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ネット通販しかり、ビジネスにおいて、経営者や責任者、担当者が自社の事例や考え方などを披露する記事や講演は貴重な学びの場。ただ、「メリットがない」「ノウハウが流出してしまう」といった理由から、メディアやイベントといった“表の場”に登場する人は決して多くはありません。

講演、記事執筆、メディア対応――積極的に“表の場”に登場する人はどんな考え方を持っているのでしょうか。メガネスーパーのEC事業、オムニチャネル推進を統括する責任者・川添隆(店舗営業本部 デジタル・コマースグループ ジェネラルマネジャー)氏はこう言います。

セミナー登壇や取材で記事にしてもらっても、真似されるリスクは低いですよ。表に出ることで、交流のネットワークが広がったり事業者同士の事例を深く聞けることができるようになるので、メリットの方がはるかに大きいですね。

講演、記事執筆、メディア対応といった表の場に出ることを積極的に引き受けるの? メガネスーパー・川添隆さんに聞く
“表の場”への露出をススメる川添隆さん(店舗営業本部 デジタル・コマースグループ ジェネラルマネージャー)

積極的に“表の場”に出るけど本業はおろそかにしない

月平均1~2回、オープンセミナーや勉強会などに登壇するという川添さん。ほかには、月1~2回の取材対応、連載執筆(現在は日経デジタルマーケティングに執筆中)、個人のブログ執筆、NewsPicksのプロピッカーとして毎日1~2回の投稿を欠かさずに続けています。

講演、記事執筆、メディア対応といった表の場に出ることを積極的に引き受けるの? メガネスーパー・川添隆さんに聞く
プロピッカーとしてNewsPicksでも活躍中

講演の登壇、取材対応、連載執筆などの事前準備だけで忙しいはず。ですが、本業はおろそかにしていません。ここで川添さんの平均的な平日の仕事内容を見ていきましょう。

  • 月曜日 → 全社ミーティング(12時から19~20時まで)。メガネスーパーの投資を含めたあらゆる事を決定する会議で、100~150人ほどが集まり(参加権限がある人)、全ての部門の施策の進行状況や決定・決裁を行っています
  • 火曜日 → コンタクト部門会議、EC事業部門の定例会議
  • 水曜日 → メガネスーパーとして携わるコンサルティング先(レディースアパレル)に常駐。定例ミーティングや商談、役員会議などに参加
  • 木・金曜日 →事業部門の仕事(新しい施策のミーティング。そのほか、ツール導入、アプリのカスタマイズといったシステム会社との打ち合わせなど)。セミナーや勉強会などへの参加。金曜日は「キャラバン隊」という社長を隊長とし、店舗の売上アップの為に、役職・部署・地域を超えて活動・支援する有志集団によって、全国の店舗を回る取り組みに月1~2回参加。その店舗の状況把握、最新の店舗へのアップデート、集客活動などを行うそうです。川添さんはポスティング担当として、ポスティング活動に励んでいるとのこと
  • 土曜日 → 休みをとったり、土曜日キャラバンに参加したり、常に業務対応の臨戦態勢を保っています
  • 日曜日 → 新卒採用説明会の会社説明を行っています
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2017年の元旦も出勤。新宿の実店舗で初売りに参加しました

「日で休むという感覚はありませんね。時間単位で休むという意識を持っています」と話す川添さん。

成果をコミットし、そのために自身の裁量で時間を使うことが求められるマネジメント職のため、川添さんはまるまる1日休暇をとるというよりも、時間単位で休みを取るというスタンス。

どんな時でも通常業務や意思決定に対応できる準備をしておきながら、講演のプレゼン資料作成や記事執筆、取材対応などにも柔軟に対応できるようにしているそうです。

講演、記事執筆、メディア対応といった表の場に出ることを積極的に引き受けるの? メガネスーパー・川添隆さんに聞く
ECzineさんでは、「アパレルECの今を語る」というコーナーで企画・インタビュー役も行っています

表に出ることは自社に大きなメリットとして跳ね返ってくる

忙しい毎日を送っている川添さんですが、セミナー登壇や取材対応などは積極的に引き受けています。それは、川添さん自身が「表に出ると、自社の経営やサイト運営に大きなメリットとして跳ね返ってくる」と考えているため。では、どんなメリットがあるのでしょうか?

情報が集まる

セミナー登壇したり記事に登場すると、交流の機会が広がるんですよね。「詳しいことを聞きたいのですが」と聞かれれば、積極的に相手先へ訪問し、自社の取り組みなどをお話します。相手先は自社のことを話してくれるので、とても勉強になります。

普段、表では聞けないケーススタディが、自分のなかでどんどん蓄積されていくんです。お互いWin-Winの関係になれるんですよね。

情報を出せば出すほど、情報が集まるようになるんです。例えば最新のプロダクトを使ってほしいというような提案や、第一線の実例の情報が入ってきます。不思議ですけど、“表の場”に出るということはそんな効果があるんです。

発言力のアップ

業界内外のつながりが増えたり、さまざまな情報が入ってくると、不思議と社内において一定の発言力が出てくるんです。会社の人が記事などを見たりしているので……。

僕はEC事業の規模が小さい企業でのEC責任者、ほかには赤字再生に携わったりしてきました。たとえば、EC売上の規模は小さくても、世の中一般的には、具体的な事例を公開する会社って少ないですよね。

ということは、自分たちの成果を具体的に発信すれば、社内外に対しての発言力がついていくんじゃないかと思っています。表に出ることで会社のビジネスにも貢献できるんです。たとえば条件交渉とか(笑)

メディアなどでの露出が増えると「事例に出ていただきたいので、導入条件を優遇してご提供します」といったお話しとかもります(笑)。ある決済サービスの導入に関しては、先方から「一緒に着実な事例とPRができる企業とやっていきたいと考えているので、川添さんとやりたい!」と言ってくださったり。

また、「PR力」が交渉の武器になります。交渉をする上では、「この人を敵に回したらヤバい」と思われるかどうかで相手の出方が変わってきます。交渉力はビジネスの規模だけでなく、他の要素でも作れると思っています。僕の場合、それが“表の場”に出ることだったんです。

リスクってほとんどない

講演や記事に出る情報は自分でコントロールできます。“これは表に出したら危ない”という情報はアウトプットしていません。とはいえ、僕の場合は、よっぽどのことがない限りはオープンに話します。

だって、そっちの方が聞き手としては持ち帰るものが増えるので。これまで登壇した経験上、僕が話した内容を実行に移した方は1割もいないと思います。真似されるといったリスクはそもそもないんじゃないですかね。

一方で、9割以上の人が実践していないんですよね。ここに、僕が登壇や記事執筆などを続ける理由があるんです。僕の失敗談や成功事例などから何か学びがあれば、少しでも失敗のリスクは減らせます。だから、“表の場”に出続けて“伝え続け”なければいけないと思っているんです。

自分へのプレッシャーになる

僕は過去に成功した施策などにしがみついていてはダメだと思っているんです。EC業界はテクノロジーやトレンドなどの変化が激しいし、常にビジネスパーソンとしても人間としても進化していきたいんで。

だから、考え方やこれからの施策などをアウトプットすることで、自身へプレッシャーをかけているつもりです。それを話すということは、新しいこと成果を出さざるを得ないじゃないですか(笑)

もちろん、新しいことをやるばかりではいけません。やっていることをブラッシュアップしていく必要がありますよね。アウトプットする以上、それはちゃんと自社で成し遂げないといけませんから。

こうした考えをベースに、「真似されても当社はもっと先を行っている」くらいの覚悟で業務にあたっています。

自身の成長が会社の利益として還元される

デジタルマーケティングに携わっている人はイベント登壇とか取材対応に積極的な人が多いですよね。その共通話題としてあがることが多いのは、「さぼってんじゃねぇのか」といった社内のねたみなど(当社ではないです)。

しかし、情報をアウトプットすることによって自分自身が成長し、結局それが会社の利益として還元されることになるんです。

心がけていることが2つあります。1つ目はセミナー登壇や取材によるPR効果だけでなく、プラスαの成果につなげるようにしています。商談相手として社内メンバーにセミナーで知り合った人脈を紹介したり、セミナーで知り合った方々にメガネスーパーのご利用をご紹介したり……。期待値を持ってもらえると、株価にも影響を及ぼすこともあります。考え方次第ですよね。

2つ目は、常に見られている意識をもって自分に厳しくすることです。ちょっとでも楽をしようとすると、それがねたみのもととなります。「見られている存在」こそ何でも率先してやり、必ず結果を出す必要があると思っています。

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ネッ担イベントでもご登壇いただきました!

積極的に“表の場”に出るようになったきっかけは?

遡ること約6年前。川添さんが全社売上高60億円規模のファッション企業でEC責任者に抜擢されたときのことです。

「ECの売上高を倍にしろ。その代わり、あらゆる武器は与える。」社長から突然言い渡された使命がきっかけでした。

当時、ユナイテッドアローズさんやアーバンリサーチさんなど、ファッションECで成長している企業はメディアの注目の的。そこに目を付けた川添さんは、「EC領域は小売りにとってビッグトピックス。事業本体の規模などよりも、具体的な結果につながった取り組みや、何かユニークなことをすれば、事業体としては逆転できるはず。だったらファッション業界でNo.1のEC事業をめざしてもいいんじゃないかな」(川添さん)と感じました。

責任者として実績を積み重ねて、まずはプレスリリースとして発信。最初に、取材を申し込んできたのが通販業界の専門紙「通販新聞」でした。

その後、通販新聞主催の座談会に招待され、アバハウスインターナショナル、アーバンリサーチ、ユナイテッドアローズ、ポイント(現在はアダストリア)といったECの取り組みで先行している有名アパレル企業と対談する機会を得ました。これをきっかけに、各企業の責任者・担当者との交流や、他媒体での取材依頼が徐々に増えていくことになったのです。

「広がったネットワークに手ごたえを感じた」という感触を得たのは、大手SNSからある新機能がリリースされ、同時に導入企業が発表されたとき。どうすれば利用できるのか? こんな疑問を持ったそうです。

SNSの活用強化を模索していた川添さんは、セミナー参加社者として知り合った大手小売り企業の担当者に聞いたところ、新機能をプロモーションするための座組みや主幹企業名を教えてもらいました。

わからないことをすぐに聞いて、解決できる環境、すなわちネットワークができつつあると実感しました。ただの知り合いというつながりだけでは、詳しいことは教えてくれないですから」と川添さんは言います。

講演、記事執筆、メディア対応といった表の場に出ることを積極的に引き受けるの? メガネスーパー・川添隆さんに聞く

“表の場”に出ることのススメ

会社の方針などで“表の場”に出られないケースもあると思いますが……僕はぜったいに登場した方がいいと思っています。

このように話す川添さんは、“表の場”に出る際に気を付けていることがあります。それは「コンテンツを見る読者、セミナーの参加者などに対し、メディア・企画する会社の目線で伝える内容を吟味すること」(川添さん)。

たとえば取材や講演。「オブラートに話を包んでしまったら面白くないですよね。だから具体的に話します。数字もはっきり言います。取材もビジネスの1つとして捉えれば、掲載をしてもらうための対価は必要ですよね。それが、より具体的な情報なんです。具体的に話すと次のオファーが来るんです。もちろん違う会社からの依頼も。面白くないと思われたら次はありません」。

人前に出ることで、プレゼン能力が飛躍的にあがったことも実感しています。「メガネスーパーが半期ごとに行っている合宿では、社内200人の前でプレゼンするケースがあります。ほぼデジタルのことを知らない人ばかり。情熱をこめて、わかりやすく説明しなければならないのですが、登壇などを通じてそんな悩みは解消できました」と川添さんは言います。

最後に、川添さんは“表の場”に出る理由を改めて次のように強調します。それは業界の健全な市場発展のためだと。

ECの責任者に就く人は、社内外に対して発言力は必須と言ってよいでしょう社内調整含めて、突破力がなければ実行につながりません。これだけECやオムニチャネルが市場から注目されているんだったら、「ECの仕事に携わっているのは、かっこいいよね」って言われたいじゃないですか(笑)。みんなで成長し、業界を盛り上げていきましょう。今後、我々が小売業界を支える時代がやってきます!

講演、記事執筆、メディア対応といった表の場に出ることを積極的に引き受けるの? メガネスーパー・川添隆さんに聞く
「みんなで業界を盛り上げていこう」と川添さん
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瀧川 正実

ネットショップ担当者フォーラム編集部 編集長

通販・ECに関する業界新聞の編集記者、EC支援会社で新規事業の立ち上げなどに携わり、現在に至る。EC業界に関わること約13年。日々勉強中。

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