オーガニック食品などのECサイトを運営するThrive Market社の共同創設者であるグナー・ラブレース氏は、Amazon(アマゾン)のWhole Foods Market Inc.,(ホールフーズ・マーケット)買収のニュースが発表された後、数社から買収の話を持ちかけられたそうです。

アマゾンの買収が引き金、小売事業者によるEC企業の買収策が進むか

アマゾンがホールフーズを137億ドルで買収する発表した後、Thrive Market社の共同創設者兼CEOのグナー・ラブレース氏は一躍有名人になりました。

買収発表後、名だたる小売事業者3~4社が、Thrive Market社を買収したいとラブレース氏に話を持ちかけたのでした。

アマゾンのホールフーズ買収の影響。危機感あらわの小売業者、歓迎するEC企業の理由
Thrive Market社が運営するオーガニック食品などのECサイト

ラブレース氏と共同創設者のニック・グリーン氏は、「全米EC事業トップ500社2017年版」(編注:インターネットリテイラー社が発行する全米EC売上高ランキングなどの雑誌およびデータベース)で244位にランクインしているThrive Market社を売るつもりはないと話します。

インターネットリテイラー社の調査では、Thrive Marketの2016年売上高は、前年比380%増の1億2000万ドルまで成長しています。ラブレース氏は次のように語りました。

この数日間で当社への興味・関心が急上昇しているのは驚きです。大規模な小売事業者から声がかかれば、売却という選択肢もあるでしょう。多くの小売業者は、アマゾンによって存続の危機にさらされるという恐怖を感じています

EC事業者専門の投資家は、アマゾンのホールフーズ買収によって、小売事業者がオンライン食品事業者を買収する動きが増えると予想。Lazard Middle Market社(編著:世界27か国43都に拠点を構えるフィナンシャル・アドバイザリー・サービスを提供する企業)で小売事業部を統括するエリック・ロス氏は次のように話します。

伝統的な実店舗も宅配サービスを行っています。実店舗運営は多くのコストが発生しますし、消費者へのさまざまな対応も必要です。ですから、ますます宅配サービスにシフトする実店舗が増えていくでしょう。ただ実店舗にもイノベーションが必要になります

ロス氏はこのような意見を踏まえ、今後はECに知見のある企業を小売事業者が買収する動きが増えていくと予想されると指摘します。また、投資銀行のTully & Hollandで社長を務めるスチュワート・ローズ氏はこう話します。

Blue Apron(ブルーエプロン、編注:アメリカの食材キット宅配サービス最大手)はIPOをめざし、ブルーエプロンの同業他社は小売業者から提携などを含むさまざまなオファーを受けているようです。ウォルマートや他の食品販売事業者も、オンライン販売や配送・ピックアップサービスを強化していくでしょう。食品事業者のオンライン化が進むのは間違いありません

ただ、Thrive Market社のラブレース氏は、他社に自社を売却するつもりはないようです。しかし、Thrive Market社などのオンライン食品販売事業者が、実店舗との協業に興味がないというわけではありません。

ラブレース氏はこう言います。「買収以外の選択肢もあるでしょう。たとえば、実店舗の中に私たちのお店を作るという可能性もあるかもしれません。私たちのビジネスモデルは、すぐに廃れるようなビジネスではありません」

米国EC業界は「アマゾンは食品ECで試行錯誤状態」と分析

オンラインで料理キットを販売するChef'd社(全米EC事業トップ1000社2017年版で838位にランクイン)の創設者兼CEOであるカイル・ランスフォード氏は、アマゾンによるホールフーズ買収が発表される前から、小売事業者からさまざまな声がかかっていたと言います。

アマゾンの買収ニュースが報道される前から、私たちは料理キットを実店舗でも販売するためにさまざまな人たちと交渉を続けています。ただ、ニュース発表後、新たな買収の申し出はありません。

アマゾンのホールフーズ買収の影響。危機感あらわの小売業者、歓迎するEC企業の理由
米国EC市場でランキング838位にランクインするChef'd社

オーガニック食品の宅配サービスを手がけるDoor to Door Organics社(全米EC事業 トップ500社 2017年版415位)のCEOであるマイク・デムコ氏によると、アマゾンのホールフーズ買収発表後、どこからもアプローチがなかったそうです。

しかし、近い将来、増資をする際にDoor to Door社に興味が集まりそうなのは喜ばしいことだと言います。

アマゾンのホールフーズ買収の影響。危機感あらわの小売業者、歓迎するEC企業の理由
米国EC市場で415位にランクインするDoor to Door Organics社

受注日の当日もしくは翌日までに商品を配送する「Amazon Fresh(アマゾンフレッシュ)」がオンライン食品販売業界の勢いを加速させたように、アマゾンのホールフーズ買収も業界の成長を加速させるとデムコ氏は考えています。

アマゾンとホールフーズが一緒になれば、消費者や投資家がオンライン食品販売に注目し始め、成長が一段と早くなるでしょう。私たちは自社のビジネスを知り尽くしています。アマゾンがオンライン食品販売について理解を深めるまでの間、まだ誰でも勝てるゲームだと考えています。

現在、アマゾンは食品に関してさまざまな購入の選択肢を提供していますが少し複雑です。

たとえば、アマゾンのプライム会員は、日用品や非生鮮食品を「Prime Pantry(プライムパントリー)」経由で購入でき、対象商品を5品以上購入すると送料無料になります。もし対象商品が5品に満たない場合は、配送料として5ドル99セントを支払う仕組みです。

また、特定都市に住むプライム会員は、14ドル99セントを支払うとアマゾンフレッシュ経由で生鮮食品を購入できるようにしています。さらに、アマゾン利用者が消耗品の定期購入に申し込めば、15%の割引が適用されます。

デムコ氏は言います。「アマゾンのこの状況を見ると、食品販売においてはまだまだ試行錯誤している状況がわかります。食品販売は参入が難しい業界なのです。オンライン食品販売は一筋縄ではいきません」。

食品業界を攻めるAmazonに勝つためには

ホールフーズの買収で、全米EC事業 トップ500社 2017年版1位のアマゾンは、高品質の製品・生鮮食品を販売するネットワーク、全米に460の実店舗を持つブランドを手にいれることになります。2016年に全米証券取引委員会に提出された年次レポートでは、ホールフーズの売り上げの67%は生鮮食品という記載があります。

オンライン食品販売業界は、まだまだ初期段階にあると言えます。インターネットリテイラー社の「2016年オンライン食品販売レポート」によると、2015年の全食品販売の売り上げにおけるオンラインの割合はたった2.4%。今後大きな成長の余地があります。

2000人を対象に2月に実施したAdobe社の調査によると、ミレニアル世代では31.7%、36~55歳までは22.1%が、2014年当時よりもオンラインで食品を購入することを選択肢に入れていると答えています。Chef'd社のランスフォード氏はこう話します。

アマゾンのホールフーズ買収に伴い、伝統的な小売事業者はイノベーションを加速させ、オンラインでの存在感を確立していく必要がありますオンライン通販事業者は、より多くの消費者がECで食品を購入すれば、自然とチャンスが広がるわけです。

アマゾンは、ホールフーズの買収を2017年後半には完了する意向です。アマゾンの卓越した物流と資金力、ホールフーズの実店舗での実績が1つになれば、怖いものなしに見えるでしょう。しかし、今まで続けてきたやり方を変えるつもりはないと話す小売事業者もいます。

アマゾンのホールフーズ買収で、多くの消費者が新しい食品購入の方法を試すようになります。料理キットを販売する業界にも良い影響を与えるでしょう」。こう語るのは料理キット販売のHome Chef社(全米EC事業 トップ500社 2017年版291位)最高販売責任者のリッチ・デナルディス氏です。

Chef'd社はアマゾンのマーケットプレイス経由で料理キットを販売していますが、今後もマーケットプライスでの販売を続ける予定です。Chef'd社のランスフォード氏によると、アマゾン経由での売り上げは全体の10%弱だそうです。

アマゾンのホールフーズ買収は、料理キット販売業界を大きく変えるものではありません。ほとんどのオンライン食品販売事業者は、実店舗で売っているモノをそのままオンラインで販売しているだけ。私たちは、コアなお客さまを大切にし、綿密にキュレーションした商品を提供しながら、コミュニティを作り上げています。アマゾンの力を見くびることはできませんが、アマゾンのビジネスモデルを真似ていくことに興味はありません。

アマゾンのホールフーズ買収の影響。危機感あらわの小売業者、歓迎するEC企業の理由
Thrive Market社は、①無料登録で初回購入時15%割引②登録後、30日間は無料のトライアル期間③健康的な食品を年会費59.95ドルで利用でき、低所得者は会員費無料で使えるようにしている

オーガニック食品などのECサイトを運営するThrive Market社のラブレース氏はこう話しました。

ラブレース氏は、オーガニック食品を買う消費者の中には、アマゾンに買収されるホールフーズに嫌気がさし、Thrive Market社を利用し始める人たちもいると考えています。ラブレース氏こう言います。

消費者の反応を見ていると、アマゾンは独占し過ぎてしまい、消費者に提供する価値を考えていないといった声が多くあります。ですから、私たちのブランドがより声を大きくして宣伝できるようになるのです。アマゾンと対比することで、自社をアマゾンの対極に置くというブランディングも可能なのです。

この記事は今西由加さんが翻訳。世界最大級のEC専門メディア「Internet RETAILER」の記事をネットショップ担当者フォーラムが、天井秀和さん白川久美さん中島郁さんの協力を得て、日本向けに編集したものです。

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