瀧川 正実 2018/6/26 9:00

一般社団法人イーコマース事業協会(EBS)が会員に対して行った大阪府北部地震の被害状況についての緊急アンケートによると、「交通マヒによるスタッフ確保」に苦慮した企業が回答企業の半数にのぼった。

緊急アンケートに協力した事業所は40社(大阪府25社、京都府4社、兵庫県7社、奈良県2社、滋賀県1社、和歌山県1社)。

被害状況は50%の事業所が「交通マヒによるスタッフ確保」と回答。「運送会社の遅延・停止」に遇った事業所数は13社だった一方、「影響なし」も同数だった。

大阪府北部地震の被害状況(一般社団法人イーコマース事業協調査)

被害状況について

被害内容では、「楽天スーパーSALE期間中の休日明けで注文と問合せが殺到する中、電車通勤の受注系業務スタッフが出勤できず、対応が後手に回った」などスタッフ不在による対応に関するコメントが目立ったという。

地震当日の運営について(一般社団法人イーコマース事業協会の調査)

地震当日の運営について

サイト内での被害状況告知について(一般社団法人イーコマース事業協会の調査)

ECサイト内での被害状況告知について

顧客対応について(一般社団法人イーコマース事業協会の調査)

顧客対応について

こうしたアンケート結果や被害状況を踏まえ、事業所を大阪府内に構える一般社団法人イーコマース事業協会の吉村正裕理事長は、天災時の対応ポイントについて次の5つをあげている。

一般社団法人イーコマース事業協会の吉村正裕理事長
吉村正裕理事長
  1. 都市部の通勤時間帯に発生したため、都市機能の脆弱(ぜいじゃく)性が再認識された。電話は不通になるケースがあったものの、SNSでスタッフの安否確認や連絡を実施した人が多く、普段から連絡手段や連絡内容などを決めておく必要性を感じた。
     
  2. 阪神淡路大震災の時は巨大地震にも関わらず出勤しようとする人が続出、被害者を増やしたという教訓があった。今回はその教訓が生かされ、自宅待機などの措置をとる事業者が多かった。阪神淡路や東日本大震災の教訓から人命や家族第一という道義的責任を中小零細企業も認識したと言えるのではないか。
     
  3. ビジネス面に目をむけると、ECは商圏が全国であり、顧客対応をいかにするかが大命題である事は否めない。大企業のようにバックアップ体制や代替機能となる複数の拠点を保有しない中小零細のEC事業者は、当日の運営に多くの支障をきたした。

    今回は大阪北部に被害が集中したが、大阪の他の地域にも全国から問い合わせが寄せられた。ECサイトでの告知(地震の影響の有無、受注処理や発送の状況)などが必須となるが、今回の地震におけるその対応は迅速であったと言える。
     
  4. 今後の課題としては、勤務時間中に天災が発生した場合の対策を考えるべきであろう。職場の安全対策や避難物資の備蓄、スタッフの帰宅困難時の対応、スタッフと家族の安否確認の連絡手段を事前決定する――などである。被害状況や 職場及びスタッフの自宅の震度にあわせて休業や自宅待機をする判断基準を決めておくとともに、受注処理や発送処理の人員確保や流通状況に応じて、ECサイトでどんなメッセージを記載すべきかを決めておく必要がある。
     
  5. 天災はいつ発生するかわからない。備えておき、いざという時の被害や混乱を最小限にとどめる事こそ危機管理の要諦である。

イーコマース事業協会会員の事務所の被害

 

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