キヨハラサトル[執筆] 2023/1/31 8:00
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アパレル大手のアーバンリサーチは、運営するECサイト「URBAN RESEARCH ONLINE STORE」で良質な画像を豊富に掲載するほか、動画の活用にも注力している。新型コロナウイルス感染症の影響で始めたライブコマースに加え、商品ページ内で動画の埋め込みも実施。動画を配信するチームの体制を強化し、コンテンツの量産につなげている。

商品ページの動画は配信開始から9か月で再生回数が23.5倍と驚異的な伸びを記録。画像と動画の運用におけるアーバンリサーチの取り組みについて、デジタル営業部マネージャーの尻江高昭氏が解説する。

アーバンリサーチ デジタル営業部 マネージャー 尻江高昭氏
アーバンリサーチ デジタル営業部 マネージャー 尻江高昭氏

コロナ禍に始めたスタッフ主導のコンテンツが購買促進に効果

アーバンリサーチは自社ECサイト「URBAN RESEARCH ONLINE STORE(アーバンリサーチオンラインストア)」を展開。顧客層は35歳前後の女性が中心だが、アウトドア商品など男性をターゲットにした商品も展開し、男性顧客の開拓も進めている。

モバイルでのアクセスが90%を超えており、スマートフォンでの閲覧がメイン。購入頻度、購入額などの分析データ、サイト内の行動データなどをもとに、その時々で顧客のステージに合わせて適切なコミュニケーションを実施している。

アーバンリサーチではECサイトを展開していくなかで、コンテンツメディアの活用にも力を入れている。5年ほど前から店舗スタッフ主導のコンテンツとして、「スタッフスタイリング」を開始。さまざまなスタイリングをアーバンリサーチのスタッフが披露するというもので、「スタッフスタイリング」経由での流入を促進するのが狙いだ。

「スタッフスタイリング」
URBAN RESEARCH ONLINE STORE」のスタッフ主導コンテンツ「スタッフスタイリング」

同じく店舗スタッフが主導して展開するメディアとして、2021年4月から始めたのがライブコマースの「UR LIVE」だ。

新型コロナウイルス感染症の影響で実店舗の休業や業務縮小を余儀なくされるなか、来店できないお客さまに対して以前のような接客をお届けしたいという思いから、このライブコマースを始めた。(尻江氏)

ライブコマース「UR LIVE」を展開
ライブコマース「UR LIVE」を展開

ライブ中に顧客とコミュニケーションが生まれるなど、ライブコマース「UR LIVE」は顧客接点としての機能を果たし始めた。コマースという意味でも、ライブ中だけでなくアーカイブ動画を通じて顧客の購買意欲を高める効果が見られるなど、一定の手応えがあった

店舗スタッフとしても、店が閉まっている時期に「UR LIVE」の配信をすることで、店舗再開時に顧客との距離が離れることなく、円滑にコミュニケーションが進んだというメリットがあったという。

お客さまから店舗スタッフに対して「UR LIVEに出ていましたよね」といった声をかけてもらうこともあり、その意味ではお客さまとのコミュニケーションのきっかけになったと言える。(尻江氏)

ECサイト内で仕掛ける静止画投稿の「スタッフスタイリング」と、ライブコマースの「UR LIVE」は店舗スタッフの間でも浸透し、静止画が良いのかライブ動画で訴求するのが良いのか、商品や伝えたい内容に合わせて、スタッフ自身が手段を選んで積極的に運用しているという。

メディアサイトでユーザーを呼び込み、商品ページへ誘導

アーバンリサーチはECサイトとは別に、「URBAN RESEARCH MEDIA(アーバンリサーチメディア)」というメディアサイトも運営している。同サイトは、ブランドごとに発信していた情報を集約して顧客に届ける狙いから始まった。

2019年にサイトを立ち上げてから、紙媒体でプレスを担当していたスタッフを中心に編集チームを構成し、社内の体制を強化してきた。「URBAN RESEARCH MEDIA」に関わるスタッフを徐々に増強したことで企画の幅が広がり、コンテンツのバリエーションが豊かになっていった。

また、公開する記事の本数も増えていき、それがSEO施策としても有効に機能し、結果的に自然検索による流入も伸びていったという。今ではECサイト「URBAN RESEARCH ONLINE STORE」で掲載する特集コンテンツについても、「URBAN RESEARCH MEDIA」の編集部がディレクションするといった取り組みも進めている。

メディアサイト「URBAN RESEARCH MEDIA」
各ブランドの情報を発信するメディアサイト「URBAN RESEARCH MEDIA

「URBAN RESEARCH MEDIA」では子育て中の店員などスタッフにフォーカスした企画や、外部のスタイリストが同社の商品を選んでコーディネートを提案する企画など、それぞれをシリーズ化して発信。スタッフにフォーカスした企画では、第三者の目線から記事を作成することで、スタッフ自身による投稿とはまた違った、新たな切り口でのコンテンツを生み出している。

このように、アーバンリサーチではコンテンツを盛り上げてユーザーを呼び込み、それらのコンテンツからECサイトの商品ページへ誘導。こうして誘導したユーザーを購買につなげる「最後の一押し」として、商品ページの見せ方にも力を入れている。

商品ページでは画像とテキストにこだわって「接客」体験を演出

メディアサイト「URBAN RESEARCH MEDIA」で商品の魅力を発信し、そこからECサイト「URBAN RESEARCH ONLINE STORE」の商品ページへと導く。購買の受け皿となる商品ページでは、上質な画像とテキストで商品の特徴を伝え、ブランドごとに異なる世界観を表現している。

加えて、商品ページの動画やライブコマースのアーカイブなどを通じて顧客との距離を縮め、「接客を受けたような気分になってもらう」(尻江氏)。それでも不安であれば、同社のスタイリストにチャットで相談することも可能だ。

ECサイトでは、購入に至るまでのお客さま体験の向上が最重要課題。お客さまのニーズに合ったオンラインでの体験を提供することにこだわっている。実物との差異をなくすために上質な画質を使うこともその一環。(尻江氏)

「URBAN RESEARCH ONLINE STORE」の商品ページ
「URBAN RESEARCH ONLINE STORE」の商品ページ

アーバンリサーチのECサイト「URBAN RESEARCH ONLINE STORE」の商品ページでは、情報の量と質を大事にしている。ただ、数多くの写真や動画を掲載しようとした場合、サイト全体が重くなり、表示に時間がかかるというリスクがある。

この課題を解消する目的で、アーバンリサーチはCRI・ミドルウェアが提供する画像軽量化ソリューション「SmartJPEG(スマートジェイペグ)」を導入した。これによって、商品画像の軽量化が可能となり、情報量が多くてもサイトのパフォーマンスを落とすことなく、快適なユーザー体験の提供を実現している。

「SmartJPEG」を使った画像の軽量化の一例
「SmartJPEG」を使った画像の軽量化の一例

商品ページ内に埋め込む動画を強化するため、「CRI LiveAct」を導入

さらにアーバンリサーチでは、2022年2月から商品ページに動画の埋め込みを始めた。最初の数か月はYouTube動画を配信した。このYouTube動画と、すでに始めていたライブコマースの「UR LIVE」を通じて、動画配信がECの売り上げに一定の効果があることがわかってきたという。

アーバンリサーチによるとECサイト平均のコンバージョンレートを1%とした場合、「スタッフスタイリング」の写真を見たセッションのコンバージョンレートは2.4%。さらに商品ページの動画を閲覧したセッションは、コンバージョンレートが3.3%まで伸びた。

商品ページで動画を再生するとコンバージョン率が高くなる

こうした成果を踏まえ、商品ページ用の動画を量産し「商品ページの2割を動画コンテンツで埋めてみる」という方針が定まった。動画の運用を強化していくため、2022年7月にアップロードが簡単にできるCRI・ミドルウェアのウェブ動画ソリューション「CRI LiveAct」を導入した。アーバンリサーチの動画活用が本格化していく。

4種類の動画を20人体制で量産

アーバンリサーチが商品ページ内に埋め込む動画は、大きく次の4種類に分類できる。「大枠はこの4パターンである程度のひな型を作り、動画を量産できる体制にしている」と尻江氏は言う。

①コーディネートや素材感のイメージ訴求

コーディネートや素材感といったイメージが伝わるような動画を作成する。

②接客シーン

実際店頭に立っているスタッフがスタジオに来て、そこで実店舗での接客時と同様に振る舞ってもらう。

③身長別の着用感

身長が異なるスタッフが並んで着用している様子を動画で見せることで、身長別にどのような着用感になるのかを伝える。

身長別の着用感を動画で発信

④機能紹介

「このバッグにノートPCは入るか」「A4の書類は入るか」といった問い合わせがあるため、どのようなアイテムが収納できるかなどの機能や使用感を動画で紹介する。

 

動画活用に乗り出した当初は、静止画撮影のカメラマン2人が動画の編集も兼任し、商品ページ用の静止画を撮影するタイミングで、同時に動画も撮影して編集していた。その後、チーム編成を強化し、今ではライブコマース担当者や営業スタッフ、ささげ(撮影・採寸・原稿作成)の担当者も加わって、およそ20人の体制で運営している。

YouTubeから「CRI LiveAct」に移行して再生数は23.5倍に

アーバンリサーチが2022年2月にYouTube動画の埋め込みを開始した当初、動画の再生数は2万弱だった。そこから再生数は徐々に増加し、夏物のピークを迎える6月には6万再生を突破。そして秋物が立ち上がる7月に「CRI LiveAct」に移行し、再生数は13万(7月)、15.8万(8月)、32.9万(9月)、44.8万(10月)と、大幅に伸びていった。開始時に比べると、9か月で実に23.5倍という驚異的な伸び方だ

アーバンリサーチの商品ページにおける動画再生数の推移

再生数が順調に伸びた背景として、「CRI LiveAct」の自動再生機能の影響は大きいと尻江氏は分析する。ユーザーがスマホ画面をスクロールして動画が表示されると自動的に再生が始まり、再生ボタンをタップする必要がないため、動画視聴につながりやすいからだ。なお、アーバンリサーチでは接客動画など音声があるものに関しては、タップしないと再生されないように設定しているという。

「CRI LiveAct」は分析機能を搭載しており、動画別の再生数だけでなく、ユーザーが1つの動画をどのくらい視聴し続けたかという「視聴維持率」も確認できる。これにより、内容の良し悪しを深掘りし、よりよいコンテンツづくりにつなげている。

アーバンリサーチがめざす今後の動画活用

アーバンリサーチでは、「CRI LiveAct」を使って動画を埋め込む際に、ECサイトの世界観に合わせてUIをカスタイマイズしている。「CRI LiveAct」にはそうした機能もあるため、ECサイトになじむよう動画を配置することができる

CRI・ミドルウェアの三上夏代氏によると、上記以外にも「CRI LiveAct」では「360度スワイプ動画」がおすすめだという。「360度スワイプ動画」なら、たとえば靴を見せる場合に360度どこからでも動画で表現できる。ユーザーはスマホを使って靴のソール部分など、通常は写真で確認できない細かい部分までチェックできるため、購入につながる可能性が高まると言えそうだ。

CRI・ミドルウェア 三上夏代氏
CRI・ミドルウェア 三上夏代氏

アーバンリサーチでは今後、商品ページ以外での動画活用を検討している。

「CRI LiveAct」を使ってECサイトのトップページのキービジュアルや、メディアサイトの記事のサムネイルなどに動画を使ってみたい。(尻江氏)

アーバンリサーチではECサイトを運営する上で「お客さまのニーズを常に意識すること」を大切にしているが、それは動画活用においても同様。「動画を使った施策についても、お客さまの気持ちになって考えることを重視している」と尻江氏。今後も顧客目線での動画活用を推進していく方針だ。

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