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米国「TikTok」の利用禁止騒動で注目が集まった動画コマース特化のプラットフォーム「Orme」とは?
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中国のByteDance(バイトダンス)が運営する動画投稿アプリ「TikTok」が、米国内でのサービス利用禁止が2025年1月に浮上したことで、「Orme」といった動画コマースプラットフォームの利用者が拡大しています。「Orme」は米国内での「TikTok」利用停止前後で、ユーザー数は約15%拡大。「TikTok」とは一線を画し、ECにつながることを最優先とする動画プラットフォームとして独自路線を進めています。
「TikTok」に代わる動画コマースが米国内で普及拡大
「TikTok」の利用を禁止する法律が米国内で2025年1月19日に発効される前に、「TikTok」は一時的にサービス利用を停止しました。その時、米国企業のORMEが運営するEC機能を重視したソーシャルプラットフォーム「Orme」は、アプリのダウンロード数が急増。「Orme」を開発・提供するORMEのファイザル・アーメッド氏(共同創業者兼CEO)は「動画をアップロードしたいという人々が『Orme』に押し寄せました」と振り返っています。
「Orme」の特長+ビジネスモデルとは?
「Orme」はオンラインマーケットプレイスであると同時に、ソーシャルメディアプラットフォームでもあります。「TikTok」やMetaの「Instagram」上で最大90秒の縦型動画を作成・投稿・視聴できる機能「Reels」と同様、ユーザーの興味に基づいて動画フィードを表示します。
![「Orme」のUIイメージ(画像は「Orme」の公式サイトから編集部がキャプチャ)](http://netshop.impress.co.jp/sites/all/modules/bancho/bancho_lazyload_img/assets/blank.gif)
「Orme」が「TikTok」や「Instagram Reels」と異なるのは、各動画にユーザーが購入できる商品が少なくとも1つ表示し、アプリ内ブラウザを開いたり、アプリから離れることなく、動画ページから直接商品を購入できる点です。
![すべての動画について、「Orme」から直接購入できるECの導線がひかれている(画像は「Orme」の公式サイトから編集部がキャプチャ)](http://netshop.impress.co.jp/sites/all/modules/bancho/bancho_lazyload_img/assets/blank.gif)
ユーザーが「Orme」を通じて商品を購入した場合、その商品の動画を制作したクリエイターは必ず手数料を受け取れる仕組みがあります。クリエイター本人の発信ではなく、別のユーザーがその動画をシェアした場合でも、動画をシェアしたユーザーと動画を制作したクリエイターの両方が、動画経由で販売・購入された商品の手数料を受け取ることができます。
「TikTok」の米国内での利用禁止に伴う「TikTok難民」に対応するため、ORMEは従前の機能に変更を加えました。
その変更には、商品の購入ルートを設けない動画のアップロードの許可、商品の世界観にフォーカスした動画への転換などがあります。米国のEC専門誌『Digital Commerce 360』による取材で、ORMEの共同創業者であるロバート・ディロレン氏は「『Orme』はすでに、それらの変更からさまざまなインサイトを学んでいます」と説明しました。
「TikTok」利用禁止議論の渦中に「Orme」のユーザーが急増
ORMEは2024年4月に「Orme」の提供を始めたため、サービスリリースから1年も経過していません。
ファッションブランド「Halston」やバスケットカバンのブランド「Longaberger」などを展開するXcel Brandsは、2024年中盤の決算説明会で次のように説明しました。なお、ORME共同創業社のディロレン氏は、Xcel Brandsの会長兼CEOでもあります。
IT企業との合弁事業としてORMEを立ち上げます。また、Xcel BrandsがORMEの株式の30%を保有します。(ディロレン氏)
Xcel Brandsの2024年7-9月(第3四半期)決算説明会では「『Orme』は3万人近いユーザーを獲得し、順調なスタートを切っています」(ディロレン氏)としています。
2025年1月19日とされていた「TikTok」利用停止の前に米国内でのサービスを一時停止した際、「Orme」など他のプラットフォームがその空白を埋めようとする動きが生まれました。
最も人気があったのは米国内の多くの「TikTok」ユーザーが閉鎖を見越してインストールしていた中国のソーシャルメディアアプリ「RedNote(小紅書)」でした。「RedNote」は中国企業Xingyin Information Technologyが運営するソーシャルメディアで、「中国版Instagram」とも言われています。
米国企業のORMEが運営する「Orme」も勢いを増しました。「TikTok」閉鎖前後の数日間で、「Orme」はユーザー数を約15%拡大。アーメッド氏はこれをTikTok利用禁止議論に直接起因するものだと見ています。
TikTok利用禁止が「Orme」に与えた変化
購入不可の動画の投稿許可もすぐに修正
急増した新規ユーザーのさまざまなニーズに対応するため、ORMEはユーザーが購入不可の動画も投稿できるように「Orme」の仕様を変更しました。しかし、アーメッド氏とディロレン氏は、この試みは長くは続かなかったと振り返ります。「ある意味、失敗でした。ただのソーシャルメディア投稿サイトになってしまいました」(アーメッド氏とディロレン氏)
変更の数日後、「Orme」は元の購入可能動画のみのモデルに戻すことを決定。同時に、動画コンテンツを投稿する際のフィルターを新たに設定しました。「Orme」に動画を投稿するユーザーは、アプリで動画コンテンツを作成する前に、「Orme」で少なくとも1000人のフォロワーを持っている必要があるというものです。ただし、すべてのユーザーは動画投稿者が制作したコンテンツを引用してシェアできます。
アプリに変更を加えた3~4日間は、興味深い動画コンテンツがいくつかありましたが、「Orme」はEC機能を最優先としたソーシャルサイトです。ソーシャルメディアや、EC機能が二の次になるようなプラットフォームではありません。(ディロレン氏)
「TikTok」よりも高価格帯のブランディング
また、「『Orme』は『TikTok』と直接競合していたわけではない」とアーメッド氏は言います。ディロレン氏も「米国内で『TikTok』がサービスを停止したことで『Orme』に注目が集まりましたが、『Orme』は『TikTok』と異なり、アップロードされる動画コンテンツで高級感のあるブランドを取り扱っています。EC事業者が「TikTok」上で仮想店舗を出店できる『TikTok Shop』にあるブランドの多くは、低~中価格帯です」と説明しています。
「Orme」はかねてから、ヨーロッパ発のハイブランドではないものの、高級感のあるプレミアムゾーンのブランドを引き付けることを意図してきました。通常、プレミアムブランドは平均注文額が高くなる傾向にあります。ORMEは、20ドル、25ドルという低価格帯で勝負しようとしているのではありません。(ディロレン氏)
今後の焦点は美容カテゴリー
2025年1月現在、「Orme」は主に美容ブランドの商品の販売に注力する方向に転換しました。アプリにすでに登録されているアパレルやその他の小売ブランドは引き続き運用となりますが、「Orme」は徐々にヘルス&ビューティーカテゴリーに突出していく予定です。
![「Orme」は商品の重点を美容製品に移す方針としている](http://netshop.impress.co.jp/sites/all/modules/bancho/bancho_lazyload_img/assets/blank.gif)
「Orme」はこの方向転換により、ORMEや動画投稿者に売上アップをもたらす以上に、美を探求する「場」にもなります。ヘルス&ビューティーカテゴリーは、動画コマースに非常に適しています。(ディロレン氏)
さらに、アーメッド氏は、衣類、靴、ハンドバッグは、美容商品と比較して返品率が高いことを指摘。「Orme」に登録された主要なアパレルブランドのなかには、コンテンツがまったくないものもあったそうです。「これと対照的に、ほとんどの美容ブランドは、プラットフォームにアップロードできる優れたコンテンツを持っています」(ディロレン氏)
テレビチャンネルのライブ配信を計画
まだ実装されていませんが、ディロレン氏によると「Orme」にはテレビチャンネルをライブ配信できる機能があるそうです。
テレビショッピング大手のQVCとHSNは、Xcel Brandsにとって非常に重要な戦略的パートナーです。Xcel Brandsは両社の主要ベンダーの1つで、Xcel Brandsにとって両社は最大の小売パートナーの1つです。(ディロレン氏)
Xcel BrandsとQVC、HSNなどを傘下に持つQVC Groupは、互いに情報を共有しています。ディロレン氏によると、QVC Groupは短編動画とソーシャルコマースに注目しています。その理由は、ケーブル離れが進み、ケーブル配信が年々縮小していることを課題と認識しているからです。
Xcel Brandsの計画は、逐一QVC Groupに知らせてきました。「Orme」には、独自機能として、どのテレビ局からのライブ配信も受け付ける機能を組み込みました。「Orme」自体がストリーミングネットワークになることを可能にするためです。(ディロレン氏)
QVC Groupは、以前のQurate Retail Groupという名前から社名を変更しました。これは、テレビネットワークとWebサイトのブランド認知度を活用するための一環です。
QVCとHSNは、テレビという言わば動画配信プラットフォームでマーケティングを行い、実績を重ねてきました。この一方で、「Netflix」「Sling」などその他の動画配信プラットフォームに、買い物をする目的でアクセスする人はどれくらいいるのでしょうか?
リアルタイムで在庫を確認できるプラットフォームで、ライブフィードを一日中配信できれば、「Orme」はEC第一の視点から構築された新しいストリーミングプラットフォームを展開できます。QVCやHSNではすでに一日中、毎日、長編コンテンツを作成しているのですから。(ディロレン氏)