朝比美帆 7/19 7:00
[AD]

AI技術を搭載したレコメンドエンジンが、LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)の向上に大きな成果をあげている。顧客1人ひとりの好みやニーズをリアルタイムで読み解くレコメンドがよい顧客体験を実現し、購入後も最適な提案を添えたフォローアップによって再来訪も活性化する。さらにレコメンドは、ECの範囲を超え、店舗体験にまで効果を発揮するようになっており、OMO(Online Merges with Offline:オンラインとオフラインの融合)推進の一環として力を入れる企業も増えてきているようだ。

ネットショップ担当者フォーラム 2022 春」に登壇したシルバーエッグ・テクノロジーの園田真悟氏は、最新のパーソナライズド・マーケティング手法やOMO推進におけるレコメンドの重要性について解説した。

シルバーエッグ・テクノロジー株式会社 園田真悟氏
シルバーエッグ・テクノロジー株式会社 マーケティング部 シニアマネージャー 園田真悟氏

ECでは新規顧客の獲得がよりいっそう消耗戦に
LTV向上施策に注目集まる

経済産業省の「令和2年度 電子商取引に関する市場調査」によると、コロナ禍のパンデミック期は特に物販系ECの伸長が顕著だった。実店舗の売り上げが厳しかった分、EC売上が拡大したという背景はあったものの、実店舗が回復してからもECの伸びは継続すると予測されている。

そのECにおける課題は、新規顧客の獲得が“消耗戦”になっていることだ。コロナ禍でECに参入する企業が増えたため、以前にも増して広告コストが高騰したほか、個人情報保護法の改正によって、これまで有効だった広告手法も効果が出づらくなってしまった。

このように、新規顧客の獲得が困難な状況にあるなかで、一度購入してくれた顧客に買い続けてもらうためのLTV向上施策に注目し、リピート顧客による売り上げの軸を確立していこうとする動きがより強まっている。その1つとして、広告ではなく、売り場・接客の改善でカスタマーエクスペリエンス(CX)を高め、LTVを向上させようとする施策に重点が置かれつつあるのだ。

ECトレンドは顧客獲得単価からLTVの時代に
ECトレンドは顧客獲得単価からLTVの時代に

食べ物でたとえると、おいしいそばを提供していても、食器がスプーンだと良い食事にはならないように、どれだけ売り物が良くても、売り場や接客が良くなければCXは高められません。また、販売後のフォローもCXに大きく関わってきます。CXを高める手法として重要なのが、パーソナライズド・マーケティングです。(園田氏)

店舗は“ネガティブスパイラル”からの脱却が必須

売り場・接客の改善がECの課題である一方で、店舗の課題はどうだろうか。街には人出が戻りつつあるものの、パンデミックからの立ち直りの難しさが表面化している企業も少なくない。コロナ禍をきっかけとした行動変容によって、これまで売り上げの柱となっていた優良顧客の来店頻度が減少してしまったことも要因の1つだ。

毎月、もしくは毎シーズン来店していた優良顧客がその習慣をやめてしまうと、店舗の売り上げが下がるだけでなく、優良店員が店舗から離れてしまう事態が起き、接客の品質低下につながってしまう。これは顧客にとって、売り場での体験が損なわれている状態であり、その結果、コロナ禍が収束しても優良顧客を取り戻しづらいというネガティブスパイラルとなってしまう。

パンデミックからの立ち直りの難しさ
パンデミックからの立ち直りの難しさ

このネガティブスパイラルから脱却し、再び成長軌道に乗せていくことが、パンデミック回復期における店舗の大きな課題だ。

新規顧客を爆発的に増やす魔法のような施策はなかなかありません。LTVを向上させていかなければならないなかで、オンライン(EC)とオフライン(店舗)の双方にとって、“ブランドへの囲い込み”と“再来店の活性化”が共通の課題となっています。

一度来店してくれた顧客をしっかりと維持し、収益のベースを作るために、何度も使いたくなるECサイト、店舗、仕組み作りが求められています。(園田氏)

パーソナライズド・マーケティングを実現するレコメンドソリューション

シルバーエッグ・テクノロジーは、「1人ひとりに最適な顧客体験を提供すれば、売り上げはおのずと伸びていき、LTVも向上していくはずだ」という考えに基づき、AI技術を軸にパーソナライズド・マーケティングを実現するソリューションを開発している。

レコメンドの分野では、SaaS型AIレコメンドサービスの「アイジェント・レコメンダー」や、パーソナライズされたレコメンドメールを送れる「アイジェント・レコガゾウ」を提供。高精度なレコメンドが好評を得て、さまざまな業界で中堅から大手までの幅広い企業に導入されている。

また、1つのツールであらゆるマーケティングの課題を解決するのではなく、パートナー企業の提供するMAツールやCRMツール、接客ツール、チャットツールなど多様なツールとの組み合わせで最適なマーケティング戦略を実現する“ベスト・オブ・ブリード戦略”を取っているのもシルバーエッグ・テクノロジーの大きな特長だ。

多様なツールの組み合わせで最適なマーケティングを実現する“ベスト・オブ・ブリード戦略”
多様なツールの組み合わせで最適なマーケティングを実現する“ベスト・オブ・ブリード戦略”

“接客”の時代を遡れば、インターネットが登場する前の実店舗では、優良店員が顧客を知り、会話の中から顧客の求める商品を提案するOne to Oneの接客ができていただろう。その後、ECが普及してからは、顧客情報をデータとして管理するようになり、顧客の分析データをもとに商品をおすすめするCRMツールや広告ツールなどが登場した。ただしこれらは一方的な仮説と分類になりがちで、顧客が欲しくない商品が広告などで何度も表示され、商品の「押し付け」と感じられるおすすめも少なくなかった。

アイジェント・レコメンダーは、「“顧客本位の接客”を、AIの力で再現する」をコンセプトに、協調フィルタリングと様々な機械学習技術を組み合わせた最先端のアルゴリズムで、顧客1人ひとりの行動をAIが分析、リアルタイムにそれぞれの顧客が求めているものを的確に予測・提案できる。

顧客本位の接客をAIの力で再現するアイジェント・レコメンダー
顧客本位の接客をAIの力で再現するアイジェント・レコメンダー

リアルタイムかつ動的にユーザーの欲しい物を表示するレコメンドを実現

アイジェント・レコメンダーを導入している、大手のハンドクラフトグッズ販売サイトを例に、レコメンドの例を紹介しよう。

たとえば、「キリンのピアス」を探しているユーザーがいるとする。この場合のユーザーは、「① キリンが好きで、キリンのグッズが欲しい人」、「② かわいいピアスが欲しい人」の2パターンが考えられる。

まず、①のユーザーの場合、はじめにトップページの検索窓で「キリン」と入力して探すだろう。「キリン」のワードでヒットした商品が並ぶ中から、かわいいと思ったキリンのピアスをたまたまクリックしたとする。その後の商品ページの下部には、「アイジェント・レコメンダー」のAIが選んだほかのおすすめ商品が表示される。このときに、キリン柄のペンケースや、ほかの柄のピアスなどが表示されるが、ユーザーがキリン柄のペンケースをクリックすると、次の商品ページのレコメンドはキリンに関連したグッズが多く表示されるといったように、自動的にキリンに関連したグッズに絞られていく。

一方、②のユーザーの場合、最初は①と同様にトップページで「キリン」と検索して、同じキリンのピアスをクリックしたとしても、その後のレコメンドでは、たとえば牛柄のピアスをクリックするなど異なる動きとなる。すると、次のレコメンドはよりピアスの商品が多く表示される。さらにその次はサクランボのピアスをクリックすると、レコメンドの表示はほぼピアスで占められるようになる。

このように、3~4回の商品クリックからAIがユーザーの欲しい物を理解し、表示されるレコメンドの内容がリアルタイムかつ動的に、どんどん最適な商品に近づいていく仕組みを実現している。

このレコメンドのポイントは、「ユーザーに応じた導線のダイナミックな構築にある」と園田氏は話す。

商品の特徴の「タグ」を使ったレコメンドはよくありますが、はたしてそれでダイナミックなレコメンドはできるでしょうか? 「キリン」というタグを用意しているECサイトは珍しいでしょうし、仮に「キリン」のタグを用意している場合には、キリン関連の商品以外は全く出てこなくなってしまいます。ピアスの例のように、「なんとなくテイストの似たかわいいピアス」は、レコメンドから除外されることになります。

また、顧客の年齢や性別など属性の掛け合わせでターゲティングをする手法では、「キリンのピアスが好きなセグメント」を導き出すことは非常に困難です。「40代男性ならガンダムが好きかもしれない」という大雑把なターゲティングはできたとしても、当然ながら全ての40代男性がガンダム好きとは限らない。ユーザーが今求めているものに応じた導線を作っていくことが大切なのです。(園田氏)

個人個人の好みやニーズを予測する「協調フィルタリング」

協調フィルタリングとは、顧客の行動を分析して、そこに隠された人と物の関係性から、個人個人が何を好み、何を求めているのかを予測するアルゴリズムだ。

たとえば、マーケティングの世界では「購買分析をすると、スーパーではおむつとビールが一緒に買われているケースが多いから、同じ場所でおむつとビールを売ろう」といった話がよく聞かれるが、この「おむつとビール」のような隠れた関係を、高精度に探し出しているのが、協調フィルタリングのアルゴリズムである。

同社は、この協調フィルタリングのアルゴリズムを独自開発し、「行動相関レコメンド」「特徴量レコメンド」「フィルタリング」など多数提供している。その結果、カスタマージャーニーに合わせた最適なレコメンドアルゴリズムの適用ができているという。

多様なニーズに対応するレコメンドアルゴリズム群
多様なニーズに対応するレコメンドアルゴリズム群

たとえば、サイトへの初回訪問者に対しては、リアルタイムの閲覧傾向分析から何度もクリックもして商品を探し回る必要のないスマートな導線を作り出したり、商品詳細ページを閲覧しているユーザーには、比較検討ができるジャンル縛りの商品や組み合わせ提案になる別ジャンル商品を表示したりすることもできる。また、カートページでは合わせ買いのしやすい低価格製品を提案するなど、サイト内でのユーザーの目的に応じて、一番買ってもらえそうな物を優先的に表示すことができるのだ。

商品検索中や商品詳細ページの閲覧中、さらにはカートページに進んだときなど、その時々で最適なレコメンドが可能
商品検索中や商品詳細ページの閲覧中、さらにはカートページに進んだときなど、その時々で最適なレコメンドが可能

メルマガに個人に最適なレコメンドを挿入する「レコガゾウ」

アイジェント・レコメンダーのオプションサービスとして提供されるアイジェント・レコガゾウでは、メールやLINEなどのメッセージの本文中に各顧客に合ったレコメンドを表示できる。

HTMLメールの中に専用のタグを挿入しておくと、顧客がそのメールを開いたときに、タグからレコメンドサーバーに「その顧客向けの商品画像をダウンロードする」というコマンドが出される。これにより、一斉送信したメルマガであっても、1人ひとりに内容の異なるレコメンドアイテムがメールに表示される仕組みだ。

一斉送信のメルマガでも、一人一人に最適なレコメンドアイテムが表示できる
一斉送信のメルマガでも、1人ひとりに最適なレコメンドアイテムが表示できる

従来のレコメンドメールは、送り先に合わせて事前にコンテンツを作り分ける必要があった。しかし、アイジェント・レコガゾウを用いれば、専用タグを入れ込むだけでそれぞれの顧客におすすめする商品をAIが自動で選んで表示するため、導入企業のメルマガ担当者の工数削減にも大きく貢献できる。

実際に、レコガゾウを導入した大手アパレル通販サイトでは、メール経由の売り上げが300%、メールのクリック率が125%向上した。これまで、セール情報や新着商品を万人に送って宣伝するだけだったメールを、パーソナライズドメールにしたことで、その顧客向けのショールームのような機能も持つようになったと分析している。

LTV向上のためのカスタマージャーニーに必要なレコメンドを網羅

ECサイトでのアイジェント・レコメンダーと、メールコミュニケーションツールのアイジェント・レコガゾウを組み合わせることによって、ユーザーが商品を認知した後の購買に至る各ステップで、個人のニーズに合わせたレコメンドを行い、「調査・検討、購入、利用・体験」というカスタマージャーニーのサイクルを一貫してカバーできるようになるという。

カスタマージャーニーの各フェーズで必要なレコメンドを網羅
カスタマージャーニーの各フェーズで必要なレコメンドを網羅

1人ひとりに合ったレコメンドで顧客の関心や信頼をつなぎ留め、カスタマージャーニーのサイクルをまわしていくことが重要です。パーソナライズされた商品提案がECサイトの回遊性強化と離脱率低減にも効果を発揮し、コンバージョン率にも直結することは明らかです。また、AIによる予測提案はお客様の“セレンディピティ(偶然の出会いや幸運な発見)”につながり、セッションあたりの売り上げ単価を向上させることもできます。

そして、購入いただいたお客様に、フォローメールを通じてパーソナライズしたメッセージを届けられれば、再訪率や再購入率を上げることにも寄与するでしょう。

パーソナライゼーション技術を用いた当社のレコメンドサービスで、LTVのアップサイクルをトータルに実現することができると考えています。(園田氏)

信頼できる「おすすめ」が顧客のLTVを上げる
信頼できる「おすすめ」が顧客のLTVを上げる

ECのレコメンド効果を、リアルの店舗でも活用する

園田氏は、「OMOの第一歩は、ECと店舗のお客様情報を統合管理すること」と述べる。ECと店舗で別々に管理されていた会員情報を統合することで、ECでも店舗でも同じような買い物体験ができるようにする取り組みこそOMO戦略に必要だからだ。

しかし、店舗の会員情報を管理・整理するため会員カードをアプリ化したものの、実態としては新製品やセールの情報をアプリのポップアップで送るだけという活用事例が散見され、従来のメールやDM告知との違いがあまりないように思われる。これでは、せっかく会員情報を統合しても、店舗ではポイントを貯める以外の動機づけが生まれにくい。

一般的なレコメンドエンジンは行動情報を取得できる範囲がECサイトの中だけに限られているため、店舗の行動情報を顧客ニーズの分析に生かすことができなかった。しかし、国内のほとんどのビジネスはEC化率が30%以下である現状を踏まえると、圧倒的に店舗のデータ量の方が多く、そのデータを活用できないのはもったいない。まして、店舗とECを区別せずに買い物をする消費者が増えているなかで、店舗のデータを一部でも統合できれば、店舗とEC双方のレコメンドの精度と顧客体験が向上すると考えられる。

POSデータを会員情報と連携し店舗顧客にレコメンド

この解決策として、シルバーエッグ・テクノロジーはアイジェント・レコメンダーの「POS連携オプション」を提供している。会員カードや会員アプリでユーザーIDが付与されたPOS購買履歴をバッチで収集し、オンラインとオフラインの購買履歴を統合させる仕組みだ。そのデータを分析することで、店舗利用顧客に対しても個別のレコメンドやパーソナライズド・マーケティングが可能となり、顧客体験をより向上させられるというソリューションだ。

POS連携オプションにより、店舗の購買履歴とECの行動情報を統合させた、よりパーソナライズなレコメンドが可能になる
POS連携オプションにより、店舗の購買履歴とECの行動情報を統合させた、よりパーソナライズなレコメンドが可能になる

仮に、EC顧客が15%、店舗会員顧客が30%、店舗非会員顧客が55%の企業で想定した場合、“OMOレコメンド”によって、最適なレコメンドを受けられる顧客の数は、15%から45%と、全体の半数近くにまで増加するというわけだ。

ECのみのレコメンドに比べ、提案できる顧客の数が大幅に増加する
ECのみのレコメンドに比べ、提案できる顧客の数が大幅に増加する

オンラインとオフラインの両方を伸ばすOMOレコメンド

POS連携オプションを活用したOMOレコメンドによって、顧客はオンラインとオフラインを問わず「良いものと出会える」体験が享受できるようになり、事業者にとってもチャネルの垣根を解消したブランド全体としてのF2転換率(新規顧客のうち2回目の購入につながった割合)の向上が期待できるようになる。

実例として、EC化率がさほど高くなかった大手アパレル企業において、店舗で購入した会員のサンクスメールにレコメンド商品を集中掲載したところ、ECサイトにアクセスする店舗顧客の数が既存のEC利用者数をはるかに上回るという成果が出たという。ECでの2回目利用が活性化していることが見て取れるだろう。ほかにも、アプリのプッシュ通知にレコメンドを掲載した大手アパレル企業では、その後、実店舗に来店した顧客の購買点数が1.5倍に向上するなど、高い成果が上がっている。

園田氏は最後に、「POS情報を連携させたレコメンドエンジンによって、OMOでの顧客体験を向上し、2回目の来店と長期的な関係構築が可能になります。オンライン・オフラインが対立するのではなく、アプリを介して両方を伸ばす戦略が実現できるわけです。コロナ禍からの回復期にある今、小売りビジネスを再び成長軌道に乗せるために、ぜひパーソナライゼーションとAIの力を試してみてください」と述べ、セッションを締めくくった。

[AD]
この記事が役に立ったらシェア!

ネットショップ担当者フォーラムを応援して支えてくださっている企業さま [各サービス/製品の紹介はこちらから]

[ゴールドスポンサー]
ecbeing.
[スポンサー]