世界最大手の小売企業であるウォルマート・ストアーズは、ECサイトでの商品販売ではディスカウント価格で商品を提供し、商品店舗受け取りサービスを行うことによって売上アップを図っています。

ウォルマートが会員制のECマーケットプレイス「Jet」を運営するジェット・ドット・コムを33億ドルで買収したことを発表したのは9月19日。業界関係者の多くは、この買収がどのような成果を上げるのか注視しています。

業界アナリストや関係者たちの最大の関心事は、ウォルマート(インターネットリテイラー社発行「全米EC事業 トップ500社」第4位)が、ジェットのスマートカートプライシングシステム(単なる値引きではなく、さまざまな買い物方法によってディスカウントする仕組みを)を自社のECサイトに組み込むかどうか、ということです。

ウォルマートの動向を分析しているKanter Retail社のアナリスト、ローラ・ケネディ氏は、このように話します。

“毎日がお買い得”というウォルマートの謳い文句と、スマートカートの仕組みは矛盾するのではないかと考えてしまいます。もちろん、低価格と価格決定の柔軟性を両立させることは重要ですが、ウォルマートが自社サイトでスマートカートを採用し、その仕組みでECサイトを運営するとは思えないのです。

ジェットはある特定商品を大量に発注したり、返品不可などのオプションを付けることで、配送コストを削減しています。そうすることで、消費者がより安く商品を購入できるようにするのが、ジェットが消費者に提供している価値です。

ウォルマートのCEO、ダグ・マクミロン氏は先日、現在はウォルマートe-commerceの社長に就任したマーク・ローイ氏(ジェットの創設者でありCEO)と、投資家やアナリスト向けのプレゼンテーションに登壇しました。

ウォルマートは、ジェットのスマートカートプライシングシステムをサイトに組み込むかどうかの明言を避けました。ローイ氏はプレゼンテーションの中で、「消費者はスマートカートに好意的に反応した」と説明、ジェットの初期成長はスマートカートが寄与していると話しました。

ジェットは創業後14か月間で、12億ドルのランレート(進行中の年度や四半期の通期業績予想を、期首から現在までの傾向を延長して推計した年換算値)を達成しています。

リピート客がカートに入れる商品の数は6.9個なので、ほぼ7個です。消費者は多くの商品をカートに入れます。すべての商品を同じ物流センターから受け取ることになるので節約につながります。私たちは、サイト全体のエコシステムを利用して、コストを削減しています。

このようにローイ氏は語りました。またECの価格決定に関しても大変興味深い話をしました。

「消費者が通りを歩いているとわかったら、販売者は消費者を呼び止めて、私の商品は供給コストが低いので、もっと商品の値段を安くできますよ!と売り込むことができるでしょう」とローイ氏は言います(編集部補足*たとえば、商品にはベンチマーク価格として「Amazon」での販売価格をサイト内に表示したり、1つの店舗で購入するほど割引額は大きくなるなど、さまざまな買い物方法によってディスカウントする仕組みを構築している)。

「Amazon」よりも「Jet」が価格面で魅力的な理由はなぜ。そのビジネスモデルを研究④
たとえば、Amazonでの販売価格が表示するJet独自の仕組み(画像右、画像は編集部が追加)

ウォルマートがジェットを買収したのは、アマゾン(インターネットリテイラー社発行「全米EC事業 トップ500社」第1位)からシェアを奪い取るためだと言えるでしょう。

マクミロン氏をはじめ、ウォルマート役員達は、自社だけでアマゾンからシェアを奪うのは無理だと判断。ジェットを率いるローイ氏に賭けたのです。それは、アマゾンとの差を少しずつ縮めていくためです。

ウォルマートがアマゾンに勝つには、大規模な店舗ネットワークの活用が必要です。世界中に1万1539の小売店舗を展開。全米でウォルマートは4629店、Sam's Club(会員制スーパーマーケット)は654店あります。

3年前に発表されたフォーブス誌のレポートによると、全米人口の90%近くが、ウォルマートの店舗から車で15分圏内に住んでいるそうです。

ウォルマートの店舗ネットワークの規模を鑑みると、オンライン注文には割引を適応し店舗で受け取ってもらうというサービスに、ジェットのスマートカートモデルを利用することが考えられるでしょう。

オムニチャネル トップ500社」のレポート(インターネットリテイラー社発行)によると、店舗受け取りサービスを利用する消費者は増えており、2015年はネット通販利用者の約40%が店舗受け取りサービスを利用したそうです。オンライン注文商品の店舗での受け取りサービスは、長期にわたって売り上げに貢献しました。その理由は以下の通りです。

配送コストの削減

店舗スタッフにオンラインでの注文商品を店舗の棚から準備させ、消費者に店舗へ取りに来てもらう。このことによって、すぐにコスト削減を実現することができます。ウォルマートの近くに住んでいる人が大多数なので、店舗受け取りサービスのメリットを享受できない消費者をそれほど心配しなくてすむわけです。

ローイ氏も、ウォルマートが店舗受け取りサービスを本格的に実施した場合、大きなコスト削減につながる可能性を示唆しました。

店舗受け取りサービスを活用することによって、配送コストを70%~80%と大幅に削減することができます。EC用の倉庫に商品を運んで、店舗に大量輸送できるようになれば、配送コストは1つの荷物につき1ドルになり、非常に競争力が高くなるのです。

こうローイ氏は語りました。

店舗への送客

小売チェーンがあえて目をつぶっている課題は、店舗の売り上げがオンラインのそれに追いついていないということです。店舗売り上げが落ちて、オンライン売上だけが上がっている場合もあります

インターネットリテイラー社の季刊レポート「オンライン小売業者の財務動向」によると、今期はオンラインの売り上げが小売業者の成長に寄与しましたが、店舗がメインの企業の多くは、店舗売り上げが引き続き不調でした。

レポート内で分析した13の小売チェーンのオンライン売り上げは、第2四半期で2015年対比18%アップ。全体の売り上げが0.9%ダウンしている現状とは大きな違いです。全体の売り上げに占めるオンライン売り上げの割合は、2015年の9.8%から11.7%にまでアップしています。

この記事は今西由加さんが翻訳。世界最大級のEC専門メディア「Internet RETAILER」の記事をネットショップ担当者フォーラムが、天井秀和さん白川久美さん中島郁さんの協力を得て、日本向けに編集したものです。

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