Amazon(アマゾン)は小売業界で圧倒的な優位性を築きつつありますが、競合他社はデジタル時代に適した戦略を採用することで、アマゾンの独占化を防ぐことができます。

アマゾンが小売業界を制する3つの課題

アマゾンは過去20年、小売業界に身を置く企業の顧客や体力を少しずつ奪っていきました。最後の一撃はすぐそこにまで迫っています。

アマゾンの戦略上で大きな課題は、買い物客の約90%はいまだにオフラインで商品を購入するという事実でした。消費者はオンライン単体での買い物よりも、オムニチャネルによる買い物体験を希望していることが各種調査で明らかになっています。

たとえば、経営コンサルティングファームであるA.T. Kearney社の調査によると、オンラインのみの買い物を好むと答えた消費者は、たった5%でした。

競合他社が弱体化し、もがいている中で、アマゾンは実店舗をオープン、家電や家具の販売も検討しています。アマゾンが小売業界で勝利を獲得するのは、もう視野に入ってきているのです。

アマゾンがさらに小売業界でのシェアを拡大していくと、競合他社が敗北者になる可能性があります。

アマゾンはすでにオンライン小売業全体の売り上げの43%を占めています。その数字が80%になったらどうなるでしょう? アマゾンは小売業界のグーグルになるではないでしょうか。競合他社はこの流れを止めることはできますが、もうあまり時間がありません。

アマゾンが小売業界を制する日がやって来る……小売り企業が対抗する方法は?① 市場シェアを伸ばし続けるアマゾン
市場シェアを伸ばし続けるアマゾン(編集部が過去記事をもとに追記)
米国のEC流通額に対する、アマゾンのECサイトで販売されたオンライン流通額の比率
黒:その他 オレンジ:アマゾン
出典:インターネットリテイラー、ChannelAdvisor、Slice Intelligence、アメリカ商務省
※市場シェアにはアマゾンが自社で販売した製品および、同社のマーケットプレイスで販売された製品が含まれる

アマゾンが小売業界を制する条件は次の3つの課題をクリアしたときでしょう。

アマゾンがオムニチャネルで圧勝

オンラインで購入した商品を店舗で受け取れるのはとても魅力的ですが、残念ながら多くの小売業者が提供できていないサービスです。消費者1000人を対象にした調査(2015年に実施)では、35%がオンラインで購入し店舗での受け取りを希望するものの、半数の人が受け取りで問題があったと回答しました。

これは、物流の問題だけではなく小売業者の本気度に関わる問題です。最近の調査では、68%の小売業者が、配送、返品、店舗受け取りのコストが上がっていると不満の声をあげています。

その対策として、店舗内のデッドスペースを活用し、店舗から素早く配送できるように改善している小売業者も出てきています。しかしながら、オンラインとオフラインのカスタマーエクスペリエンスの統合は、いまだに弱いままです。

アマゾンがシアトルに構えた本屋と比較してみましょう。実店舗で販売している本には値段が書いてありません。しかし、アマゾンのアプリでスキャンすると簡単に値段がわかります。プライム会員には割引サービスもあるのです。

アマゾンが即日配送でも圧勝

実店舗のメリットは利便性です。すぐにお店に行って商品を受け取れるので、数日間も待つ必要がありません。

では、それよりも便利なものはなんでしょう? それは即日配送ではないでしょうか。アマゾンは、この記事を書いている時点(2017年4月)で、全米500以上の都市で即日配送サービスを展開しています。

実店舗を持つ小売業者も追いつこうと努力していますが、Wal-Mart(ウォルマート)は2016年にやっと注文から2日間以内に商品を届ける配送サービスを始めたばかりです。

アマゾンが最高の人材を確保

優秀なプログラマーは、KOHL'S(コールズ、編集部追記:手頃な価格の商品を販売する米国の百貨店)よりもアマゾンで働くことを選ぶでしょう。お金の問題ではなく、名声の問題なのです。

アマゾンは厳しい職場です。しかし、アマゾンで働けるということ自体が1つのステータスになります。アマゾンで数年も働けば、自身の市場価値は急上昇します。どんなにお金を積んだとしても、ウォルマートは太刀打ちできません。

その対抗策の一例として、ウォルマートは33億ドルを投じて、アマゾン出身のマーク・ロアー氏が立ち上げた会社「Jet.com」を買収しています。

実はアマゾンも安泰ではない

消費者の評判も大変重要です。アマゾンは素晴らしいカスタマーエクスペリエンスを提供しています。それがなければ、これほど多くの消費者がアマゾンを使い続けることも、プライム会員を更新することはないでしょう。

アマゾンに対する消費者の好感度が高いため、食品やローカルビジネス、ドローン配送などを始めた場合でも、消費者は良いサービスを提供してくれると期待します。

統計を見ると、店舗での商品受け取りができない小売業者に対する消費者の期待値は低いようです。

しかし、アマゾンも安泰ではありません。アマゾンは過大評価され過ぎており、現在の時価総額の92%は2020年以降に創出される予定の利益に基づいて評価されています。

コンテンツマーケティングやソーシャルメディアでの展開もまだまだです。今はほぼ利益がない状態で、それほど急速な成長を遂げているわけでもないのです。投資家が悲観的になれば、アマゾンは沈み始めることでしょう。

アマゾンの独占を防ぐ方法は店舗での体験提供にあり

Trader Joe's(トレーダージョーズ、米国の食料品スーパーマーケット)は新しい食品体験を提供することで、熱狂的なファンを生み出しました。

アマゾンの独占を防ぐにはどうしたら良いでしょうか? まずは、消費者ニーズをくみ取ったオムニチャネルサービスを展開することから始めてみましょう

1000人を対象にした消費者調査(2015年実施)では、35%がオンラインで購入し店舗受け取りを希望するものの、半分の人が受け取りで問題があったと回答しています。これではアマゾンと戦えません。

また、体験の場として実店舗を提供してみましょう。街の広場が少なくなっているのに対し、便利なツールの発達によって消費者の自由な時間が増加しています。そう、消費者は時間を過ごす場所を探しているのです。

トレンドに敏感な小売業者は、インドアのロッククライミングやVR体験などを店舗で提供しています。遊園地のような経験を提供する必要があるとは限りません。トレーダージョーズは、新しい食品体験を提供することで、熱狂的なファンを生み出しました。マンダリンオレンジチキンや、ファイブシードアーモンドバーなど、消費者は他では買えない商品を買うために、トレーダージョーズを訪れるのです。

最後に、小売業者は外部の技術スタッフを活用して、ビジネスを再構築する必要があります。自社内でイノベーションラボのような組織を作るよりも、外部企業と提携してイノベーションを起こすことが得策でしょう。

たとえば、Whole Foods Market(ホールフーズ、米国の人気スーパー)は、Instacart(編集部追記:食料品の買い物を支援するアプリを提供する企業。買い物をする人とスーパーマーケット、配達者をネット上でマッチングし、商品を最短2時間で届ける仕組みを提供する)と提携し、買い物サービスを提供しています。

もしくは、スタートアップを買収するという方法もあるでしょう。お金はかかりますが、今のビジネス環境を考えると、必要な投資と言えます。

アマゾンが小売業界を制する日がやって来る……小売り企業が対抗する方法は?② Whole Foods MarketはInstacartという、“買い物代行サービス”に近しいシェアリングエコノミーサービスを提供している
Instacartは“買い物代行サービス”に近しいシェアリングエコノミーサービス。Instacartを通じてピックアップされた商品は、「Shopper」と呼ばれるクラウドソーシング利用者が配達する

この記事は今西由加さんが翻訳。世界最大級のEC専門メディア「Internet RETAILER」の記事をネットショップ担当者フォーラムが、天井秀和さん白川久美さん中島郁さんの協力を得て、日本向けに編集したものです。

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