Digital Commerce 360 2022/3/24 7:00

オンライン購入後の総合的な顧客体験向上を実現するプラットフォームベンダーのNarvarが提供する新サービス「Home Pickup」を利用すると、オンラインで購入した商品の返品を有料で、自宅で集荷してもらうことができるようになります。

米国で支持を集める「返品サービス」

Narvarは2021年のホリデーシーズン中に行った試験運用を経て、消費者が配送業者を予約し、返品を希望する商品を自宅まで取りに来てもらうサービスを拡大しています。

Narvarはプレス発表で、2021年11月のサービス開始以来、女性向けアパレルブランドのAnn Taylor、靴ブランドのDSWなど70以上の小売事業者が「Home Pickup」サービスを利用したと説明。小売事業者からは、サービスを利用した消費者から高い満足度を得たという報告が届いているそうです。

また、「Home Pickup」は他の返品方法と比べ、商品が倉庫に戻るのが25%早かったというデータも明らかにしました。

Ann Taylorは、『Digital Commerce 360』発行の「北米EC事業 トップ1000社データベース 2021年版」で47位にランクインしているAscena Retail Group傘下の企業です。DSWは同データベースの81位にランクインしています。

Narvarの「Home Pickup」サービスは現在、米国の主要都市10か所で提供。今後数か月でさらに100の大都市に拡大する予定で、実質的に全米をカバーすることになります。

「Home Pickup」を利用する消費者は、小売事業者が設定する料金で、返品する商品の集荷を予約できます。他の返品方法同様、消費者は返品ラベルを印刷し、購入した商品を梱包します。消費者自らが店舗に持参したり、一般的な配送会社に返品商品を預けるのではなく、配送業者に電話をするだけで返品商品を引き渡すことができます

簡単な返品を好む消費者たち

Narvarのサービスは、小売業界のトレンドの大きな波に乗っています。近年、消費者に提供する返品方法に関して、小売事業者はより多くの選択肢を用意するように努めているからです

たとえば、Target  (「北米EC事業 トップ1000社データベース 2021年版」6位)は、カーブサイドピックアップ「Drive Upサービス」の一環として、路上での返品受付を開始すると発表しています。

また、オンライン通販の靴ブランド Rothy's(242位)や女性向けアパレルブランドの Draper Jamesも返品を簡単にするため、返品取り扱い業者のHappy Returnsと提携しました。Happy Returnsは、消費者がオンライン通販事業者から購入した商品を送り返すことができる小スペース「Return Bars」を運営しています。

なお、Amazon(同1位)は、2017年にKohl'sの一部店舗で返品受付を開始しています。

Amazon booksの店舗の様子
Amazon booksの店舗の様子(出典はAmazon

小売事業者は、返品が次の販売につながるか、潜在顧客を失うかの分かれ目になるため、手間のかからないシームレスな返品サービスをめざしています

『Digital Commerce 360』とBizrate Insights がオンライン通販事業者1108人を対象に行った調査(2022年1月実施)では、返品送料無料(60%)と簡単で分かりやすい返品ポリシー(46%)が、購入を促す可能性のある理由の上位5つに入っていました。また同調査では、回答者の9%が、小売事業者の返品ポリシーが不明確だったため、オンラインショッピングカートを放棄したと回答しています

消費者にとって重要度の高い返品サービス
消費者にとって重要度の高い返品サービス(出典:『Digital Commerce 360』とBizrate Insightsが実施した調査)

2021年にNarvarが発表した調査結果によると、返品経験を高く評価した消費者の96%が、同じ小売事業者で再び買い物をすると答えています

返品コストの上昇

消費者が簡単で手厚い返品ポリシーを求めるようになる一方で、小売事業者のコストは上昇を続けています。

2021年後半に全米小売業協会が実施した小売事業者57社への調査では、回答した加盟店の45%がコロナ禍に返品量が大幅に増加(26%)、または若干増加(19%)したことがわかりました。

リバースロジスティクスを提供するOptoroによると、2021年に小売事業者が返品を処理するのにかかる費用は平均33ドル(50ドルの商品価格の66%)、前年比では59%増となっています

この記事は今西由加さんが翻訳。世界最大級のEC専門メディア『Digital Commerce 360』(旧『Internet RETAILER』)の記事をネットショップ担当者フォーラムが、天井秀和さん白川久美さん中島郁さんの協力を得て、日本向けに編集したものです。

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