【あの人は今】桃源郷(現Lifeit)の“あつお兄”は洗濯代行ビジネスで2度目の起業をしていた
「桃源郷の“あつお兄”」。2007年度の「楽天市場ショップ・オブ・ザ・イヤー」で総合1位を獲得するなど、EC業界で名をはせた桃源郷(現Lifeit)の創業者・大橋淳氏のニックネームである。2008年にNECビッグローブ(当時、現ビッグローブ)へ株式を売却後、EC業界から去った大橋氏。2018年12月、そんな大橋氏とLifeitの忘年会で再会することができた。
大橋淳さんってどんな人?
2007年度の「楽天市場ショップ・オブ・ザ・イヤー」で総合1位を獲得した際、総合2位は「Joshin web 家電とPCの大型専門店」。モール系のアワードを総ナメしている上新電機を押さえて、ECのベンチャー企業が総合グランプリを獲得するという大偉業を成し遂げた桃源郷(現Lifeit)の創業者。
会社の設立は2001年(当時は有限会社恵門コーポレーション)。デジタル家電、アウトドア商品、アクセサリーなど幅広い商材を扱い、「楽天オークション」を中心に「BtoC」型のオークションサービスを展開し、業容を拡大した。
今では大企業によるECベンチャー企業の買収は当たり前だが、2008年当時はほぼ皆無。NECビッグローブへのバイアウトによって、「ECで起業し、多額の資産を得るという“eコマースドリーム”の道を切り開いた人」(業界関係者)という人物評もある。
さて、バイアウトによって資産を築いた大橋氏はその後、桃源郷(現Lifeit)の会長などを歴任。退任後、J&Jカンパニーを立ち上げ、洗濯代行ビジネスを手がけているのだ。
サービス名称は、宅配洗濯代行&クリーニングサービス「しろふわ便」。1か月8800円(税別)で専用バックに詰め放題(専用バッグには1人暮らしであれば4~5日分の洗濯物、Tシャツなら約50枚が入るという)、月5回まで利用できる「翌日配送・月額制」のサービスを展開。8800円のプランであれば、午後回収で翌日午後にクリーニング済みの洗濯物を利用者の自宅に届ける。「業界最速・最安値」と大橋氏は胸を張る。
利用者は個人のほか、大手IT企業、ジム・マッサージ店、ネイル、歯医者などさまざまな業種・業態の法人が利用し、リピート率が高いという。
同様のビジネスでは、フランチャイズ制で店舗を増やしているコインランドリー併設型のWASH&FOLDが知られている。「しろふわ便」は「単体店舗としては、あと1年ほどで日本最大級の洗濯代行サービスになっているだろう」と大橋氏は話す。
ECでは全国を商圏にさまざまな商品を売っていたが、現在は“都内”に商圏を限定し、主に法人や働く人へターゲットを絞るというEC時代とは真逆のビジネスを手がけ、事業規模を拡大させている。
ちなみに、大橋氏は宅配洗濯代行&クリーニングサービス「しろふわ便」を手がけていることを公にしていない。今回の再会を機に、“洗濯代行業の「あつお兄」”を売り出していく方針。なお、大橋氏は民泊サービスを手がけるG.T.A株式会社の代表取締役も務めている。
創業者と4代目社長
そんな大橋氏と数年ぶりに再会したのは12月中旬に開かれたLifeitの忘年会。
Lifeitは2018年8月付で、健康茶、健康食品、化粧品などの通販・ECを手がけるティーライフの傘下に入り、代表者はティーライフから送り込まれている。
Lifeitの社長に就いたのはティーライフの取締役で、国内事業本部長兼商品企画販売部長の須浪薫氏。三洋電機、セシール(ディノス・セシール)などを経て、ティーライフに入社した人物である。2001年の会社設立から、Lifeitの社長は須浪氏が4代目となる。
大橋氏は会の中盤、サンタクロースの衣装に身を包み、余興を披露。Lifeit社員と組んだバンド「桃色スペードX」のボーカルでもあるという大橋氏は、「あつおにぃ」という社員の黄色い声を前に、4曲ほど熱唱した。
現社長の須浪氏はその様子を温かい目で見守っていた。企業買収によって、飲み込まれた側の会社の雰囲気が変わったり、人間関係にヒビが入るといったケースは少なくない。Lifeitの忘年会を見る限り、そのような様子はみじんも感じられない。
会の終了後、大橋氏は自転車に乗り元部下たちへ「バイバイ」と言いながらさっそうと立ち去り、須浪氏は2軒目のビールを求めて夜の街に消えていった。