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中国でマーケティングにSNSを活用するブランドが増えています。コンサルティング事業のL2が発表した「ぜいたく品に関する研究データ」によると、2014年にWeChat(編集部追記:中国テンセト社が提供するスマートフォン向けチャットアプリ)の公式アカウントを開設したブランドの内訳は、美容関連が71%、日常品が55%で、ファッションは42%でした。ただ、この2年間でWeChat公式アカウントを開設するブランドは爆発的に増加。最新データでは、9割以上の消費財ブランド、美容関連ブランド、ファッションブランドがWeChatに公式アカウントを開設しています。

WeChatで公式アカウントを開設したブランドカテゴリー
WeChatで公式アカウントを開設したブランドカテゴリー(出典はL2 Insight Report China Wechat、December/2016、画像は編集部が翻訳)

L2のアジア太平洋研究部長であるDanielle Bailey氏は次のようにコメントしています。

SNSを使えば旗艦店に足を運ばなくても、ブランド企業は消費者とコミュニケーションを取ることができます。中国で実店舗を運営していないブランド企業にとって、SNSは必要不可欠な武器になります。

ブランド企業は公式アカウントでマーケティングを試み、各自のマーケティング手法を確率しています。今回、一部のブランドを例に、WeChat公式アカウントの活用方法を説明していきます。

① ブランドストーリーを紹介

製品の宣伝、歴史、創業理念、ブランド情報の紹介などブランド企業が運営する公式アカウントでは、ストーリーを語る例が多いです。ティファニー(アメリカ)、バーバリー(イギリス)、ルルレモン(カナダ)、ヴィクトリアズ・シークレット(アメリカ)、資生堂(日本)など、自社の公式アカウントにブランドストーリーとコラムを掲載しています。

WeChat公式アカウントでのブランドストーリーの掲載例。左からティファニー、資生堂、フレッシュ(画像は編集部がキャプチャー)
WeChat公式アカウントでのブランドストーリーの掲載例。左からティファニー、資生堂、フレッシュ(画像は編集部がキャプチャ)

ティファニーは、「ブランドの誕生」「イエロー ダイヤモンド」(ティファニーを象徴するジュエリーの1つという)「ブルー ブック コレクション」(年に1回発表するハイジュエリーコレクションを集めたもの)「社会的責任」の4カテゴリーに分けて掲載。資生堂はブランドの誕生やイベントなどを過去にさかのぼる形式を用いて短文で紹介しています。また、コスメブランド「フレッシュ」は時系列でブランドストーリーを掲載しています。

H&M(スウェーデン)、ザラ(スペイン)、ユニクロのようなファストファッションブランドは、「ブランドストーリー」に関するコーナーは設けていません。内容は製品の宣伝、お得情報、ファッショントレンドをメインに展開しています。

② 近くの店を検索

ブランド公式アカウントの多くは、「近くのお店を検索」機能を活用しています。機能はどれも似ていますが、運用方法がブランド企業によって異なってきます。

ファッションブランドのヴィクトリアズ・シークレットスワロフスキー(オーストリア)、ラネージュ(韓国)などのブランドでは、GPS機能をONの状態にして「近くのお店を検索」もしくは「現在地」をクリックすると、ユーザーの周辺にある店舗が表示されるようにしています。

もう1つの方法は、カルティエ(フランス)、ルイ・ヴィトン(フランス)、ティファニーのように、特定店舗の周辺にいるユーザーへメッセージを配信することです。ルルレモンキールズ(アメリカ)などのように、すべての店舗の情報をメッセージとして配信することケースもあります。

WeChat公式アカウント「近くのお店を検索」機能。左からラネージュ、カルティエ、ルルレモン
WeChat公式アカウント「近くのお店を検索」機能。左からラネージュ、カルティエ、ルルレモン(画像は編集部がキャプチャ)

③ WeChat店舗を開設

WeChatに購入機能を搭載するブランド企業も増えています。FOREVER 21(アメリカ)やフレッシュ(アメリカ)、H&Mキールズ(アメリカ)は、会員登録後にログインしてから商品を購入できるようにしています。一方、粉ミルクのA2(オーストラリア)、プーマ(ドイツ)、パンドラ(デンマーク)、シャネル(フランス)の場合、ユーザーは会員登録やログインをせずに購入できるようにしています。

決済手段はWeChat Paymentや銀聯オンライン決済の他、アリペイ決済を利用できるようにしているブランドも存在します。ただ、(編集部追記:テンセントとアリババは競合企業のため、WeChatとアリペイは連動できない)ユーザーはアリペイ決済のURLをブラウザに貼り付け、自身のアリペイ・アカウントにログインしてから購入代金を支払うようにしています。

ただ、多くのケースでは、WeChat公式アカウントでの商品購入よりも、ブランド各自のアプリもしくはECモールのアプリを開いて購入した方が早いのです。

プーマのWeChat公式アカウントでのアリペイ支払手順
プーマのWeChat公式アカウント WeChat店舗でのアリペイ支払手順(画像は編集部がキャプチャ)

④ 自社アプリへ誘導

WeChat公式アカウントではありますが、自社のサービスではありません。そのため、自社アプリなどにユーザーを誘導する仕掛けを置くブランドも少なくありません。たとえば、トップショップ(イギリス)、ナイキ(アメリカ)、ティファニーザラなどです。

イギリスのファッション小売のトップショップは、2014年から公式アカウントを開設。ブランドストーリー、WeChat店舗、お得情報といった内容が充実しています。ただ、誘導は自社アプリへではなく、2016年年末に独占戦略パートナー提携をした尚品網(shangpin.com)のアプリに誘導しています。

⑤ コミュニケーションおよび個人サービス

ブランド企業とユーザーのコミュニケーションは少し前まで、オンラインカスタマーサービス、アンケートといった方法に限られていました。しかし、ユーザーは退屈な文字メッセージだけのコミュニケーションに飽きてきており、ブランド企業はHTML5を活用した動画配信、ゲームなどを使い、ユーザーとのコミュニケーション方法を多用化しています。

その他にも、オフライン店舗でのカウンターサービス、コミュニティ関連イベントを実施したり、公益目的のイベントを行ったりしています。

たとえば、バーバリーはWeChatでファッションショーを生放送したことがあります。2016年に配信した「メンズ AUTUMN & WINTER ファッションショー」では、クリス・ウー氏(カナダ籍の中国人俳優・歌手)の22秒間にわたる感想ボイスメッセージを配信しました。

また、メイベリン(アメリカ)は2016年のクリスマスに、陳偉霆氏(香港俳優・歌手)のHTML5を活用した動画を配信しました。

そのほか、H&M無印良品コカ・コーラは公式アカウントでスタッフを募集したこともあります。

ブランド企業が行える公式アカウントでのマーケティング手法は実はさまざまなのです。ブランドのPRのほか、店舗開設、オフラインとの連携、アプリへの誘導など多種多様。こうした魅力があるため、WeChatで公式アカウントを開設し、運営するブランドは増えています。さらに、コーチ(アメリカ)は2016年に「天猫」(Tmall)の店舗を閉鎖し、WeChatにサイトを構えています。

モバイルデータサプライヤーのQuestMobileが発表した「2016年度 アプリ価値ランキング」によると、アプリの利用ランキングとカスタマー・ロイヤルティランキングで、WeChatは両方とも1位を獲得しました。

8億人以上もの月間利用ユーザーを抱えるこのアプリには、病院やバス、配車の予約といったショッピング機能も備えています。この優位性を各ブランド企業はすでに理解しています。

WeChatの公式アカウントにはこのような優れてい点はありますが、欠点もあります。ユーザーが公式アカウントからの情報配信を許可しなければ、情報はユーザーに届きません。情報受取ツールに近いため、有効なサービス提供媒体にはなりにくいでしょう。

一方、WeChatがこのほど発表した「WeChatミニプログラム」(編集部追記:「WeChat Mini Programs」。アプリをインストールしなくても利用できる機能)は、上述した欠点を解決できるようです。このミニプログラムは、ユーザーがオフラインでも企業からの情報を受け取ることができるアプリです。アプリの使用率が低いブランド企業にとって、ミニプログラムはECへ誘導できる入り口になります。

「WeChatの父」と呼ばれるテンセントのヴァイスプレジデントである張小龍氏は次のようにコメントしました。

少なくとも最初は、「WeChatミニプログラム」を公式アカウントの初期段階と同様に、QRコードと同じような形式でさまざまな場面で露出できるようにします。

この施策は、小売ブランド企業にとって良い刺激になるでしょう。現段階では、「WeChatミニプログラム」の使用リストにはブランド企業の名前はまだ出ていませんが、ブランドに良いチャンスをもたらしてくれるかもしれません。

 

  • この記事は『ebrun』より本誌が記事提供を受け、日本用に翻訳、編集したものです。
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