Costcoのリテールメディア参入+会員費を値上げの影響は現在1%未満+2025年1Q数値など最新動向まとめ
米国の会員制倉庫型量販店のCostco Wholesale(Costco)は2025年度、Costco初のリテールメディアネットワークキャンペーンを実施し、成果をあげています。2025年度のスタートとなった2024年9-11月期(第1四半期)は、ハードウェア、スポーツ用品、家具、ギフトカードのカテゴリーがEC売上高の成長をけん引しました。新たな動きのあった2024年9-11月期の取り組みや業績数値などをまとめました。
2025年度(2024年9月~2025年8月)のQ1の業績・EC動向
2024年9月に始まったCostcoの2025年度は、デジタル施策が効果をあげて好調なスタートを切り、第1四半期は特にEC売上高が拡大。EC売上高は前年同期比13%増となり、伸び率だけで見ると既存店売上高全体の2倍以上となりました。なお、既存店全体の売上高の伸び率は、前年同期比5.2%増でした。
第1四半期の純利益は、前年同期の15億8900万ドルから17億9800万ドルに増加。売上高は609億9000万ドルで、前年同期の567億2000万ドルから7.5%増加しています。
米国の既存店売上高は前年同期比5.2%増。カナダの既存店売上高は同5.8%増、その他の海外の既存店売上高は同4.7%増でした。
最高財務責任者(CFO)のゲーリー・ミラーチップ氏は第1四半期の決算説明会で、来店客数と顧客の買い物頻度はグローバルでは5.1%、米国だけで見ると4.9%増加したと説明。平均注文額はグローバルでは0.1%、米国だけで見ると0.3%増加しています。
ECはアクセス数、コンバージョン率、注文額がどれも上振れ
ミラーチップ氏によると、米国の消費者は第1四半期にCostcoのアプリを290万回ダウンロードし、これまでの累計ダウンロード数は約4200万回に達したそうです。
第1四半期、ECはアクセス数、コンバージョン率、平均注文金額のすべてが前年同期比で増加しました。(ミラーチップ氏)
第1四半期に約100万件を配送
EC売上のなかでも、ハードウェア、スポーツ用品、家具、ギフトカードのカテゴリーは特に好調で、いずれも前年同期比で2ケタ成長になったようです。
2024年9-11月期の期間中、Costcoのフルフィルメント部門を担うCostcoロジスティクスは100万件近い配送を行ったとロン・ヴァクリス社長兼CEOは説明。さらに、第1四半期決算発表前の1週間で、19万6000件以上の配送を完了したそうです。ヴァクリス氏によると、Costcoロジスティクスを利用するECの注文が市場シェア拡大につながっていると言います。
会員以外も利用できる「Costco Next」(買い物客がCostco製品のサプライヤーのECサイトから直接オンライン購入でき、Costco規模の割引が適用されるサービス)は、「サンクスギビング(感謝祭)」「ブラックフライデー」「サイバーマンデー」のセール期間中に「記録的な売り上げを達成した」とミラーチップ氏は説明しています。
米国のEC専門誌『Digital Commerce 360』の調査によると、米国の消費者は「サンクスギビング」から「サイバーマンデー」までの5日間のセールで、410億ドル以上をECでショッピングしています。
リテールメディアに参入。初のキャンペーンで成果
Costcoは、他の量販店や食品・飲料小売店と独自のリテールメディアネットワークを立ち上げました。米小売スーパーマーケット大手のWalmart、Target、Kroger、Albertsonに追随し、Costcoも独自のファーストパーティデータを運用するマーケティング部門を設けました。
Costcoのリテールメディアネットワークチームは現在、25のサプライヤーと協働しています。
リテールメディアネットワークは広告プラットフォームの一種。運用する小売事業者は、自社のデジタルチャネルの広告枠を第三者に販売することができます。この広告枠を購入する広告主は、ロイヤルティプログラムの情報など、小売企業の顧客に関するファーストパーティデータを利用して、広告のターゲットを絞ることができます。広告は、小売企業のWebサイト、モバイルアプリ、店舗内のスクリーンやディスプレイに掲載可能。リテールメディアネットワークを運用する小売事業者にとっては、リテールメディアネットワークが新たな収益源となります。
Costcoは第1四半期に、顧客ターゲットを絞ったリテールメディアネットワークキャンペーンを初めて実施しました。ミラーチップ氏によると、このキャンペーンはCostcoが通常想定している広告費用対効果(ROAS)の2~3倍を達成したそうです。
Costcoのリテールメディアネットワークは、野球にたとえるとまだイニングの序盤戦ですが、将来的に大きな成長につながると信じています。(ミラーチップ氏)
ミラーチップ氏は、リテールメディアネットワークを 「斬新なビジネスチャンス」と見ています。広告主となる小売業からリテールメディアネットワークに関心が寄せられるきっかけの多くは、小売業のマーケティング支援事業者だそうです。
Costcoのリテールメディア担当アシスタントバイスプレジデントのマーク・ウィリアムソン氏は、マーケティングニュースサイト「Marketing Brew」が2024年6月に配信した記事で、「Costcoのリテールメディアネットワークは、Costcoの会員にリーチするだけでなく、過去の顧客行動に基づいて、適切な理由から適切な消費者にリーチするお手伝いをします」と説明しています。
会員費値上げも現時点の影響は1%未満
ミラーチップ氏によると、コストコの会員費による売上高は11億6600万ドル。これは前年比7.8%増、8400万ドルの増加になります。2024年9月1日に実施した会員費の値上げ(ゴールドスター会員は60ドルから65ドル、エグゼクティブ会員は120ドルから130ドル)は繰り延べされた会計処理のため「まだ大きな影響はない」とミラーチップ氏は分析。「2025年第1四半期での影響は1%未満に過ぎない」と付け加えています。
米国とカナダでは、第1四半期の会員更新率は92.8%で、全世界では90.4%でした。
ミラーチップ氏によると、Costcoの第1四半期の有料会員数は7740万人で前年同期比7.6%増。そのうち1億3880万人が通常のカード会員(※編注:発行された会員カードの総数。Costcoでは家族カードは主会員1人につき1枚の追加カード、ビジネスアカウントは複数の従業員カードが発行できるので、カード会員数が有料会員数より多くなる)であり、前年比7.2%増となっています。
また、2025年第1四半期が終了した現在、Costcoの会員のなかで最上位の「エグゼクティブ会員」の数は3640万人で、前年同期比9.2%増。「エグゼクティブ会員」は有料会員の46.8%を占め、グローバル売上高の73.1%を占めているそうです。
リアル店舗で特筆すべき実績
ヴァクリスCEOによると、米国内のフードコートで、Costcoは2024年10月末のハロウィーンにピザの販売数で新記録を樹立しました。Costcoは前年のハロウィーンと比べて21%増となる27万4000枚のピザを販売。その数週間後、第1四半期が終了した後、米国のベーカリー部門は「サンクスギビング」の3日前に420万個のパイを販売しました。
Costcoはこの第1四半期に7つの店舗をオープン。そのうち4店は米国外でした。第1四半期の終了後も、「サンクスギビング」の前日に、Costcoにとって897番目の店舗をカリフォルニア州Pleasantonにオープンしました。ヴァクリス氏によると、この店の開店初日の売り上げは、米国内のCostcoとしては過去最高の290万ドルでした。Costcoは2025年度(2024年9月~2025年8月)に29店舗の開店を見込んでいます。
Costcoはグローバルで897店舗、ECは8か国で運営
2024年11月末現在、Costcoはグローバルで897の店舗を運営しています。
そのうち617店舗は米国とプエルトリコに点在。残りの店舗は次の国です。
- カナダ(109店舗)
- メキシコ(41店舗)
- 日本(36店舗)
- 英国(29店舗)
- 韓国 (19店舗)
- オーストラリア (15店舗)
- 台湾 (14店舗)
- 中国 (7店舗)
- スペイン (5店舗)
- フランス (2店舗)
- アイスランド (1店舗)
- ニュージーランド (1店舗)
- スウェーデン (1店舗)
Costcoが自社のECサイトを展開している国は以下の通りです。
- オーストラリア
- カナダ
- 日本
- メキシコ
- 韓国
- 台湾
- 米国
- 英国