Digital Commerce 360 2019/9/19 8:00

7月下旬、米国財務長官スティーヴン・ムニューシン氏はCNBCの取材に対し、「Amazon(アマゾン)は米国中の小売業界を破壊し、競争を制限していることに疑問の余地はない」という、激しい主張を展開しました

この発言は、前日に米司法省が大規模なテック企業に対する反トラスト法の調査を開始したと発表したことに対する、ムニューシン氏の反応でした。小売業者がどのように「市場支配力」を獲得したか、そのビジネスが競争を減らし、イノベーションを阻害し、あるいは消費者に害を与えている可能性があるかが調査される予定です。司法省は調査対象企業を明らかにしていませんが、アマゾンが標的にされていると広く信じられています。

アマゾンが規制当局の注目を集めている理由はいくつかありますが、最も注目すべきはeコマース業界での圧倒的なパワーです。『インターネットリテイラー』の推計によると、2018年にアメリカの消費者がオンライン購入で使った1ドルのうち、アマゾンが占める割合は約37セントでした。アメリカの消費者が商品の購入に使った1ドルのうち、5セント以上を占めることになります(自動車やガソリンなど、通常オンラインで購入されない品目を除く)。

Amazonはオンラインおよびオフラインで急速に市場シェアを獲得し、米国のeコマース販売のほぼ37%を占めている
Amazonはオンラインおよびオフラインで急速に市場シェアを獲得し、米国のeコマース販売のほぼ37%を占めている
米国のeコマース販売におけるAmazonのシェア  米国の小売総売上高に占めるAmazonの割合

オンラインとオフラインで急速に市場シェアを伸ばすアマゾン

eコマースやより広範な小売業界において、アマゾンが力を持っている理由は数多くあります。2019年から注文から1日以内の配送サービスを提供し始めたアマゾンプライムやホールフーズでの割引、ストリーミングサービス、その他多くの特典、消費者から集めた膨大なデータ、膨大なマーケティング予算、数百万のSKUを販売できるマーケットプレイス……などです。

小売業界におけるアマゾンのユニークな市場ポジショニングは、アメリカのeコマース業界の成長を牽引してきました。『インターネットリテイラー』が業界データと米商務省の過去の統計を分析したところによると、2018年にアメリカの消費者がオンライン通販で使用した金額は5136億6800万ドルで、前年の4498億8000万ドルから14.2%増加しました。

『インターネットリテイラー』は、2018年に消費者はアマゾンから1889億1000万ドルの商品を購入したと推定。ECサイトとアプリ(アマゾン自身の商品やマーケットプレイスセラーの販売を含む)の流通額も、2017年から23.0%増加しています。

これは、2018年にアマゾンがアメリカのオンライン小売販売の約36.8%を占め、アメリカにおけるeコマース収益の55.4%を占めたことを意味しています。言い換えれば、アマゾンは2018年に消費者が使った3兆6320億ドルのうち5.2%を占め、小売売上全体の伸びの24.7%を占めたことになります。

アマゾンのマーケットプレイスが拡大

アマゾンで販売する小売事業者やブランドの数が増えていることは、同社の成長に大きな役割を果たしています。2018年にアマゾンで購入された商品の流通額の58%がマーケットプレイスで経由です。これは2018年比で2ポイン増ト、5年前と比べると9ポイント増加しています。

この成長はナイキや家電量販店の「Best Buy」、婦人服の「Chico's FAS」など多くの大手ブランドが、近年アマゾンマーケットプレイスでSKUの少なくとも一部を販売し始めたことと、大量販売しかしない小規模な事業者との卸売関係を断ち切ったことなどが要因です。

この、いわゆる「ベンダーの粛清」によって、小規模な小売業者はアマゾンのマーケットプレイスで消費者に直接販売するようになるでしょう。

こうした努力の結果、『インターネットリテイラー』が発行する『全米EC事業 トップ500社』にランクインした小売事業者の3分の1以上、176社が現在アマゾンで販売しており、2017年の104社から69.2%増加しています。そして、これらの小売業者は、急速に成長している広告ビジネスであるアマゾンアドバタイジングを利用して、商品やブランドを宣伝するためにさらに料金を支払うようになっているのです。

アマゾンマーケットプレイスの割合
米国におけるアマゾンマーケットプレイスの成長

2018年のアマゾンの流通総額に占めるサードパーティーの割合は58%

別の見方をすると、マーケットプレイスにおける2018年の小売事業者の流通総額は推定1600億ドル(『インターネットリテイラー』調べ)で、前年の1306億6000万ドルから22.5%増加しています。また、アメリカにおけるサードパーティーの流通総額は1091億2000万ドルでした。つまり、アマゾンのサードパーティー販売事業者は2018年、アメリカのオンライン小売販売の約21.2%を占めたことになります。

アマゾンはマーケットプレイスの販売ごとに商品カテゴリーに応じて8%から25%の手数料を徴収していますが、ほとんどの商品には15%の手数料が必要です。これは、アマゾンが2018年にマーケットプレイスで約240億ドル、アメリカだけで163億7000万ドルの手数料収入を得たことを示唆します(アマゾンはマーケットプレイスからの手数料収入を報告していません)。

手数料の他に、マーケットプレイスの販売者にAmazon Advertising(アマゾンアドバイタイジング)経由でブランドや商品を販売させたり、在庫管理と発送をアマゾンに委託するフルフィルメント by Amazon(FBA)のような追加サービスを提供することで収益を得ています。

『インターネットリテイラー』の新しい『2019 Amazon Report』は、この巨大企業が小売業界のほぼすべての面でどのように影響力を行使しているかを説明するために、アマゾンが展開する様々なビジネスを調査しています。

この記事は今西由加さんが翻訳。世界最大級のEC専門メディア『Digital Commerce 360』(旧『Internet RETAILER』)の記事をネットショップ担当者フォーラムが、天井秀和さん白川久美さん中島郁さんの協力を得て、日本向けに編集したものです。

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