ファッションECに来ている+これから来るテクノロジーまとめ

ベンチャー企業の参入や新しいテクノロジーの活用が進むファッションEC業界。ファッションとテクノロジーをテーマにしたイベント「FASHION TECH “Conference” 2017」(7月19日に六本木で開かれた)から、最新テクノロジーなどを踏まえたファッションECの今、これからを知るためのキーワードを要約して紹介する。
商品との出会いを変えるテクノロジー
最初に登壇した、ファッションSNS「IQON(アイコン)」を運営する株式会社VASILY(ヴァシリー)代表取締役の金山裕樹氏は、自社の取り組みを披露した。

IQONは提携する200以上のECサイトの商品を、ユーザーが自由に組み合わせてコーディネートを作成。そのコーディネートを気に入ったユーザーがIQON経由で買い物をすると、VASILYに手数料が入る仕組み。毎月億単位の商品がVASILY経由で販売されているという。

IQONはGoogle、Appleからベストアプリに選出されている
写真の商品を読み取り、類似商品を推薦する

写真の中からアイテムに該当する領域を検出し、アイテムのカテゴリを予測。検出したアイテムに似た商品をデータベースの中から検出する技術。
検索範囲としてブランドを指定することもできるが、写真の中でアイテムが重なっていたり、隠れていたりすると読み取れない。
この技術はすでにVASILYのサービス「SNAP by IQON」で使用している。「SNAP by IQON」は、人気インスタグラマーの着用アイテムと似ているアイテムを機械で探して提案するもの。
オンライン上で「人と服との出会いをどうやって作るか」という所に特化している。(金山氏)
デザインを固定して色だけをグラデーションで表示する

「デザインはこんな感じがいいけど、もうちょっと違う色が見たい」といった要望に応える技術。アイテムの丈の長さや袖の有無といったデザインを維持したまま、色のバリエーションをグラデーション状に表示し、スライダーを動かしなら探すことが可能。
プログラムによる服の自動デザイン

VASILYの強みはビッグデータと機械学習。およそ10万枚のワンピースのデータを機械に教え込み、「ワンピースとは何か?」と問いを投げかけ、帰ってきた答えが上の画像という。
こういう技術の話をすると、デザイナーがいらなくなると言われることがあるが、そうは思わない。近い将来起こるのは機械と人間のコラボレーション。
人はデザインだけじゃ服を買わない。機械が何かしらのパターンを絞ったり、トレンドを推薦したりということはあるかもしれないが、最終的に人間が目を通すのが次のステップだと思う。(金山氏)
「サイズが不安だから買わない」と言わせないためのテクノロジー
ファッションEC最大の障壁とも言えるサイズの問題。最近は過去に購入した商品と比較できるサイトも増えてきている。

VIRTUSIZE(バーチャサイズ)
「VIRTUSIZE」は手持ちの服とサイト上の服のサイズの差を画像で確認できる。

TRUE FIT(トゥルー フィット)

米国の「TRUE FIT」は自分のサイズと手持ちの服のサイズを登録すると、適したサイズを教えてくれる。
BONOBOS(ボノボス)

こちらも米国での試み。メンズアパレルブランドの「BONOBOS」は、実店舗でフィッテングと商品提案を行い、購入はオンラインでという取り組みを行っている。
Flickgit(フリックフィット)

靴に特化した取り組み。「Flickgit」は足専用の3Dスキャナが設置してある「3Dスキャンスポット」で計測して登録すると、ヴァーチャルで靴の試着ができるサービス。
CINDERELLA SHOES(シンデレラシューズ)

こちらも靴の取り組み。サイトに自分の足の情報を登録すると、合いやすい商品を推薦する。足の測定、靴の選定と調整を行う「リアル施術」も行っている。
Amazon Prime Wardrobe

Amazon.comが6月20日に発表したprime会員向けサービス。興味のある商品を配達してもらい、試着して気に入った商品のみを購入。不要な商品は元の箱に入れて返送する。
unisize(ユニサイズ)

メイキップ 代表取締役CEO 柄本真吾氏が登壇。運営する「unisize(ユニサイズ)」は、ユーザーがサイズに関するアンケートに答えると登録が完了し、提携するECサイトで自分に合ったサイズがわかるようになるというサービス。
FABIAや夢展望で導入されており、現在100万IDを発行している。今年中に100社導入が目標。
夢展望で行ったテストでは購入率が3.5倍、購入単価が1.04倍と増加した。

返品率は企業によって異なるが、平均で約20%程度下がっているという。


ファッションECを語るための2つのトピック
EC事業者の支援業務を行っている株式会社ブティックスター代表取締役の高田博之氏は、下記の2つのトピックについて語った。
VMD(ビジュアル・マーチャンダイジング)の重要性
「VMD(ビジュアル・マーチャンダイジング)」とは、店舗全体の空間デザインから服の展示法まで、店舗をビジュアル面からサポートする手法。売り場全体や商品を魅力的に見せ、ユーザーにとって魅力的で見やすく、また選びやすく買いやすい売り場を作り上げる。
- ファッションに対するセンスやトレンドの理解
- 空間に対するセンス
- 買い手の心理に対する知識と理解
上記の資質を備えたVMDのポジションが、EC業界では不足しているという。
コーポレートサイトとECサイトの一体化の流れ
日本ではブランドサイトとECサイトが別々になっているパターンが多いが、米国では一体化の流れが起きており、トップブランドの多くが一体型になっている。
検索結果でECサイトよりブランドサイトが上位表示される事が多く、買う気で検索したユーザーの離脱を招く要因にもなっている。
高田氏がコンサルティングを行った事例では、ブランドサイトとECサイトを一体化とリニューアルにより、 コンバージョンレートが1.3倍〜1.4倍になった事例もあるという。
かつてはアパレル企業のブランディングの場はファッション誌だったが、現在ではネットにその役割が移っている。「ブランドサイトはECサイトと統合され、ECサイトがブランディングの役割を担う」(高田氏)。
