Digital Commerce 360 2021/2/4 8:00

返品を好んで行う人はいません。返品という行為を、有益で個人に最適化されたポジティブなプロセスに変えることができれば、返品はより魅力的なものになるはずです。今回はそのティップスをご紹介します。

ECで購入された商品の30%が返品される

小売事業者にとって返品は日常茶飯事です。オンラインショッピングが急速に普及している今、返品の負荷はさらに大きくなっていることでしょう。家族で集まるのが困難なホリデーシーズンが過ぎましたが、会えない中、相手が望んでいないギフトを贈ってしまった人は一定数存在するため、返品コストはすでにかなりの額に上っています。

オンラインで購入された商品の30%が返品されると言われていますが、もちろんすべてがギフトではありません。消費者は、返品する前提で何百万もの商品を購入しています。複数の色、スタイル、またはサイズを購入して、どれがベストかを確認し、それ以外の商品は送り返すのです。残念ながら、小売事業者は返品された商品の25%を廃棄しなければなりません。その際、商品と配送費用は、小売事業者が負担することになります。

よく返品されるEC購入商品カテゴリ
よく返品されるEC購入商品カテゴリ(画像:市場調査SaaS会社「グローバルインデックス」が2019年に実施した調査結果から編集部が作成)

このような状況を考えると、返品コストと物流は、企業の損益を考える上で考慮すべき重要な要素です。企業規模に関わらず、コストを削減して物流を最適化し、カスタマーエクスペリエンスを改善する方法を試すなど、返品をきっかけにより多くの販売と利益につなげることができます。返品後に提供するカスタマーエクスペリエンスに焦点を当てることは、不可欠なのです。

返品プロセスは顧客体験向上のチャンス

ほとんどの顧客は、返品によって小売事業者が負担するコストを気にしていません。89%の消費者が、「返品の経験が悪ければ、そのブランドでの買い物をやめる」と答えています。

Amazonや「Walmart+」(Walmartの会員制プログラム)が拡大するなか、小売事業者は簡単で親切な返品プロセスを構築するために、“返品に後ろ向きな姿勢”を崩さざるを得ません。ギフトでも自宅用の購入でも同じです。

ただ、返品には良い面もあります。返品プロセスの課程で、顧客(とギフトを返品する人達)を上手に導くことで、ロイヤルティを高めたり、追加購入につなげることができます。新しいつながりを作りながらカスタマーエクスペリエンスに焦点を当てるのです。それには、パーソナライゼーション、セグメンテーション、コミュニケーションに注力する必要があります。

返品利用者をセグメントし異なる体験価値を提供

初回購入者やリピーターなど、顧客データに基づいて返品利用者をセグメントしましょう。初回購入者にブランドとのつながりを感じてもらうために、顧客満足に焦点を当てることで、ブランドは顧客を大切にしている姿勢を示すことができます。

Amazonも靴のEC「ShoeDazzle」も、購入後の初回メールからカスタマーエクスペリエンスをパーソナライズしています。そうすることで、顧客は商品を受け取る前から気分が高まるのです。Amazonの初回購入後メールには、注文と返品を管理するためのリンクが貼られています。

リピーター顧客はすでにロイヤルカスタマーです。パーソナライズされたメッセージでは、割引によって節約できた金額を表示したり、ロイヤルティの高さを称えたりしましょう(さらに、返金分を使って購入できるセール品を見せても良いかも知れません)。関連性の高いメッセージを送ることで、返品完了後も顧客の興味を引き続けることができます。

返品に関する適切な情報を発信する

返品に関するメッセージは多くの場合、適切な情報を十分に提供していない、ごく一般的な注文処理の通知になっています。消費者は、オンラインや店頭でどのクレジットカードが使えるか、また、それがポイント制度などの要素にどのように影響するかを知りたいと考えています。パーソナライズされたメッセージで、正しい情報を伝えて顧客の注意を引きつけ、次回以降おススメ商品を送れるようにしましょう。

たとえば、サイズが大きいブーツを返品された場合は、小さいサイズを購入したいかどうかを尋ねたり、より好みに合うかもしれない類似のアイテムをおススメしたりします。小売事業者はまた、こういったメッセージを送ることで情報収集ができます。

一例は、今後の注文や返品の状況についてSMSで通知することです。消費者が、簡単に正しい返品情報を見つけられるようにしてください。頻繁に返品する人は、同じようなメールが何通も受信箱に入っていて、整理しなければならないことがあります。件名やメールの中身でそれぞれの注文を識別させることで、クリックしてサイトに行く手間を省くことができます。

返品顧客は未来のロイヤルカスタマー

頻繁に返品する人がいるからと言って、返品されたすべての商品が悪かったわけではありません。顧客がグレーのジーンズを4本買って3本返品した場合、彼らは「試着」のために買い物をしたことになります。このような場合、彼らが試着したスタイルに合うような商品を提案する絶好の機会でもあるのです。

顧客が返品してきたからと言って、その顧客を手放さないようにしましょう。適切なタイミングで、再度メッセージを送ってください。返品した顧客の購買実績やロイヤルティに基づいて、プロモーションやポイントを提供する価値があるかどうかを判断することができます。また、最近の購買や返品に関するデータに分析することで、小売事業者はメッセージをさらにパーソナライズすることができます。

たとえば、コートを返品した後に他のコートを閲覧した人は、冬用アウターウェアを10%オフで購入できるというプロモーションに反応する可能性が高いでしょう。注意点として、商品レビューを求めるメールやリターゲティング広告では、返品した商品を除外するようにしましょう。

顧客に気持ちよく返品してもらう

返品は、購入ほど楽しいものではありません。マーケティングで利用しているポジティブなコンテンツを返品に関しても当てはめ、ポジティブなアプローチで、梱包して郵便局に持っていく煩雑さを相殺しましょう。

「おめでとうございます! 返品商品は無事に処理されており、もうすぐ口座に返金されます」といった一文をメールに追加しても良いでしょう。できるだけ多くカスタマイズやパーソナライズをし、プロモーションメールと同じ雰囲気やブランディングで、返品を追跡するのが簡単で楽しくなるようにしましょう

また、メールを使って、宛名ラベルの再印刷やポイントの確認などをショートカットできるようにしましょう

ファッションECの「Steve Madden」では、顧客が好みを共有してくれた場合、次回購入の際、購入金額から15%割引するサービスを提供しています。

「Steve Madden」のサイトトップページ
「Steve Madden」のサイトトップページ(画像:編集部がサイトからキャプチャ)

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返品を好む人はいません。小売事業者でも顧客でも、不要な贈り物を受け取った人も同じです。しかし適切な情報を提供し、パーソナライズされたポジティブな内容を届ければ、返品プロセスを魅力的なものにすることができます。多くの新しいロイヤルカスタマーを獲得するチャンスなのです。より良い返品体験を作るために努力し、2021年の利益を増やして行きましょう。

この記事は今西由加さんが翻訳。世界最大級のEC専門メディア『Digital Commerce 360』(旧『Internet RETAILER』)の記事をネットショップ担当者フォーラムが、天井秀和さん白川久美さん中島郁さんの協力を得て、日本向けに編集したものです。

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