日本の金融資産8割を握るシニア世代。ハルメクHDを取り巻く環境+小さい固定費で大きな利益を生む今後の成長戦略とは

ハルメクホールディングスは、金融資産の大半を保有するシニア層の購買力に着目し、人口動態や消費支出の回復を追い風に成長戦略を推進している。情報コンテンツ、物販、コミュニティを連動させた独自モデルを軸に、「小さい固定費で大きな利益を生む」収益構造の構築をめざす。

鳥栖 剛[執筆]

9:00

シニア向け通販や情報コンテンツ事業を展開するハルメクホールディングスは、「シニア市場は拡大する」という一般論にとどまらず、人口動態や金融資産の偏在を背景に、中長期的な成長戦略を描いている。

注目するのは、単なる“人口ボリューム”ではなく、“資産を持つシニア層”の存在だ。豊富な金融資産を持つシニア世代を基盤顧客としながら、固定費を抑えつつ高収益をめざす独自モデルを構築する。

シニア市場は「人数」ではなく「資産」が成長を支える

ハルメクHDは日本の金融資産の保有構造に着目。IR資料によると、日本の金融資産の82%を50歳以上が保有しており、60歳以上だけでも全体の6割超を占める。50歳以上が保有する金融資産は約1800兆円にのぼる一方、50歳未満は約400兆円にとどまり、シニア層が日本の個人金融資産の大半を握る構図が鮮明になっている。ハルメクHDは、シニア市場の魅力について「人口規模」だけでなく、「可処分資産の大きさ」が重要だと説明する。

日本の金融資産8割を握るシニア世代。ハルメクHDを取り巻く環境+小さい固定費で大きな利益を生む今後の成長戦略とは
ハルメクが示したシニア世代の金融資産保有状況(画像はIR資料から編集部がキャプチャ)

背景には、日本社会の高齢化がある。50歳以上人口はすでに総人口の半数を超えており、今後も比率は上昇する見通しだ。

女性人口の推移を見ると、50歳以上の女性比率は2010年の46%から2020年には50%へ上昇。2025年には53%、2030年には55%に達すると推計されている。一方で、50歳未満の女性人口は減少が続く見込みで、50歳以上女性の存在感はさらに高まると見られる。

日本の金融資産8割を握るシニア世代。ハルメクHDを取り巻く環境+小さい固定費で大きな利益を生む今後の成長戦略とは
50歳以上の女性比率はさらに高まる見通し(画像はIR資料から編集部がキャプチャ)

消費動向にも特長がある。コロナ禍で一時落ち込んだシニア世帯の消費支出は、その後回復基調が鮮明になった。特に夫婦高齢者世帯の消費支出は、2019年比で2025年に11.2%増となり、総世帯平均(4.1%増)を大きく上回った。ハルメクHDは、シニア層、とりわけ夫婦高齢者世帯は、購買力と消費意欲の両面でポテンシャルが高い市場だと位置づけている。

日本の金融資産8割を握るシニア世代。ハルメクHDを取り巻く環境+小さい固定費で大きな利益を生む今後の成長戦略とは
シニア世代の消費支出(画像はIR資料から編集部がキャプチャ)

「アクティブシニア×アナログ」を基盤に、「プレシニア×デジタル」を育成

こうした市場環境を踏まえ、ハルメクHDは中期的な成長戦略を整理している。

現在の収益基盤は、65歳以上の「アクティブシニア」向け事業だ。雑誌や通販、リアルイベントなど、比較的アナログ接点を中心に強みを築いてきた。ハルメクHDはこの領域について、対象年齢を85歳まで広げながら安定成長をめざす。

日本の金融資産8割を握るシニア世代。ハルメクHDを取り巻く環境+小さい固定費で大きな利益を生む今後の成長戦略とは
ハルメクの成長戦略の基本方針(画像はIR資料から編集部がキャプチャ)

一方で、将来の成長領域として位置づけるのが、50〜64歳の「プレシニア」層だ。この領域では、プレシニア向け情報コンテンツ「HALMEK up」を軸に、デジタルを活用した新たな顧客基盤づくりを進めている。現段階では先行投資フェーズとしつつ、将来的には中期的な安定収益源へ育てる考えを示している。

つまり、現在の「アクティブシニア×アナログ」で収益基盤を支えながら、「プレシニア×デジタル」で次の成長エンジンを育成する構図だ。

「小さい固定費で大きな利益を生む」が成長モデルの中核

ハルメクHDが成長戦略のキーワードとして掲げるのが、「小さい固定費で大きな利益を生む」モデルだ。

ハルメクHDは、情報コンテンツ、物販、コミュニティを連動させた独自の事業構造を持つ。雑誌「ハルメク」でシニア女性との信頼関係を築き、その読者基盤を物販へ送客。さらにイベントや講座を通じて顧客ロイヤルティを高める循環型モデルを形成している。今後は、会員基盤やコンテンツ、講座・イベントなどを活用した、比較的固定費負担の小さいデジタル寄り事業で収益拡大を図る方向性と見られる。

まずは「利益体質」へ転換、その後に成長加速

中期経営計画では、まず構造改革によって収益性を改善し、その後に売上成長を取りに行く戦略を打ち出している。

2025年3月期に策定した中計では、売上計画を1年後ろ倒しにする一方、営業利益と利益率の改善を優先する方針へ軌道修正した。実際、2026年3月期は売上収益が前期比0.3%減の338億1200万円と微減だった一方、営業利益は同66.1%増の17億7400万円と大幅増益となった。売上拡大よりも「利益の出し方」を重視した構造改革の成果が表れている。2027年3月期は、売上収益は前期比3.5%増の350億円、営業利益は同12.7%増の20億円を見通す。2029年3月期には売上収益400億円、営業利益30億円を計画している。

日本の金融資産8割を握るシニア世代。ハルメクHDを取り巻く環境+小さい固定費で大きな利益を生む今後の成長戦略とは

また、中計では2029年3月期にROE16%をめざす目標を設定。内部留保を積み上げながら、配当性向35%を目安とした株主還元方針も示している。

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