「効率化・利便性が高まり、通販のあり方が大きく変化・進化する」。JADMA梶原会長らが語る2024年総括と2025年展望

公益社団法人日本通信販売協会(JADMA)が1月10日に開催した新年賀詞交歓会で行われた梶原健司会長らのあいさつを要約して紹介

藤田遥

1月23日 8:30

公益社団法人日本通信販売協会(JADMA)が1月10日に開いた新年賀詞交歓会には会員企業の経営者など約460人が参加、JADMAの梶原健司会長、消費者庁政策立案統括審議官らのあいさつを要約して紹介する。

【JADMA会長】効率化、利便性が高まり、通販のあり方が大きく変化・進化する

JADMA会長 梶原健司氏
JADMA会長 梶原健司氏

2025年は米国トランプ大統領政権による政策発動、中国経済の減速感、中東情勢など地政学リスクの高まりなどの影響が大きいと考えられる。また、国内政治の政局、夏の参議院選挙、日銀の利上げ、資源価格の高騰、4月の春闘での賃上げ、慢性的な人手不足など、目まぐるしい変化が訪れ、先の見えない状況が予測される。それに伴い、小売りや通販業界を取り巻く環境、消費者の意識も大きく左右されるだろう。

2024年は3月に「紅麹」問題による健康被害報道で、機能性表示食品業界に大きな影響があった。9月は健康被害状況および情報提供の義務化、GMP(適正製造規範)の要件化、パッケージ表示方法の見直しなどが新たに盛り込まれた。

通販市場は2024年で13兆5600億円の売上規模に。2023年ほどの伸び率ではないが、25年連続で伸長しており、通販が消費者の生活に欠かせない、大きな役割を担っていると考えている。一方で残念なことに悪徳業者も増加しており、消費者が騙されないような啓蒙活動が重要だと考えている。

通販業界は堅調に伸長しているなか、「ChatGPT」などをはじめとした生成AIの登場やIT技術の進化により、デジタルシフトが加速度的に進むだろう。あらゆる面で効率化、利便性が高まり、通販のあり方が大きく変化・進化していくことが予測される。

【消費者庁】消費者利益の保護、取引の適正化を進めていくことが大事

消費者庁 政策立案統括審議官 藤本武士氏
消費者庁 政策立案統括審議官 藤本武士氏

通販市場規模は大きく拡大し、通信販売は消費者の日常を支える社会インフラになったと言っても過言ではない。一方、デジタル技術の加速的な進展の影の部分として、悪質な者による消費者被害が軽減されておらず、憂慮すべき状況が続いている。通信販売業のさらなる進行において、消費者利益の保護と取引の適正化両方を進めていくことが大事だと思っている。

政策を3点紹介したい。1点目は景品表示法。2023年度に「No.1表示」に関する措置命令が相次いだことを受け、2024年9月に「No.1表示」に関する実態調査報告書を公表した。報告書では景品表示法上留意すべき考え方を示しているので、「No.1表示」は報告書に沿った形で対応してほしい。

2点目が機能性表示食品について。機能性表示食品が「紅麹」関連の事案を受け、制度の信頼性向上に向けて対応を進めている。2025年4月以降の新規届出については、「PRISMA声明2020」に準拠することを求めている。既に提出された届出についても、準拠により科学的根拠の再検証を行うよう見直しを進めてほしい。

3点目は取引対策について。公正で信頼ある消費者取引の実現のため、特定商取引法や取引デジタルプラットフォーム消費者保護法に基づき、厳正かつ適切に執行していく。デジタル技術は加速的に変化し、消費者の意思形成に与える影響も千差万別だ。このため、法による執行に加えて多角的な対応が重要になる。

たとえば、通信販売における最終確認画面については、特定商取引法のガイドラインに位置付けを明記した。消費者に対して「これが最終画面である」と顕著に示すなど、消費者思考を強めた健全な事業者には、社会的な評価をしっかり得てもらうことが大事だと考えている。

【農林水産省】官民連携の取り組みを推進

農林水産省 大臣官房 新事業・食品産業部食品製造課長 野添剛司氏(代読)
農林水産省 大臣官房 新事業・食品産業部食品製造課長 野添剛司氏(代読)

JADMAではサプリメント部会を設置し、健康食品の広告表示問題、法規制への対応を進めていると認識している。健康や栄養に対する消費者意識が高まっており、国民が健康的な生活を送れるように支えていくためにも、機能性表示食品を含め、健康や栄養に資する食品産業界が健全に発展していくことは非常に重要となる。健康食品に係る官民連携の取り組みに協力していく

2027年3月~7月に神奈川県横浜市で開かれる「2027年国際園芸博覧会」には、国内外含めて約1000万人以上が来場する見込み。日本が誇る食と農について発信する絶好の機会と捉えているため、博覧会への協力を検討してもらえたら幸いだ。

【経済産業省】賃上げ、設備投資、価格転嫁、セキュリティ強化への積極的な取り組みを

経済産業省 商務・サービスグループ 消費・流通政策課長 平林孝之氏
経済産業省 商務・サービスグループ 消費・流通政策課長 平林孝之氏

2024年は30年ぶりとなる高水準の賃上げ、設備投資、史上最高水準の株価、GDPの600兆円超えといった国内経済の明るい兆しを耳にする年だった。一方で、消費は力強さを欠いている。賃上げも地域や業態によって差が生じており、地域の中堅・中小企業を含めて継続的な賃上げを実現し、好循環を定着させることができるかどうか、正念場だと考えている。

2024年に策定した総合経済対策や補正予算を総動員し、前向きな流れをしっかりと継続拡大させていく。通信販売業界においても、賃上げ、設備投資、価格転嫁などの面で積極的な取り組みをぜひともお願いしたい

業界の持続的な発展のため、消費者保護の取り組みは非常に重要だ。JADMA会員の方々には、ECサイトでのクレジットカードのセキュリティ対策強化に向け、クレジット取引セキュリティ対策協議会、クレジットカードセキュリティ官民対策会議での議論に尽力いただき、本人認証などの不正利用対策に積極的に取り組んでいただいている。サイバー攻撃は年々巧妙化しているため、より一層セキュリティ対策に取り組む必要があるため、今後も協力を賜りたい。

物流の深刻な人手不足に対処するため、2025年4月から改正物流効率化法の施行に向けて準備を進めている。JADMA会員の方々には、再配達の削減などに積極的に取り組んでいただいているが、政府の支援策も活用しながら引き続き物流の効率化に協力してもらいたい。

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