めざすのは「EC小売業から変革」「Electronic Intelligent Commerce企業へ」、シュッピンの中長期計画

シュッピンは中期経営計画で、従来の「EC小売業」から最先端テクノロジーを駆使する「Electronic Intelligent Commerce企業」への変革を打ち出した。

鳥栖 剛[執筆]

8:30

シュッピンは5月12日、2027年3月期から2029年3月期を対象とする中期経営計画を公表した。長期ビジョンとして掲げるのは、従来の「EC小売業」から、最先端テクノロジーを駆使する「Electronic Intelligent Commerce企業」への変革だ。新中計はその“ファーストステップ”と位置付け、経営環境の変化を迅速に織り込むため、計画を毎期更新する「3年ローリング方式」で運営するという。

めざすのは「EC小売業から変革」「Electronic Intelligent Commerce企業へ」、シュッピンの中長期計画
「Electronic Intelligent Commerce企業」へ変革(画像はIR資料から編集部がキャプチャ)

経営方針には、ECプラットフォーマーとして「独自のビジネスモデル」へ進化し、利益を積み上げるフェーズへ移行することをあげた。また、今後より高い成長が見込まれる時計事業に経営資源を重点投入する。

2029年3月期に売上高633億円、EC売上高468億円を計画

2026年3月期実績の売上高519億円(EC売上高392億円)から、2029年3月期に売上高633億円(EC売上高468億円)へ拡大させる方針を示した。利益面は、2029年3月期に営業利益37億円、経常利益37億円、当期純利益25億円を計画。ROE(自己資本利益率)は2029年3月期に20%を目標に掲げる。

めざすのは「EC小売業から変革」「Electronic Intelligent Commerce企業へ」、シュッピンの中長期計画
2029年3月期にEC売上高は468億円を計画(画像はIR資料から編集部がキャプチャ)

事業別の計画では、カメラ事業が2026年3月期の407億円(EC売上高は344億円)から2029年3月期に455億円(同392億円)へ、時計事業が104億円(同42億円)から171億円(同72億円)への伸長を見込む。筆記具事業も4.8億円(同3.4億円)から6.3億円(同4.5億円)へ拡大させる計画だ。

めざすのは「EC小売業から変革」「Electronic Intelligent Commerce企業へ」、シュッピンの中長期計画
商材セグメント別の計画(画像はIR資料から編集部がキャプチャ)

中計の軸は「ECプラットフォーマー」としての進化

中計で打ち出した成長戦略は、①カメラ事業の安定成長 ②時計事業の強化 ③海外ビジネス(越境EC)の強化――の3本柱だ。

カメラ事業で安定的に利益を計上しながら、成長余地が大きい時計事業へ経営資源を重点配分し、“来たるべきブルーオーシャンに向けた種まき”として投資を続ける。越境ECでは、北米市場を中心とした「eBay」や、世界最大級のオンラインマーケットプレイス「Chrono24」への出店実績をさらに積み上げていく考えだ。

戦略の土台にあるのが、シュッピンが「独自のビジネスモデル」と呼ぶEC中心の事業構造だ。多店舗展開ではなくECプラットフォームをコアに据え、One to Oneマーケティングによって顧客のスマートフォンなどへ“直接訪問”するスタイルを採る。

めざすのは「EC小売業から変革」「Electronic Intelligent Commerce企業へ」、シュッピンの中長期計画
シュッピンのビジネスモデルの概要(画像はIR資料から編集部がキャプチャ)

さらに、AIによる高精度・自動化された売買価格設定(買取査定)を組み込み、在庫保有コストを低水準に抑えながら、高い買取価格を実現している。こうした「デジタルを活用した高効率・高付加価値なオペレーション」と「越境ECによる海外需要の取り込み」を、競争優位性としてあげる。

カメラ事業:ポイント活性化、One to One、テクノロジー起点の新サービスへ

カメラ事業は、次の打ち手として「シュッピンポイントプログラムの活性化」「One to Oneマーケティング」「AI・テクノロジーを活用した顧客サービス」をあげている。基幹システム刷新(リプレイス)完了後にはECサイトをリニューアルし、顧客向けの新サービスをローンチする計画も盛り込む。

また、新規顧客獲得の文脈で「Camera is Fashion」を掲げ、アパレル市場からの新規顧客獲得や、リアルイベントを通じた世界観訴求も推進する方針だ。

めざすのは「EC小売業から変革」「Electronic Intelligent Commerce企業へ」、シュッピンの中長期計画
カメラ事業の成長戦略(画像はIR資料から編集部がキャプチャ)

時計事業:成長ドライバーとして強化、コンテンツ力を生かす

中計で最も資源配分を強める方針なのが時計事業だ。時計は小型・高付加価値で販売効率が高く、仕入れ〜保管〜販売までカメラ事業とオペレーション面での類似性もあるため、シュッピンが持つECプラットフォームやOne to Oneマーケティングのノウハウを転用しやすい領域だという。

めざすのは「EC小売業から変革」「Electronic Intelligent Commerce企業へ」、シュッピンの中長期計画
時計事業の成長戦略(画像はIR資料から編集部がキャプチャ)

市場環境は、中古高級時計市場の拡大、EC化の進展、富裕層マーケットの拡大が重なり、“ブルーオーシャン化”していくとの見立てを示している。

カメラ事業で培った成功体験(記事や動画などの豊富なコンテンツ制作)を生かしながら、高価格帯・希少価値商品のラインナップ拡充や、富裕層向け施策の展開を進める。

めざすのは「EC小売業から変革」「Electronic Intelligent Commerce企業へ」、シュッピンの中長期計画
時計事業はブルーオーシャン化していくと見立てている(画像はIR資料から編集部がキャプチャ)

越境EC:主要KPIは「購入者評価」、高品質運用で拡大へ

海外ビジネス(越境EC)では、カメラ事業は「eBay」、時計事業は「eBay」「Chrono24」など、外部プラットフォームとの連携実績を基盤に、今後も販売点数を伸ばしながら高評価を維持する方針を示した。

越境ECにおける主要KPIを「購入者評価」と位置付け、高品質な運営を武器に売上拡大をめざす。

めざすのは「EC小売業から変革」「Electronic Intelligent Commerce企業へ」、シュッピンの中長期計画
越境EC事業の主要KPIは「購入者評価」に(画像はIR資料から編集部がキャプチャ)

投資の重点は仕入れ強化とEC基盤へ

3か年累計のキャピタルアロケーション(資本配分)は、時計事業のラインナップ拡充を目的とした「商品仕入れ」に32億円、ECプラットフォーム強化(リプレイス)に伴う「システム投資など」に7億円を計画している。

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