返品手続きにパーソナライズを導入すると「顧客満足度UP」「ロイヤリティ向上」「リピート購入の拡大」につながる理由
ブランドへのロイヤルティが高く特別な扱いを受けるべき消費者のために、小売企業はVIP用返品ルールを設けるべきです。VIP顧客は、購買データを利用すれば設定できます。大口購入者、これまで一度も返品したことがない、またはほとんど返品したことがないリピート顧客、その他の好ましい行動を示した顧客などが対象です。
返品プロセスのパーソナライズは競合との差別化につながる
近年の優れた小売企業は、Eメール、Webサイト、モバイルアプリ、場合によっては実店舗を介して消費者のブランド体験をパーソナライズしています。
パーソナライゼーションは、消費者に購入してもらうために活用されることが一般的。しかし、顧客満足度の向上、ロイヤリティの増加、口コミによるプロモーションの拡大につながる、購入後のブランド体験に関するパーソナライゼーションは遅れています。
パーソナライズされた返品ルールの導入は、競合他社との差別化を図る大きなチャンスとなります。
米国のホリデーシーズンのオンライン売上は、11月1日から12月31日までに前年同期比10%増の2070億ドルを超えると予想されており、新記録になりそうです。そのような状況下、返品プロセスに満足した消費者の96%は、その小売店でまた購入すると回答しています。返品を適切に処理するeコマース企業は、多くの利益を得ることができるのです。
一方、小売事業者が返品を慎重に管理しない場合、かなりの収益を失うことになります。全米小売業協会(National Retail Federation)は、2020年のホリデーシーズンにおける返品による損失は1010億ドルに上ると推定しています。
小売業で一般的になっている無制限の無料返品、返品理由を必要としない返品手続きは、ほとんどの小売事業者にとって経営的に持続可能なものではありません。利益率を低下させ、すでに困難に陥っているサプライチェーンを混乱させます。
しかし、パーソナライゼーションを活用すれば、返品業務を金銭的・物流的な負担からビジネスの推進力へと転換することができるでしょう。
パーソナライズした返品は、VIP顧客への特典
パーソナライズされた返品とは? 基本的には、顧客ごとに個別のサービスを提供し、プロセスを容易にする返品方法です。
この点を考慮して、小売事業者はブランドへのロイヤルティに対して特別な扱いを受けるべき顧客のために、VIP向け返品ルールを作成する必要があります。
VIP顧客は、購買データを利用して設定することができ、大口購入者、これまで一度も返品したことがない、またはほとんど返品したことがないリピート顧客、その他好ましい行動を示した顧客などが対象です。
小売事業者は、VIP顧客にはより長い返品可能期間やその他の特典を提供、インセンティブを与えましょう。システムを導入し、VIP向けルールが適応される顧客をグループ化することで、他の顧客にも好ましい行動をとってもらい、返品の量と費用を削減することができます。
私の研究チームが、Walmart、Bed Bath & Beyond、Best Buy、Lululemonなど、約200の大手およびD2Cブランドの返品ルールを分析したところ、VIP向け返品ルールを取り入れている小売事業者はわずか9%でした。
つまり、このアイデアはまだ始まったばかりなのです。一方、DSW、Home Depot、Best Buyの3社は、一歩先にサービスを始めており、リピーター顧客を特別会員に引き上げるVIPルールを返品に採用しています。
返品の選択肢を増やす
靴とファッションアクセサリーを販売するDSWでは、返品の際にロイヤリティの段階に応じて個別対応し、VIP顧客にはインセンティブを与え、新規顧客にはオプションを提供しています。
VIPゴールド(90日)とVIPゴールド・エリート(365日)の顧客に、オンラインでの無料返品窓口を設置。それ以外の顧客には、返品送料として8.50ドルを請求します。そうすることにより、悪意のある人の返品費用を負担する可能性が低くなるため、詐欺対策にもなります。
「Home Depot」では、VIP会員には365日、それ以外の会員には90日の返品無料サービスを提供しています。これは、商品の長期使用が前提となっていることを考慮したもので、熱心なDIY愛好家が「Home Depot」を利用する動機になっています。
「Best Buy」は、VIP会員には1か月間、その他の会員には2週間の無料返品サービスを提供。これは、ガジェットを購入するVIP顧客にとって、商品の機能をよく知るために2倍の時間が付与されており、リピート購入の大きなメリットになっています。
返品ルールを利用して好ましい購買行動を促進する
返品が雪だるま式に増えていけば、ROI(費用対効果)の観点から維持できなくなる可能性がありますが、ブランドが創造的かつ戦略的にルールを策定することで、顧客をより好ましい購買行動へと導くことができます。
高価格なアパレルの中古販売を手がけるThredUp、オンラインファッションブランドのDollskillはこの考え方を理解しており、顧客が返金ではなくストアクレジット(編注:そのお店だけで使えるお金)を選択した場合、返品送料を無料にしています。
顧客がストアクレジットを選択した場合、ブランドは売り上げを達成し、顧客は他に欲しいものを購入し、ブランドも顧客も返送料を支払う必要がありません。まさにWin-Win-Winのシナリオです。
好ましい購買行動を促進し、返品コストを抑えるために、高級百貨店チェーンSaksでは、2週間は無料で返品を受け付けています。それ以降は、9.95ドルの送料がかかります。アパレルのLulu'sも同様のプログラムを提供しており、顧客は10日間以内は無料返品することができます。
このような返品期限と価格設定は、顧客にとっても公平であり、顧客がより早く商品を返送することを促します。返品期限を厳しくすることで、商品を早く在庫に戻すことができ、シーズン中に正規の価格で再販できる可能性が高くなるというメリットがあります。
また、顧客にとっては、ハッピーアワーようなもので、早く行動を起こしてくれた顧客に報いることができ、決断力を発揮して期限に間に合わせてくれた顧客を喜ばせることができます。
返品はターニングポイントを迎えています。小売事業者は、購入後の体験をパーソナライズすることが、顧客満足度の向上、ロイヤリティの増加、口コミによる宣伝効果につながることに気付き始めています。
DSW、Best Buy、Saksなどのブランドが先行していますが、2022年に向けて、より多くの小売事業者が追いつき、この大きな機会を利用し、競合他社を追い抜いていくでしょう。