
コストコのAI活用事例。需要予測で1億ドルのコスト削減、会員向けサービスで顧客満足度アップを実現

Costcoは、商品の需要予測、会員向けの旅行予約サービス「Costco Travel」のコンテンツなどにAIを活用しています。CostcoのこれまでのAI活用の取り組みやその効果実績、さらに今後の展望を見ていきます。
元CFOのガランティ氏が語るAI活用の展望
2025年の年次株主総会で取締役を退任するCostcoの元最高財務責任者(CFO)のリチャード・ガランティ氏が、2024年9月-2025年2月期(中間期)の決算説明会(2025年3月に開催)で回答した質問の1つは、「CostcoがAIをどのように活用しているか」「その技術がビジネスにどのような影響を与えるか」でした。
ガランティ氏は、AIの活用についてはまだ「初期段階」にあると回答。しかし、AI導入への道筋について、いくつかの見解を話しました。
ガランティ氏は「Costcoには、サードパーティのAI企業、特に米国の都市シアトルに本社を置く大企業が来訪しています。IT部門、CEO、運営およびマーチャンダイジングの責任者と協力して、どこに、どのように適合するかを検討しています」と説明。さらに「具体的な取り組みが多数ある」と話しました。
Costco、これまでのAI活用
需要予測で1億ドルのコスト削減に成功
「具体的な取り組み」には、少なくとも倉庫の在庫管理や需要予測におけるAIの活用事例が含まれています。
2018年という早い時期から、Costcoは機械学習モデルを使用、毎日どれだけのパンが在庫として必要になるかを予測していました。この試験運用は、Costcoが「倉庫」と呼ぶ30の店舗で実施。需要予測は過去の傾向を基にモデルを学習させると同時に、天気や地元のスポーツイベントのスケジュールなどの情報も予測の材料に入れていました。
ソフトウェア企業SAPによる2024年の記事によると、この機械学習モデルを使用した在庫効率化のシステムで、Costcoは最終的に1億ドル近くのコスト削減に成功。システムの全社的な導入につながりました。
「Costco Travel」でAIを用いたキュレーションを開始
Costcoが会員向けに提供するサービスの1つに旅行予約サービス「Costco Travel」があります。2025年に「Costco Travel」にAIを活用するために協力しているテクノロジーベンダーの企業名を公開しました。
英国本社のテクノロジー企業Travelportと協力することを2025年2月に発表。この契約でCostcoは、Travelportが「AIを活用したコンテンツキュレーションレイヤー」と呼ぶサービスを「Costco Travel」に導入、会員1人ひとりに適した旅行をキュレーションします。

最終的に、複数の情報源から旅行サービスを集め、Costcoの会員に快適な検索体験を提供するポータルを構築。Costcoは会員にとってより価値の高いシステムを構築できることを期待して、Travelportのテクノロジーサービス導入を決めました。
Travelportの代理店事業担当最高商務責任者であるジェイソン・トゥースマン氏は、Costcoとの契約発表時に次のように説明しました。
「Costco Travel」は、Costcoの会員が旅行を計画する時により多くの選択肢とより良い提案をすることで、会員にさらなる価値を提供することにフォーカスしています。Travelportは顧客企業の期待に応えるシームレスでモダンな旅行コンテンツの販売を提供します。 (トゥースマン氏)
Costcoの2025年EC売上高は188.7億ドルの見込み
米国のEC専門誌『Digital Commerce 360』は、2025年のCostcoのEC売上高が188億7000万ドルに達すると予測しています。
