Digital Commerce 360[転載元] 11/7 8:00

バイトダンス社が運営する動画共有アプリ「TikTok」上で商品やサービスを販売できる「TikTok Shop」は11月中旬以降、ホリデーシーズン向けのさまざまなセールを実施する予定です。「TikTok Shop」は2023年9月に米国でローンチして以来、その認知度と売り上げを拡大。特に若年層による利用が広がっています。既存のECプラットフォームと比較して、支持を集めている理由とは何でしょうか。ローンチから1年を経て見えてきた「TikTok Shop」の特長、ホリデーシーズン向けの取り組みと合わせて解説します。

「TikTok Shop」が2024年のホリデーシーズンに計画しているセール企画

2023年9月に米国で正式ローンチした「TikTok Shop」は、2023年のホリデーシーズンでの利用が拡大、EC市場にインパクトを与えました。「TikTok Shop」は現在、1年以上の運用でユーザー行動やマーケティングノウハウを学習・蓄積し、2024年のホリデーシーズンのセールスに向けて準備を進めています。

ユーザーに対して動画コンテンツやストアからシームレスに商品を提案する「TikTok Shop」(画像は「TikTok」のニュースルームから編集部がキャプチャ)
ユーザーに対して動画コンテンツやストアからシームレスに商品を提案する「TikTok Shop」(画像は「TikTok」のニュースルームから編集部がキャプチャ)

「TikTok Shop」はホリデーシーズンのセールスを強化するため、消費者の購入意欲を煽るようなさまざまなオプションを準備しています。「TikTok Shop」内で販促しているブランドの訴求強化、インフルエンサー活用などを進める予定です。

先行プロモーションで訴求

10月に米国ニューヨーク市で実施された「TikTok」のイベントでは、ブランドのクリエイターや「TikTok Shop」に商品を出品している販売者が一堂に会し、「TikTok Shop」で成功するための秘訣を披露しました。

11月には「TikTok Shop」がホリデーシーズンに向けてのセールスを計画していることを消費者に知ってもらおうと、多くのイベントを実施する予定です。

その一例が、「Brand Palooza(ブランド パルーザ)」と呼ばれるプロモーションです。「TikTok Shop」は「Brand Palooza」実施期間の11月13日から27日まで、「Phillips」「Benefit Cosmetics」「Liquid IV」「HeyDude」「The Ordinary Store」などの有名ブランドにフォーカスし、ホリデーシーズンならではの限定商品を訴求します。

このほかのイベントは、「TikTok Shop」販売事業者によるライブ配信、「TikTok Shop」の利用者に対し、支払い時には個人間送金アプリ「Venmo」の利用を促すためのプロモーション活動などを計画しています。

「TikTok Shop」はユーザーによる“発見型”のEコマース

「TikTok Shop」の米国運営責任者であるニコ・ル・ブルジョワ氏は「『TikTok Shop』は、商品との出会いから購入まで、すべてアプリ内でシームレスにユーザーを導きます」と説明。このようなショッピング体験を「発見型Eコマース」(ル・ブルジョワ氏)と呼んでいます

「TikTok Shop」の売り上げはローンチ以来伸びています。「TikTok Shop」が販売事業者の参入障壁を低くしているため、今では多くの販売事業者が出品しています。

「TikTok Shop」を利用するユーザーの数も拡大しています。2023年9月に米国でローンチして以来、「TikTok Shop」で買い物をするユーザー数は毎月、ほぼ3倍で増えています。

ユーザーに“発見”をもたらすことが「TikTok」が提供する価値の中心です。「TikTok」や「TikTok Shop」では、どのようなクリエイター、販売者、ブランド、商品でも大ヒットになり得ることが素晴らしいと自負しています。(ル・ブルジョワ氏)

Adobeが提供するアクセス解析ツール「Adobe Analytics」の予測によると、2024年のホリデーショッピングシーズン(11月1日~12月31日)における米国のEC売上は、前年比8.4%増になると予測。総売上高を見ると、2023年の2218億ドルを上回る2408億ドルに拡大します。

このような予測がなされるなか、これだけ「TikTok」が盛り上がっていても、EC業界の専門家たちは、AmazonやWalmartにとって「TikTok」はそれほど脅威ではないと考えているようです。

購入画面へのシームレスな遷移に特長

ユーザー行動を分析するカナダ・トロントのランクセキュア社でCEOを務めるバルーク・ラブンスキー氏は「動画コンテンツからのシームレスな購買体験を通じてブランドを試しに買ってみたい人にとって、『TikTok』が持つ特長は利便性が高いです」と説明。そして次のように付け加えます。

「TikTok」の特長は、ブランドを宣伝するコンテンツクリエイターやインフルエンサーから、購入画面に簡単に移動できることです。(ラブンスキー氏)

「TikTok Shop」ではクリエイターやインフルエンサーへの関心をきっかけに、シームレスに商品購入につなぐ(画像は「TikTok」のニュースルームから編集部がキャプチャ)
「TikTok Shop」ではクリエイターやインフルエンサーへの関心をきっかけに、シームレスに商品購入につなぐ(画像は「TikTok」のニュースルームから編集部がキャプチャ)

顧客のメインは若年層

ラブンスキー氏は、数多くあるECプラットフォームのうち、若年層には「TikTok Shop」が最も浸透する可能性が高いと考えていますが、「『TikTok Shop』は現在、若年層や10代の間で利用者が増加しているものの、『Amazon.com』や『Walmart.com』を脅かす存在にはならないと思います」と見ています。なぜなら、若年購買層は一般的に、ほかの世代と比べて購入予算が少ないからです。

1世帯あたりで可処分所得が最も多いのは年長者ですが、彼らは「TikTok」の主要ユーザーではありません。多くの場合、彼らは「TikTok」のプラットフォームに警戒感を抱いており、AmazonやWalmartなど、自分たちが日頃から慣れ親しんで利用しているものにこだわる傾向があります。(ラブンスキー氏)

画面スクロールをショッピングの機会に変える

既存のEC事業者すべてが「『TikTok Shop』を恐れる必要はない」とたかをくくっているわけではありません。

ECプラットフォーム構築支援を手がけるBloomreachのコミュニティ&コンテンツマーケティングディレクターであるロキシー・コーズ氏は、「TikTok」のEC市場は拡大していると指摘しています。

「TikTok Shop」は、EC事業者にとって本格的なライバルになりつつあります。世界中で約19億人のユーザーが1日約1時間「TikTok」を閲覧しており、ユーザーによる画面スクロールを購買機会に変えているのです。(コーズ氏)

コーズ氏は、画面スクロールで商品を知る機会が増えたり、シームレスに購入につながる点が、小売業界の状況を変えると予測してします。

ユーザーが欲しい商品を決めてから訪れる「Amazon.com」「Walmart.com」とは異なり、「TikTok」のレコメンデーションアルゴリズムは、ユーザー自身が自分が欲しいと思っていることを自覚していなかった商品を新たに発見できるように設計されています。(コーズ氏)

ほかのECサイトにはないソーシャルな一面を持ち合わせているからこそ、「TikTok」はEC市場で優位に立つ可能性があるのです。「『TikTok』はEC市場のあり方を定義し直すような画期的なトレンドです。既存の小売事業者は注視する必要があります」(コーズ氏)

この記事は今西由加さんが翻訳。世界最大級のEC専門メディア『Digital Commerce 360』(旧『Internet RETAILER』)の記事をネットショップ担当者フォーラムが、天井秀和さん白川久美さん中島郁さんの協力を得て、日本向けに編集したものです。

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