ソーシャルコマースを活用する若年層消費者「90後」と「Z世代」がけん引する中国の新消費市場とは
「90後(1990年代生まれの中国人若年層)」と「Z世代(1995年~2009年の間に生まれた11才~25歳くらいの世代)」はさまざまな最新デバイスやIT機器を使いこなし、海外通販、タクシー配車アプリ、モバイル決済などを活用したライフスタイルを主導しています。彼らは独自の消費傾向で、中国の新消費市場を牽引しつつあります。
高品質な消費生活を追求する「90後」と「Z世代」
70後、80後世代は、買い物の際には実用性のある商品を重視し、有名な国際ブランドに対して愛着心や信頼感を抱いています。一方、90後とZ世代の若い消費者は物が豊かな時代に育ったため親世代と消費の価値観が異なります。
90後、特にZ世代は消費行動がより主観的で、個人のニーズと好みが非常に明確です。79%のZ世代がブランドではなく質を優先して商品を購入しており、商品とサービスの品質を考えた消費をしています。
「90後」と「Z世代」は新興ブランドの有力な消費層
中国の新興ブランドにとって、90後とZ世代は有力な消費層です。2017年に創立されたコスメブランド「完美日記(Perfect Daily)」は設立から3年ほどの若手ブランドですが、2,684億元(1元=15.45円換算で約4兆1467億円)を達成した2019年のW11(ダブルイレブン)では、欧米ブランドを抑えて化粧品部門で首位を獲得しました。実際、消費の主力となったのは高い購買力を持つ90後とZ世代でした。
ここ数年、「完美日記(Perfect Daily)」はSNSでマーケティングを行っています。コミュニティ機能を持つECアプリ「小紅書(RED)」では168万人のフォロワーを有し、その主な年齢層は18~28歳の若者です。また、「完美日記」を運営するのは、80%以上が90年以降に生まれた「90後」の社員です。
国内ブランドに限らず、国際ブランドも次々と90後・Z世代に向けたマーケティングを開始しています。コスメブランド「OLAY」は若年層へのマーケティングにより、90後とZ世代の若い顧客が47%を占めるようになりました。
高い消費意欲を持つ若年層消費者の規模が拡大
90後とZ世代は高い消費意欲を持っています。「Tmall」は5.5億人の消費者を8つのグループに分類しました。Z世代と三四線都市(※省都ではないが、各省レベルで主要な役割を持つ都市。北京・上海・広州・深センの4都市が一線都市。杭州、南京などは各省や自治区の省都、それに準じる都市を意味する一・五線都市)に居住している若年層消費者(90後を中心とした18歳から30歳くらいまでの消費者)の「Tmall」における増加率が10~20%に達し、特にZ世代消費者の増加率は約20%に達しました。
また、Z世代と三四線都市に居住している若年層に関し、2017年は「タオバオモール」以外のコンテンツチャネルの利用頻度は7%でしたが、2019年は17%に伸長しました。若年層の消費者規模は急速に拡大し続けており、潜在的な消費力が大きいと考えられます。
アクセンチュアが発表した「グローバル95後消費者調査 中国洞察」によると、64%の90後は「ECサイトで商品コメントを掲載した経験がある」と回答しています。この結果から、EC企業にとって、口コミの活用が非常に重要であることがわかります。
また、90後とZ世代は強い購買力によって「ファン経済」を支える消費層となっています。アイドルをイメージキャラクターに起用したブランドの商品を購入することは、若い世代の特徴的な購買行動です。また、給料が入ったらクレジットサービス「花唄(ファベイ)」に入金して、すぐに返済するような行為もよく見られます。90後の60%がクレジットで商品を購入していると言われています。
「90後」と「Z世代」はECとSNSが融合したソーシャルコマースを好む
70後と80後では、「WeChat(ウィーチャット)」や「weibo(ウェイボー)」、「QQ」のSNSプラットフォームが広く愛用されますが、90後とZ世代は「TikTok」や「快手(クアイショウ)」などのショートムービーアプリ・SNSでネットショッピングをする傾向があります。特にZ世代は、さまざまなチャネルを通じて「買物」を「SNS」につなげることが一般的で、家族、同僚、友達と商品情報を共有して、衝動買いをする可能性が高いです。
90後とZ世代は第三者に商品を紹介してもらうことで、購買意欲を沸かせる「种草(ジョンツァオ)」という行動を頻繁に行っており、他の消費者へ商品を宣伝する能力も高いのです。ブランドは若い消費者の特性に基づいた1to1マーケティングを実施する必要があるでしょう。
統計データによると、三四線都市に住んでいる青年とZ世代の半数以上は、モール内SNSの「微淘(ウェイタオ)」や「タオバオモール」内のコンテンツチャネルの1つ「有好貨(ヨウハオホア)」を使用した経験があるといいます。また、70%超が「小紅書(RED)」「TikTok」「快手」で商品情報を検索したことがあり、85%以上がインフルエンサーや芸能人が愛用する商品に関心を持っています。若い消費者たちはKOLの背景や由来を気にせず、役立つ情報であれば、そのアドバイスを受けておすすめの商品をピックアップしているのです。
「90後」と「Z世代」が「ものぐさ経済」の発展を後押し
90後とZ世代消費者は、「横になったまま生活し、どこでも快適な状態を維持したい」と考えているため、中国の「ものぐさ経済」の発展を後押ししています。「ものぐさ経済」は「手間を省く」という考えから始まっており、インターネットの急成長によって、若年層が簡単・快適な生活を送れるようになったことで「ものぐさ経済」が生まれました。
特にここ数年で、モバイルインターネットの発展、コミュニティや飲食、旅行などのO2O、ネットショッピング、デリバリー、リアルタイム配達などのサービスが次々と誕生し、「ナマケモノ」(中国語で懶人、ランレン)と呼ばれる人たちは、家から出なくても個人の生活ニーズが満たされるようになっています。
「ナマケモノ」の90後・Aさんの1日を紹介します。Aさんは朝遅く起きたので、タクシー配車アプリ「 DiDi(ディディ)」を使ってタクシーを呼び、出社しました。出社後、朝食を食べていなかった彼女はデリバリーサービスアプリ「Eleme」を使って、朝食を注文しました。1日の仕事が終わり、Aさんは家に帰る前に「盒馬(フーマー)」アプリを使って野菜、果物、卵などを注文。そうすると、家に着くと同時に新鮮な果物や野菜が家に届きました。
2018年にタオバオが発表した「ナマケモノ消費データ」によると、中国人は2018年にナマケモノ経済行動で160億元(1元=15.7円で換算すると約2512億円)を費やし、前年比70%増となりました。95後の消費は、82%増で急成長しています。
90後とZ世代は中国消費市場の中心となってきています。ブランドや企業は90後・Z世代の消費ニーズを把握し、マーケティング戦略を立てることが非常に重要です。若い世代の心をつかめるかどうかは、各企業の取り組み次第でしょう。
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