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デジタル時代の小売業が提供できる真の価値とは? キーワードは「アイデア」「デザイン」「感情」「理由」

商品の真の価値は「IDEC(Idea, Design, Emotion, Cause)」の4要素で要約できる

Digital Commerce 360

2019年9月12日 8:00

商品の価値は「I:Idea(アイデア)」「D:Design(デザイン)」「E:Emotion(感情)」「C:Cause(理由)」 という4つの要素「IDEC」に集約されます。

3DプリンターやVR(バーチャルリアリティ)などの技術が製造や流通の重要性を低下させている中、小売事業者は将来、消費者とどのように関わりを持つのか、検討しなければなりません。

eコマースの力によって小売業の様相が変化していることは誰も否定しないでしょう。この変化のペースがどのように加速しているのか、そしてそれが多くの産業にとって5年から10年という比較的短い期間にどのような意味を持つのか、私たちはまだ完全には把握していないかもしれません。

実際のところ、VR、3Dプリンター、ナノテクノロジー、拡大を続ける通信帯域幅などの技術が、小売業界における次の大きなシフトの基礎を築いています。

産業革命の大きなアイデアであり推進力は、製造業と流通業を産業化することで価値を創造できるということでした。今日、製造によって生み出される価値はますます少なくなっています。ほとんど誰でも何でも作れると同時に、製造コストも下がり続けています

流通は次のドミノ倒しです。VRがあれば旅行の費用や手間をかけずに場所やモノを体験できます。3Dプリンターを使用することで、複雑な製品を自宅で“印刷”でき、購入や配送のために店舗に出向く必要はありません

3D PRINTER

消費者のモチベーションと小売事業者の戦略

要約すると、どんな商品でも、真の価値はメーカーや流通にはありません商品の真の価値は「アイデア」「デザイン」「感情」「理由」という4つの要素で要約できます

価値の第一の源は、製品を生み出した「アイデア」。その中の概念、思考、知的資本です。次が「デザイン」。アイデアはどのように表現されているでしょう。具体的なパーツと寸法はどうなっていますか? 人間は理性よりも「感情」に動かされています。神経科学者や心理学者は多くの場合、消費者は衝動的に商品を購入し、その行為を後で正当化することを知っています。

最後が「理由」。商品が存在する理由です。それは目的に役立ちますか? その商品の背景にある物語は何ですか? その商品、あるいはその商品を作ったブランドが世界で起こそうとしている変化は何ですか?

近い将来、スタートレックに出てくる「レプリケーター」のようなものを通して、マティーニを注文することができるでしょうか? 簡単に言えば、答えはイエスです。

例えば、ジンは完全に炭素、水素、酸素分子でできていて、植物性化合物も含まれています。これらは、すべての有機物に存在し、ご家庭の「レプリケーター」や液体3Dプリンターに簡単に供給できる要素です。それらを正しい組み合わせで配置するだけで完成です! キッチンの液体3Dプリンターからジンマティーニが出て来るのです。

パリのリッツカールトンにあるバーヘミングウェイのマティーニを味わいたいですか? ライセンスを取得したレシピを購入して、液体プリンターで生成するだけです。パリまで旅行する必要はありません。

小売業では“経験”がより優先される

では、成功しているeコマース企業の多くが実店舗に投資しているのはなぜでしょうか。その理由は「経験」です私たちはブランドや製品を買う前に体験するのが好きです。体験することで連帯感と信頼感を持ち、商品の感情的な価値が高まります

我々全員がスタートレックの新たなイノベーション「ホロデッキ」(編注:ヘッドセットなどのデバイスを使わずに、VR世界を体験する装置)や「フルセンサーVRマシン」などを家庭で体験できるようになるまで、製品を体験するための旅を続けていくことになるでしょう。

そのために、グッチ、カルティエ、ティファニーといった高級ブランドは、ブティック型の店舗を建設し続け、大都市で競い合っているのです。

サービス産業もこのような勢力と無縁ではありません。例えば、小売銀行は物理的な商品を持たない消費者に多くの金融サービスを提供しています。これらの取引を完了するために、支店に出向かなければならなかった時期がありました。小売店の立地、つまり流通は、この業界における価値と競争の源泉でした。

しかし、eコマースの進歩によって支店に行く必要性はほとんどなくなりました。多くの取引は電子的に完了できるため、銀行は何年も前から支店を閉鎖しています。

にもかかわらず、消費者とのより強い感情的なつながりを作るために、キャピタル・ワン(編注:米国の金融大手)のようないくつかの銀行は、消費者が銀行のブランドを体験できる、支店とも異なるカフェ併設型の店舗を作っています。

◇◇◇

小売、サービス、旅行、およびサービス業界のビジネスリーダーとして、これらのトレンドにどのように対応していますか? 肝は「IDEC」です。流通や場所、製造の制限が取り除かれた場合、「本当に提供できる価値」について慎重に考えてください

消費者に提供できるアイデア、デザイン、感情、原因は何ですか? また、これらの要素を最大限に活用して競合他社との差別化を図るにはどうすればよいですか? それが将来、小売業界でのあなたのビジネスの成功の基礎になるでしょう。

この記事は今西由加さんが翻訳。世界最大級のEC専門メディア『Digital Commerce 360』(旧『Internet RETAILER』)の記事をネットショップ担当者フォーラムが、天井秀和さん白川久美さん中島郁さんの協力を得て、日本向けに編集したものです。

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