Digital Commerce 360[転載元] 4/11 8:00

米大手スーパーマーケットチェーンWalmart(ウォルマート)は、事業者向けに提供している広告事業を強化する計画です。その一環として、広告プラットフォームに新たな機能を追加。たとえば、季節限定の企画やサプライヤー主導の店舗イベントなど、販売事業者のマーケティングに貢献するさまざまな広告オプションを展開します。

広告事業を強化するWalmart

Walmartに商品を出品している販売事業者は、最も急成長している事業者群の1つ。その事業者向けに展開しているWalmartの広告プラットフォーム「Walmart Connect」は、2023年に30億ドルの売り上げを計上しました。

そんなWalmartは2024年、「Walmart Connect」を大きく成長させる計画を掲げました。

「Walmart Connect」を運営するWalmart Connect社のリッチ・レアフィールド氏(シニア・バイス・プレジデント兼ジェネラル・マネージャー)は、Walmartの広告事業の役割について次のように話しています。

Walmartの広告事業は、米テレビメーカーのVIZIO(ビジオ)のM&A新たな店内体験の展開大手メディアパートナーとの試験運用の発表後、大変注目を集めています。(レアフィールド氏)

「Walmart Connect」がWalmartの販売事業者に提供する広告プラン(動画は「Walmart Connect」のYouTubeアカウントから編集部が追加)

Walmartの計画は、「Walmart Connect」の広告主のなかでも最も急成長している層である、「walmart.com」販売事業者の広告出稿をより容易にすることだとレアフィールド氏は話しています。2023年に販売事業者が出稿した広告費は、前年比63%増加しました。

「walmart.com」トップページ(画像はサイトから編集部がキャプチャ)
「walmart.com」トップページ(画像はサイトから編集部がキャプチャ)

広告オプションの拡充

さらなる成長を促進するため、「Walmart Connect」は、以下の機能を追加します。

ディスプレイ広告の提供拡大

Walmartのディスプレイ広告は、事業者規模を問わずあらゆる販売事業者が利用できるようにします。また、広告主が代理店を介さず、セルフで広告を出稿できるプラットフォーム「Walmart Ad Center」では、ベンチャー企業もディスプレイ広告が利用できるようになります。

Walmartのディスプレイ広告は、プログラムにより自動で広告枠を入札し、ターゲットに適した広告を表示する「プログラマティック広告」。また、ユーザーがキーワードを検索した時点で広告の掲載順位や表示の有無が決まる「オークションベース」でもあります。今後はこうした「プログラマティック広告」「オークションベース」の傾向がますます強くなります。

「walmart.com」販売事業者以外の広告活用

Walmartは、「walmart.com」に商品を出品していなくても、消費者のニーズを満たす補完的な商品を提供するブランドを広告主として受け入れます。自動車、エンターテインメント、金融サービス、ファストフード店、旅行はその対象です。

よりグローバルなサービス展開

Walmartは、海外からの「walmart.com」出品者向けに、セルフサービスツールをさらに追加します。

「walmart.com」を超えた出稿場所の提供

Walmart Connect社は、広告主にとって、消費者にオムニチャネルでの買い物を促すことがこれまで以上に重要になると見ています。そのため、「walmart.com」以外にも、より多くの広告を掲載できる場所を提供するため、次のような取り組みを行っています。

  • 店頭でのサンプル体験コーナー拡充
  • デジタルサイネージでのウォール広告をはじめとする、店舗内キャンペーンの促進のためのセルフサービス機能追加
  • インターネットを通じて映画を見たりゲームを楽しんだりすることができるストリーミングサービスを提供する「ロク」を提供する米Roku社や、「TikTok」を提供する中国バイトダンス社とのメディアパートナーシップ

より優れたターゲティング

レアフィールド氏によると、Walmartは広告費を最大限活用したいと考える広告主のニーズに応えて、より正確な測定ツールを提供する予定です。

Walmart Connect社は、スポンサーによる検索広告の、店内におけるコンバージョンへの貢献度をテスト。2024年はこの機能の改善を継続する計画です。また、店舗内キャンペーンのコンバージョン率や、店内デモの「walmart.com」出展店舗への導線を取り入れる予定です。

Walmart Connectはまた、Walmartの広告配信プラットフォーム「ウォルマートDSP」に分析ツールを導入し、より精度の高いターゲティングツールを広告主に提供していきます。

広告主のクリエイティブ作成をサポート

Walmartは、広告主の広告クリエイティブ作成にも役立つサービスを展開していきます。広告主が広告のクリエイティブを構築し、最適化できるように機械学習ツールを導入する予定です。

また、「Walmart Connect」の広告主は2024年、動画広告や新しい広告テンプレートなど、より多くのセルフサービスツールを広告キャンペーンに利用できるようになります

広告事業がグループの収益性をけん引する見通し

Walmartは2021年にWalmart Connect社を設立。設立当時の声明で、最高顧客責任者のジャニー・ホワイトサイド氏は「Walmartグループのオムニチャネルメディア企業として、自社独自の方法で顧客企業にサービスを提供できるビジネスを構築しました」と説明しています。

顧客企業に提供する広告サービスを拡大することで、Walmartの経済圏だけでなく、その先のパートナー企業や消費者に対しても価値を生み出しています。(ホワイトサイド氏)

設立以来、Walmartグループの成長に向けて広告ビジネスを加速させており、最近ではVIZIOの買収を発表。買収額は約23億ドルで、狙いはVIZIOの広告ソリューション事業を取り込むことによるWalmartの広告事業を強化です。

Walmart Connect社の事業は急速に成長しており、2023年11月-2024年1月期(第4四半期)では、売上高が前年同期比で22%増加しました。

広告出稿は食料品の出品に比べて利益率が高いため、広告が今後も大きな役割を果たし、Walmartの収益性をけん引していく可能性が高いでしょう。(WalMart 最高財務責任者(CFO) ジョン・デイビッド・レイニー氏)

この記事は今西由加さんが翻訳。世界最大級のEC専門メディア『Digital Commerce 360』(旧『Internet RETAILER』)の記事をネットショップ担当者フォーラムが、天井秀和さん白川久美さん中島郁さんの協力を得て、日本向けに編集したものです。

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