事を一緒にする機会があり、楽天の出店者について説明を受けたという。
西本氏は、店舗の1つ1つが優れたコンテンツであると感じ、楽天市場のショップから直接話を聞いてみたいと要請し、今回のツアーが開催されることになったという。
今回のツアーにブースを構えたのは8店舗。参加者は8グループに分かれ、各店舗の話を15分ずつ聞き4店舗を回るという内容。筆者も1つのグループに入り、4店舗のプレゼンを聞いた。
最初に訪問したのがナッツやドライフルーツなどを取り扱う「小島屋」さん。ヒット商品の「ヨーグルト専用のドライフルーツミックス」を開発するきっかけは、店長仲間から「レーズンが苦手だからレーズンの入っていないヨーグルト専用のフルーツミックスってないの?」と言われたことだった。
ドライフルーツ屋の意地もあり、最高のモノを作ってやろうと思い、取り組み始めた。(小島靖久店長)
自信をもって売り出せるものを作るため、実際に試した組み合わせは300種類にもなるという。その中から最高の組み合わせを選んだ後、各ドライフルーツの最適な分量の組み合わせを行う必要があるため、作業は連日深夜にも及んだが、不思議と疲れや止めようという気持ちにはならなかったという。
次に訪れたのは「いわゆるソフトドリンクのお店」のブース。
運営元のナカヱが手がける企画はユニークだ。たとえばエイプリルフール。「ヘルシア緑茶」は「ヘルシワ緑茶」、「MATCH」は「MATCHO(マッチョ)」といった商品としてサイトに表示。
商品説明は「筋肉にうれしいビタミンとプロテインをモリモリ配合。シュワッと弾ける炭酸が眩しいマッスルをさわやかに演出するレモン風味です。朝からベンチプレスに励む彼の差し入れに!」といったように作りこんでいるという。
また、ユーザーから募った投票で1位になった「大井のおっさん」は「お~いお茶」をもじったもの。ボトルのパッケージデザインを伊藤園からもらい、それを加工して実際に商品を作成。投票者にプレゼントしたという。
社員も面白がっていろいろなアイデアを出してくるし、何より自分が楽しいのでやっている。この時期が来ると、みんな気合が入る。(中江トシヒロ店長)
続いて訪れたのはボーイズラブマンガやノベルを専門に販売する「コミコミスタジオ」のブース。
そこで渡されたのが「ボーイズラブ診断」という質問用紙。記載されている質問に「YES」「NO」で答えていくと、その人におすすめのジャンルのボーイズラブコミックを診断するというもの。「甘々系」「コミカル系」「ハード系」など、実際に分類されたボーイズラブコミックスを読んでみる、という体験をした。
サイトでは、「甘々系」「コミカル系」「ハード系」といったジャンルごとに商品を探せるようにしているほか、ブログで注目の新作情報などを発信。作者のサイン会などを開催することで、この分野の商品に関してはアマゾンよりも売り上げているという。
アマゾンよりも商品の到着が遅く、送料がかかるにもかかわらず、「コミコミスタジオ」で買ってくれるお客さまがたくさんいる。サイト上でボーイズラブへの愛が感じられるからだと思う。(内藤剛社長)
最後の4ブース目は、「邪悪なハンコ屋 しにものぐるい」の伊藤康一店長が「紙芝居ボード」を使い、サイトの特徴やどんなハンコを販売しているか、販売を始めた経緯などを紹介。オリジナルデザインのハンコのイメージが数多く掲載された冊子や実際のハンコの押し心地などを試せるようにした。
もともとハンコを販売していたわけではなく、オリジナルTシャツのデザインをして販売していたところ、スタンプが欲しいというお客さまの要望があったので販売し始めた。(伊藤康一社長)
ツアーには、卵を販売する「卵の庄」、「保護猫カフェ ネコリパブリック」、「イーザッカマニアストアーズ」、「よなよなの里」といった有力店舗もブースを構えていた。
店長や店員自身がまず楽しんで仕事することでファン作りにつながる
今回のツアーを通じて最も感じたのは、「店長や店員自身がまず楽しんで商品開発や売り場作りをすると、必ずそれに共感するユーザーがいる」ということだ。
こうした共感ユーザーはコアなファンとなり消耗戦に陥らない店舗に成長することができる。コアなファンを作ろうと無理な施策などを行っても、恐らくファンから見れば浅はかな戦略、と見破られてしまうだろう。
今後、中小のECサイトが生き残るためには、「自分たちにしかできないことを見つけることが大事だ」とよく言われる。とはいえ、自分たちにしかできないことを見つけることはなかなか難しい。
それならば、自分たちが面白いと思うことを突き詰めていくのはどうだろうか。それがゆくゆくは他社がまねできないものになるのではないか。今回のツアーではこんなことを学べたような気がする。