2013年に誕生した「BULK HOMME(バルクオム)」は、20代~30代の男性を中心に支持されているメンズスキンケアブランドだ。急速に売上を伸ばすきっかけとなったのは「UGC(User Generated Contents)※1」を活用した新しい広告手法だ。Instagram広告のクリエイティブにUGCを活用することで、Instagram広告経由の獲得件数が1年で10倍に成長したという。

今年9月、「顧客獲得のためのInstagram広告活用」と題したセミナーが都内で開催され、バルクオムのEコマース部部長である高橋文人氏、フェイスブック ジャパンのフェイスブック パートナー マネージャーの濱田雅章氏が講演した。顧客獲得という観点から、Instagram広告の可能性や成功の秘けつについて語った。

※1「UGC」……企業ではなく一般ユーザーによって制作・生成されたコンテンツのこと。InstagramなどSNSに投稿された写真や動画などが UGCとして注目されている。

1年で顧客獲得件数は10倍、CPAは3分の1に

バルクオムでは従来、リスティングやアフィリエイト施策による獲得が中心だったが、多くのユーザーがアクティブに利用しているInstagramで広告を展開することで、より幅広い層に男性向けスキンケアや自社の存在を知ってもらうことができると考え、Instagram広告を開始した。

変化の速いSNS広告を展開する際に重要なのは、クリエイティブのパターンを複数用意し、それらをスピーディーに差し替え、きちんと成果を測っていくことだ。そのためにはしっかりした制作体制と、ツールを活用した定量的な観測環境が必要。また、SNSならではの特性を理解し、効果を発揮するクリエイティブが不可欠と考えた。

そこでバルクオムは、ソーシャルメディアマーケティングにおいて13年の実績があり、SNS広告専門の部署を持つアライドアーキテクツをパートナーに選定した。理由はSNS専業の実績、クリエイティブの制作とPDCAを回せる体制が整っていること、「Letro※2」というUGCマーケティングツールの強みだった。

※2「Letro」……アライドアーキテクツが提供するUGCマーケティングプラットフォーム。Instagram上のUGCをハッシュタグにより収集・編集し、LPや広告、SNS投稿などの各マーケティングチャネルで活用を可能とする。効果の計測も可能。Instagram公式マーケティングパートナーとして認定されている。

バルクオム Eコマース部部長 高橋文人氏
バルクオム Eコマース部部長 高橋文人氏

本格的にInstagram広告を開始して1年、Instagram広告経由での顧客獲得件数は運用前の約10倍に跳ね上がり、CPA(顧客獲得単価)は約3分の1に削減したという。

ここまで大きく成功した理由は、クリエイティブの勝ちパターンを見つけられたことだ。まずは1週間〜2週間に1回の頻度でクリエイティブを差し替え、顧客からの獲得件数が高い「勝ちクリエイティブ」を探すことに注力した。PDCAを回していく中で勝ちパターンを見つけ、その勝ちパターンをさらに横展開する、という繰り返しが大きな成果につながった。

クリエイティブのポイントは「自分ごと化」

Instagram広告を始めた当初は「ブランド寄り」の素材を使って配信していたという。バルクオムのプロダクトの洗練性を訴求する「かっこいいクリエイティブ」だ。しかしその成果は思わしくなく、顧客の求めている情報ではないとわかった。

そこでバルクオムが取り組んだのがUGCの広告活用だ。顧客がInstagramに「#バルクオム」のハッシュタグを付与して投稿した画像を(顧客からの許諾を得た上で)そのまま広告に活用することで、顧客にとって「自分ごと化」される広告になるのではと考えた。

下の図はバルクオムが実際にInstagram広告で出稿したクリエイティブだ。ブランド寄りの訴求をしたクリエイティブ(左)に比べ、UGCを活用した右側のクリエイティブのCTRは165%、CVRは407%改善し、またCPAは約3分の1に削減した

改善する前のクリエイティブ(左)と、改善後のクリエイティブ(右)
改善する前のクリエイティブ(左)と、改善後のクリエイティブ(右)

プロが作った洗練されたクリエイティブよりも、顧客がただ手に持って撮影したUGCの方が圧倒的に広告効果が高かったというのは驚くべき事実だ。

ブランドのかっこいいイメージを推したクリエイティブでは、リアル感が伝わらず、顧客にとって「この商品かっこいいな」で終わってしまっていたのではないか。「実際に手に取ってこれから使いますよ」というクリエイティブにすることで、顧客の自分ごと化を促進でき、その結果、CTRやCVRの改善につながったと考えている。(バルクオム 高橋文人氏)

UGCが作り出す意外な効果

アライドアーキテクツで企業のSNS広告施策を支援する菅谷健太氏は、SNS広告を実施する上で重要なのは「フィードに馴染むクリエイティブ」であると説明する。SNSはあくまでユーザー同士が好きなものとつながり、欲しい情報を集める場所であり、決して企業の広告を見に行く場所ではない。「パーソナルスペースに企業がおじゃましているという感覚を持つべき」という主張だ。

企業メッセージがメインの広告色が強い「従来型のクリエイティブ」をSNSに投稿することは、下記のような悪循環を生む可能性があると強調する。

誤ったコミュニケーション。タイムラインを汚す→ユーザーが敬遠し藩王率が下がる→媒体のアルゴリブ無により掲載単価が下がる→配信効率が悪化し、出稿が減少する→出稿量を担保するために入札を強化
SNS広告でよくある失敗例。ユーザーに好まれないクリエイティブを出稿することで、負のサイクルが始まる

バルクオムが活用したUGCは、もともとがユーザーによって投稿された画像のため、フィードに馴染むクリエイティブと言える。また、UGCにはデザイナーだと思いもつかないような画像が存在しており、それが思わぬ好反応となることも多い

また、すでに存在する投稿を活用するため、デザイナーが画像を制作する時間を削減できるため、UGCを広告に活用することでPDCAを回すスピードを上げることもできる。菅谷氏は「SNS広告の成功において、UGCの広告活用は1つのポイントとなる」と語る。

「勝ちクリエイティブ」の横展開でさらに効果をUP

反応の良いクリエイティブに変化を加えることで、さらなる効果も見込める。勝ちクリエイティブにハッシュタグ風のテキストを加えることで、CTRは110%、CVRは125%改善、CPAは約2分の1に削減した

勝ちクリエイティブ+ハッシュタグ風のテキストの例

その他の勝ちクリエイティブとして以下のような例もある。季節感のあるUGC画像+画像内テキストの組み合わせだ。

季節感のあるクリエイティブ+画像内テキストの例

InstagramはビジュアルのSNSであり、画像の下のテキスト投稿は読まれにくい傾向がある。そのためもっとも重要なのは画像だが、UGCの画像だけでは商品の説明として足りない場合もある。そこで商品説明を補足するテキストを追加することで、フィードに馴染ませながらも、商品訴求をきちんと行える。

UGCをそのまま活用するだけでなく、テキストなどの加工をして活用することで、Instagramらしさと広告としての効果の間を狙うことができる。(菅谷氏)

SNSの広告とLPの世界観を統一する

バルクオムではSNS広告から誘導するLP(ランディングページ)も一新した。従来のLPは、冒頭に大きく商品のキャッチコピーを置き、お悩みに関する詳細な解説を記載、ページ下部に著名人によるクチコミを掲載したものだった。

新しいLPではフィードに馴染むクリエイティブからの誘導後として違和感のないデザインを心がけた。冒頭のキャッチコピー表示をやめ、使用シーンのクリエイティブを見せた。お悩みの説明も重要なものに絞り、わかりやすく簡潔に説明するよう心がけた。また上部には顧客の生の声としてInstagramのUGCを表示した。これによりCVRを大きく向上させることができたという。

バルクオムのLP

従来のLPでは「商品を買ってほしい」というメッセージが強すぎて、効果はあまり良くなかった。広告のクリエイティブの勝ちパターンを作るだけでなく、Instagramのビジュアルを見て直感的に「良いな」と思った人が来る場所を整えることも大事だとわかった。(バルクオム 高橋文人氏)

拡大するInstagramのビジネス活用。ストーリーズ広告のポイントは?

今回のイベントでは、フェイスブック ジャパンでフェイスブック パートナー マネージャーを務める濱田雅章氏が、最新のInstagram活用事例や手法について解説した。

女性ユーザーが多い印象のInstagramだが、現在は女性6割、男性4割となっているという。また全体の8割のユーザーが企業のアカウントをフォローし、7割のユーザーが「Instagramを見て何らかの行動を起こしたことがある」と話し、Instagramがビジネスに高い効果をもたらす可能性を示唆した。

フェイスブック ジャパン フェイスブック パートナー マネージャー 濱田雅章氏
フェイスブック ジャパン フェイスブック パートナー マネージャー 濱田雅章氏

こうした状況を受けて、Instagramでは企業のビジネス活用を支援するさまざまな機能を追加している。中でも、24時間で消える写真や動画が投稿できる「ストーリーズ」機能は、Instagramでビジネスプロフィールを利用するアカウントの半数が利用しており、もっとも視聴されているストーリーズ投稿の3分の1はビジネス(企業あるいはブランド)による投稿となっている。

「ストーリーズ広告」の活用も広がってきているが、フォローしている一般ユーザーのカジュアルな投稿の間に流れることをふまえ、広告っぽさを感じさせないことが大切だと濱田氏は語る。例えばユーザー自身が商品を利用しながら撮影している自撮り風の動画コンテンツも有効。バルクオムのようなUGCを活用した広告戦略と相性が良い機能と言えそうだ。

また、ユーザーをリンク先へと誘導するスワイプアップを促すために、先の画面が「チラ見え」するような表現を動画に取り入れるなど、楽しく遊ぶ工夫が大切だと語った。


今回のまとめ
  • UGC(User Generated Contents)を利用し、SNSで違和感のない訴求を行う
  • A/Bテストを繰り返し、自社の「勝ちクリエイティブ」を見つける
  • 勝ちクリエイティブが見つかったら、横展開でさらなるCVアップをねらう
  • LP(ランディングページ)のデザインにも気を配る
◇◇◇

バルクオムの新規顧客獲得を目的とした広告施策ではInstagramが主力媒体になっており、「今後はさらに動画広告の活用やショッピング機能との連動などにもチャレンジしていきたい」(バルクオム 高橋氏)としている。女性のみならず男性ユーザーも拡大している今、Instagram広告はあらゆる企業にとって顧客獲得の重要なツールになりつつある。

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小川 裕子

(おがわ ゆうこ)

一橋大学社会学部卒業後、住友商事に勤務。その後ECベンチャー企業などを経て2011年にアライドアーキテクツ入社。企業担当コンサルタント、オウンドメディア「SMMLab」の編集担当などを経て2016年に事業企画室(現:グローバル事業部)室長に就任し、中国に向けた越境プロモーション事業を立ち上げ。2018年3月より休職し米ロサンゼルスに居住。国内外のマーケティング事例やイベントレポートなどのライティングを行う。著作『現場のプロがやさしく書いたFacebookマーケティングの教科書』(マイナビ刊/SMMLab名義)。

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