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ウォルマートは、プライムと似た配送サービス「ShippingPass(シッピングパス)」を、サービス開始から18か月後に廃止することを決めました(編集部追記:現在は35ドル以上買い物すると、年間会費無料で2日以内に配送するサービスをスタートしています)。

「Amazon Prime(アマゾンプライム)」のような価値あるサービスを提供することができなかったウォルマートは、廃止の理由を消費者に説明していません。

有料会員獲得に成功したのはアマゾンと会員制の大型ショップのみ

EC業界の専門家によると、今回のサービス廃止は、ウォルマートのECを率いているJet.com幹部の影響が大きいと指摘。ウォルマートは今後、アマゾンへの対抗策を変更していく予定なのだろうと専門家は語ります。

ウォルマートの決断は、ECビジネスは今後も成長スピードが加速していくのか、それとも成長スピードが落ちて、衰えていくのかどちらかだということを示しています。ただ、ウォルマートはECに全力を注ぐというサインを常に出し続けています。

小売業とECの価格分析を手掛けるBoomerang Commerceのグル・ハリハランCEOはこう言います。

2017年2月現在、ウォルマートがECサイトで販売している200万点以上の商品の中から35ドル以上を購入すると、注文から2日以内に配送料金無料で荷物を届けるサービスを展開しています(マーケットプレイスの商品は対象外)。

注文から2日以内に配送料金無料で荷物を届ける新サービスをECサイト上で告知している(画像はウォルマートのECサイトから編集部がキャプチャ)

49ドルの年会費を払うと、購入金額に関係なく2日以内の配送や返品が無料になる「シッピングパス」の宣伝にウォルマートは力を入れていました。2016年6月には、30日間無料体験プロモーションも実施。短期間でしたが、「ショッピングパス」で消費者の気を引こうとしていたわけです。

詳細な数字は明らかにしていませんが、30日間無料体験プロモーションを始めた1週間後、1日の新規会員数登録数は前週比で4倍以上になったそうです。

「シッピングパス」プログラムは年会費49ドル。年会費99ドルで利用できるアマゾンのプライムサービスよりも、50ドルも安くしていました。しかし、「シッピングパス」にはビデオや音楽のストリーミング、写真ストレージなどの付加価値サービスはありません

ウォルマートの「シッピングパス」は、プライムのような配送サービスや買い物の際に役立つ基本的なサービスを提供していました。しかし、ECを超えた価値を提供するプライムとは比べものにならなかったわけです。

ショッピングや配送面でアマゾンプライムと同じサービスを提供しても、プライム会員の開拓を狙う小売業者にとっては魅力的に映らなかったのでしょう(編集部追記:ウォルマートはマーケットプレイスも展開しています。アマゾンプライムの対象商品は4500万点を提供していますが、シッピングパスは200万点。その理由がここにあると考えられます)。

BtoBのECプラットフォームを提供するHandShake社のCMO(最高マーケティング責任者)、マイク・エルムグリーン氏はこう話します。

少なくともある一定の消費者にとって、アマゾンが取り扱う商品群はプライム会員になるだけの魅力があります。ECの分析などを手がけるRobert W. Baird社のコリン・セバスチャン氏によると、プライム対象の商品4500万点に対し、ウォルマートの「シッピングパス」対象は200万点しかありません。

現段階では、アマゾンと会員制の大型ショップ(コストコ、Sam’s Club、BJ’s Wholsalle Club)のみが、有料会員の獲得に成功しています。会員制の大型ショップは会員以外には門戸を開かないやり方で成功し、アマゾンは真の価値ある会員サービスの提供で成功しました。

リサーチ業務を手がけるCIRP社の共同創設者、ジョッシュ・ローウィッツ氏はこう語ります。

ウォルマートがアマゾンに勝てる可能性は?

ウォルマートが33億ドルで買収したオンラインマーケットプレイスのスタートアップJet.comの創業者、マーク・ローレ氏がウォルマートのEC担当になってから5か月後。配送料が無料になる会員プログラム「シッピングパス」の停止を決定しました。

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Jet.comはスタート当初、会員制の大型ショップと同様に50ドルの会員権を販売していました。しかし、より多くの消費者にリーチするため、3か月後には会員制度を廃止。専門家はこう言います。「ウォルマートの『シッピングパス』サービス停止は、Jet.comの多大な影響を受けている」。

Jet.comはサービススタートから数か月後に会員制度を廃止。そして、Jet.comを買収したウォルマートは、買収から数か月後に同じ決断をしているわけです。

CIRP社の共同創設者であるローウィッツ氏はこう話します。Jet.comでは、35ドル以上の注文で配送料が無料になるサービスを展開。ウォルマートも同様の金額で2日間以内の配送サービスの料金を無料にしています。

データを分析すると、「全米EC事業 トップ500社 2016年版」第4位のウォルマートと、第1位のアマゾンは、同じ消費者を奪い合っている状況が浮かんできます。

マーケティング分析のプラットフォーム「Jumpshot」が公表したレポートによると、2016年8月から2017年1月の間、ウォルマートが運営するECサイト利用者の62%がアマゾンでも買い物をしているそうです。

一方、CIRP社のデータでは、アマゾン利用者の94%がウォルマートのECサイト、もしくは店舗で買い物をしているという結果が出ています。CIRP 社はさらにアマゾンの消費者を調査。「アマゾンで買わない商品をどこで購入するか」質問したところ、25%の回答者がウォルマートで購入すると回答。40%がウォルマートのECサイトで買うと答えました。

CIRP社の最新データでは2016年9月現在、アメリカでのアマゾンプライムの会員は6500万人。2日以内の配送に関して送料無料のサービスを提供していたウォルマートの年間49ドルの会員制度廃止の決定は、“価格に敏感なアマゾンの消費者”をウォルマートに引き寄せることになるかもしれないという専門家もいます。

価格モニタリングを手がけるProfiteroの戦略担当キース・アンダーソン氏は次のように指摘します。

ウォルマートは、価格ではアマゾンに勝ります。仮に会員費を払わなくても2日以内の配送料金が無料になるなら、プライムに否定的な家庭やユーザーには魅力的に映るでしょう。また、プライムに付随しているサービスを利用していない、とにかく低価格で送料無料を望む家庭やユーザーも、ウォルマートに移っていくかもしれません。

この記事は今西由加が翻訳。世界最大級のEC専門メディア「Internet RETAILER」の記事をネットショップ担当者フォーラムが、天井秀和さん白川久美さん中島郁さんの協力を得て、日本向けに編集したものです。

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