「Amazonログイン&ペイメント」は何が凄い? 約400店のデータから見えた導入効果
「Amazonログイン&ペイメント」をECサイトに導入すると、初回購入者の会員化率が上昇したり、既存会員の利便性向上に大きく寄与することがわかった。「Amazonログイン&ペイメント」を導入している385店(5月時点)のデータを見ると、初回購入者の会員化率はクレジットカード経由に比べて約1.6倍に。ECプラットフォームとして「Amazonログイン&ペイメント」に初対応したフューチャーショップの安原貴之氏(事業戦略部 部長)が、その効果を明かしてくれた。
新規顧客の会員化にクレカ比で1.6倍の効果
フューチャーショップのECプラットフォーム「FutureShop2」を利用しているECサイトのうち、「Amazonログイン&ペイメント」に対応している店舗は5月現在で385店舗。申し込み総数は570店舗を超えている。
「Amazonログイン&ペイメント」を利用するECサイトを最も多く抱えている「FutureShop2」のデータから、次のようなデータを見ていく。
- 新規の会員獲得効果
- 顧客単価の変化
- 決済比率の変化
まずは新規の会員獲得効果から。
「Amazonログイン&ペイメント」経由で買い物をした初回購入者が会員になる割合は42.58%。クレジットカードで初めて買い物をした人は26.4%。
「Amazonログイン&ペイメント」の新規購入者は、一般的な決済手法と比べて1.6倍も会員になる確率が高いという傾向がデータから見えてくる。安原氏はこう言う。
新規の会員獲得のために広告に投資するケースが多いが、「Amazonログイン&ペイメント」を導入すると新規会員の獲得率が大きく改善される。単なる決済手段ではなく、Amazonのアカウントを使ってログインするという仕組みが貢献しているのだと考えられる。
クレカから「Amazonログイン&ペイメント」への移行は約2割
「Amazonログイン&ペイメント」を導入した場合、既存の顧客がどの程度、決済方法を変更するのか気になるところ。フューチャーショップは決済手段の乗り換えについても調査した。
クレジットカードや後払いなどさまざまな決済を使う消費者のうち、「Amazonログイン&ペイメント」に乗り換えた既存顧客は12%。
クレジットカードだけを見るとその割合は19%になる。既存顧客、いわゆるリピーターも利便性を求めて「Amazonログイン&ペイメント」に移行する傾向があるようだ。
決済単価はクレカなど主要決済と均衡、顧客単価の低下の恐れはなし
「Amazonログイン&ペイメント」の1つの特徴にあるのが、最短2クリックで購入できる手軽さ。そのため、「まとめ買いがされにくくなるため、顧客単価が低くなるのではないか?」といった疑問も出てくる。
「Amazonログイン&ペイメント」利用店舗の平均顧客単価の推移を見てみると、1万円~1万1000円の間で推移。クレジットカードを使った決済とあまり変わらないという傾向がある。
コンビニ払いはおよそ7000円~8000円、後払い決済6000~8000円で推移している状況と比較すると、顧客単価の落ち込みといった懸念はなさそうだ。
顧客単価を購入デバイス別に見るとユニークな傾向が見えてくる。
パソコン経由
パソコンを使ったECでの買い物に関し、「Amazonログイン&ペイメント」を使ったEC購入の平均顧客単価は1万2000円前後で推移。「高額商品は代引きが多いと考えられ」(安原氏)、平均顧客単価は1万4000円から1万5000円強と高い傾向にある。
スマートフォン経由
スマートフォンを使ったECの平均顧客単価は、パソコン経由と比べて全体的に低くなっている。たとえば「Amazonログイン&ペイメント」を使った買い物の平均顧客単価は、おおよそ8000~9000円で推移。パソコンと比べて2000円~3000円ほど低い。
安原氏は「今後、スマホを使ったECが普及すると、ECサイトの購買単価が低くなることが課題になる可能性がある」と指摘。顧客単価の減少は利益面に直撃し、売上高営業利益率の悪化などを招く恐れもあり、課題となりそうだ。
決済手段の「Amazonログイン&ペイメント」は急増、クレカなどは低下
「Amazonログイン&ペイメント」を導入したECサイトでの決済比率の変化を見ていく。
フューチャーショップの「FutureShop2」利用店舗に「Amazonログイン&ペイメント」の提供を始めた2015年8月以降、クレジットカードと代金引換の割合が減り、「Amazonログイン&ペイメント」と「後払い決済」の割合が増えている。
- クレジットカード 44.94%(2015/8)→ 31.93%(2016/4)
- 代金引換 30.59%(2015/8)→ 19.53%(2016/4)
- 後払い決済 9.25%(2015/8)→ 15.33%(2016/4)
- Amazonログイン&ペイメント 0%(2015/8)→ 21.10%(2016/4)
デバイスごとの決済比率の変更を見てみる。
パソコン経由
- クレジットカード 58.21%(2015/8)→ 36.75%(2016/4)
- 代金引換 20.90%(2015/8)→ 14.95%(2016/4)
- 後払い決済 7.43%(2015/8)→ 8.24%(2016/4)
- Amazonログイン&ペイメント 0%(2015/8)→ 27.33%(2016/4)
スマホ経由
- クレジットカード 37.26%(2015/8)→ 29.37%(2016/4)
- 代金引換 36.21%(2015/8)→ 21.93%(2016/4)
- 後払い決済 10.30%(2015/8)→ 19.13%(2016/4)
- Amazonログイン&ペイメント 0%(2015/8)→ 17.80%(2016/4)
パソコン経由とスマホ経由では、「Amazonログイン&ペイメント」が全決済に占める割合はそれぞれ約27%、18%。
クレジットカード決済と代金引換決済のシェアもそれぞれ低下している。
一方、スマホ経由では「後払い決済」のシェアが約6ポイント増加。こうしたことを踏まえて、安原氏は次のようにまとめている。
スマホでのEC利用は、より安全な決済を求めているのではないか。実は、「Amazonログイン&ペイメント」の消費者への宣伝は、Amazonも導入店舗も行っていない。それでも利用する消費者が急増している。「Amazon」という安心感が影響しているのではないか。