朝比美帆[編集], 吉田 浩章[撮影] 3/31 8:00
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全国でセレクトショップ事業を展開するシップスは、実店舗の接客の強みを自社ECサイトでも実現しようと、パーソナライズ戦略を進めている。“心地良い顧客体験”を実現する施策のカギとなっているのがレコメンドだ。顧客の好みのほか、季節やトレンド、カスタマージャーニーなどのリアルタイム性を加味した精度の高いお薦め商品を1人ひとりに提供するためAIレコメンドサービスを導入。手間をかけることなく質の高い接客を実現、EC運営に欠かせない機能となっているという。

シップスの茅野充宏氏(販売促進部 デジタルマーケティング課)と、AIレコメンドを開発・提供するシルバーエッグ・テクノロジーの園田真悟氏(マーケティング部 シニアマネージャー)に、レコメンドの取り組みと今後の施策について話を聞いた。

50年の歴史と安心・安定感で顧客に選ばれるSHIPS

シップスは1975年の設立から、2025年で50年目を迎えた。ブランドコンセプトは「STYLISH STANDARD」。レーベルは「SHIPS」に加え、「SHIPS any」「SHIPS Colors(シップスカラーズ)」「quaranciel(カランシエル)」などを展開。2024年秋からは若年層向けの「City Ambient Products(シティアンビエントプロダクツ)」を開始するなど、幅広いレーベルを展開している。

現在の店舗数は全国で約80店舗。フランチャイズ店はなく、すべて直営店で運営していることが特長。茅野氏は「超大手アパレルに比べてレーベル数は多くないが、半世紀という歴史の長さや、安心感・安定感が特に評価されている」という。

「SHIPS」公式サイト
「SHIPS」公式サイト(https://www.shipsltd.co.jp/

現在のECサイトは30歳代から40歳代を中心に、50歳代まで幅広く利用されている。ターゲット層を広げるために始めた新レーベル「City Ambient Products」をきっかけに、20歳代といった若年層の利用も進んでいる。

2017年、自社ECサイトの自由度や機能を拡張するため、リニューアルを実施。顧客に求められるECサイトを作る上で、戦略の1つとなったのがパーソナライズだった。数あるアパレルECのなかで、トップランナーの1社として成長し続ける要因を茅野氏は次のように話す。

店舗でもECでも、お客さまができるだけ隔てなく買い物できるようにしたいという思いで改修を進めてきた。リニューアルの翌年にコーポレートサイトとECサイトを統合。それも、お客さまのニーズとずれた無駄な動きが出ていたことから改善を実施した。

このほか、ECサイトから予約できる「店舗取り置き・試着サービス」、店舗在庫がなくてもEC在庫があれば店舗で決済して後日、商品を自宅に配送する「店頭決済&EC配送機能」なども、すべてリストアップしてきたお客さまのニーズから始まっている。求められているものをしっかり実装してきたことが、成長の要因になっている。(茅野氏)

シップス 販売促進部 デジタルマーケティング課 茅野充宏氏
シップス 販売促進部 デジタルマーケティング課 茅野充宏氏

ECのパーソナライズ戦略が成功している要因の1つはレコメンド

パーソナライズされた接客を実現する施策の一環として、シルバーエッグ・テクノロジーが提供するAIを活用したレコメンドサービス「アイジェント・レコメンダー」を導入した。現在では多くのECカートシステム、パッケージにはレコメンド機能が標準搭載されており、ほかにもさまざまなレコメンドエンジンがある。なぜ「アイジェント・レコメンダー」を導入したのだろうか。

店舗での接客と同じように、お客さまごとにレコメンドされるものが変わるパーソナルな接客を実現したいと考えていた。シルバーエッグ・テクノロジーの「アイジェント・レコメンダー」は、お客さまごとに複数の相関からレコメンドできると知り、導入を決める上での一番大きなポイントになった。(茅野氏)

「アイジェント・レコメンダー」によるレコメンドのイメージ。SHIPSは消費者1人ひとりに適した商品を提案する
「アイジェント・レコメンダー」によるレコメンドのイメージ。SHIPSは消費者1人ひとりに適した商品を提案する

ECビジネスにおけるカスタマージャーニーは複雑で、トップページ、カテゴリー、商品詳細ページ、カート、決済など、それぞれのページで消費者のアクションが異なる。そのため、どこで何をレコメンドすべきかが変わってくる

シルバーエッグ・テクノロジーの「アイジェント・レコメンダー」は、複数の相関モデルによって予測精度を高めている。たとえば商品詳細ページでは類似する商品をレコメンドし、カートページではカゴに入れた商品と組み合わせられる商品をレコメンドするというように、さまざまな組み合わせでレコメンドできる独自の機能も持っている。シップスも導入以降、安定して成果を出し続けられているという。

「アイジェント・レコメンダー」は、サイト内でのユーザーの行動ステップごとに適した商品をレコメンドする
「アイジェント・レコメンダー」は、サイト内でのユーザーの行動ステップごとに適した商品をレコメンドする

シップスさんは試着サービスやスタッフコーディネート、動画コンテンツなどを積極的に取り入れており、レコメンド商品をクリックしたお客さまが、その商品を理解し、気に入るような導線が出来上がっている。

個人のニーズに応じて商品を提案し、また個人の欲求に応えるコンテンツやツールを取りそろえられているシップスさんは、まさにパーソナライズを中心にECを構築されている代表例。ただ機能性の高いレコメンドを実装するだけでなく、「レコメンドされたお客さまがどう体験するか」までを考えてサービスを提供できているところが、「SHIPS公式サイト」の強みになっていると思う。(園田氏)

シルバーエッグ・テクノロジー マーケティング部シニアマネージャー 園田真悟氏
シルバーエッグ・テクノロジー マーケティング部シニアマネージャー 園田真悟氏

レコメンドの効果は売り上げ作りだけにとどまらない

「SHIPS公式サイト」では、「アイジェント・レコメンダー」をトップページや商品詳細ページ、カートなどで活用しているほか、商品をカートに入れた際にポップアップでお薦め商品も表示するのにも活用している。ここでのクリック率が特に高く、有効だと実感しているという。シルバーエッグ・テクノロジーの調査では、レコメンド経由で購入した人の同時購買点数は1.3倍~1.5倍に増加するという結果が出ているという。

カートイン時にポップアップで確認とレコメンドを表示
カートイン時にポップアップで確認とレコメンドを表示

また、シップスはECサイト以外でもシルバーエッグ・テクノロジーのレコメンドサービスを活用している。そのシーンの1つが、店舗も含めた購入後のフォローメール。シルバーエッグ・テクノロジーの「レコガゾウ」を用いて、消費者1人ひとりに適したお薦め商品の画像をメールに掲載していることだ。「レコガゾウ」はメール1通ごとにお薦めアイテムの画像を表示させるサービスで、メールのコンテンツもパーソナライズさせることができる。

「レコガゾウ」の概要
「レコガゾウ」の概要

シップスは今後、「レコガゾウ」を購入後のフォローメールに限らず幅広く活用したいという。新着商品のメルマガなど、より配信ボリュームの大きいメールでも有効利用できると考えている。園田氏は、あらゆる顧客接点でのレコメンドの重要性について次のように話す。

レコメンドはサイト内で商品を見せるためだけのツールと思われているかもしれないが、タッチポイントを変えることで、お客さまにもう一度興味を持ってサイトに訪問してもらうなど、さまざまな効果をもたらしてくれる。「このページでこのレコメンドを出す」と限定するのではなく、メール、LINE、アプリなど、お客さまとのコミュニケーションの場で最適なレコメンドを表示すれば、来訪者数を増やしたり、F2転換率やリピート利用率を上げたりできる

ただ、「メールはメール用の、サイトはサイト用のレコメンドシステム」と分かれていると、お薦め商品がちぐはぐになって顧客体験が乱れてしまう。1つのAIエンジンを幅広いシーンで使うことがすごく重要。「アイジェント・レコメンダー」と「レコガゾウ」を組み合わせ、個々のお客さまに対して一貫性のあるコミュニケーションができているシップスさんは、私たちから見ても有効な使い方をしていると実感している。(園田氏)

レコメンドで“リアルタイム性”は重要。「いいね」で即時にお薦め商品が最適化する「ライクディスカバリー」

このほかシップスでは、レコメンドした画像の「ライク(いいね)」ボタンを押すと、それを軸にお薦め商品を切り替える「ライクディスカバリー(Like Discovery)」という新機能の活用にも率先して取り組んでいる。スマホ経由の実績では、「ライク」ボタンを押した人の約20%がそのレコメンド商品をクリックして閲覧しに行っているという。「静的なレコメンド表示に比べ、10倍近い誘導効果がある」(茅野氏)と話す。

「ライクディスカバリー」は実装したばかりの新機能のため、顧客への浸透はこれからだ。しかし、現状の効果からも売り上げにつながる機能だと確信できることから、「ライク」を押せばもっと興味のある商品が出る旨をサイト上で表現し、利用を促していきたいという。

「ライクディスカバリー」のイメージ
「ライク」ボタンを押すとお薦め商品が切り替わる「ライクディスカバリー」のイメージ

この「ライクディスカバリー」でもわかるように、シルバーエッグ・テクノロジーは“リアルタイムなレコメンド”の実現を最大の特長としている。顧客の過去の購入履歴だけでなく、今見ているものなどからもレコメンドを最適化して表示できるからこそ、顧客の興味・関心を次々と引き出せるのだという。

「膨大な数のブランドや商品のなかから、少ない手間で顧客にとっての逸品を見つけ出す手助けとなることがレコメンドの目標の1つであり、その上でリアルタイム性は欠かせない」と園田氏は語る。

メルマガでレコメンドする場合、1か月前の購入データだけで予測するのではなく、この1か月間のほかのユーザーの購買行動もリアルタイムで積み上げていき、「このお客さまが“いま”求めるのはこれだろう」と予測してレコメンドを出している

こうした予測は、シップスさんのような季節性のある商品を展開している企業にとっては特に重要。春物を買ったお客さまが、次に夏物を買おうとした際、購入履歴だけで予測すると興味を引く商品の提案が難しくなるからだ。

ほかにも、昨今はSNSの投稿が特定商品の爆発的な売り上げにつながることがあるが、そういった即時の売り上げの変化も敏感に捉え、レコメンドに反映できるようにしている。リアルタイム性はアパレルをはじめ、多様な商材を取りそろえる様々なECビジネスで、重要な要素だと考えている。(園田氏)

シルバーエッグ・テクノロジーが開発・提供する新世代レコメンドエンジン「アイジェント・レコメンダー」とは

「アイジェント・レコメンダー」はSaaS型のAIレコメンドサービス。「“顧客本位の接客”を、AIの力で再現する」をコンセプトに、協調フィルタリングとさまざまな機械学習を組み合わせた最先端アルゴリズムで、顧客1人ひとりの行動をAIが分析。その分析結果を基に、リアルタイムに顧客が求めている商品を的確に予測し、訪問者へ商品をレコメンドする機能を持つ。

また、AIが顧客の好みを高精度で把握できるため、実店舗で熟練スタッフが接客するように、1to1レコメンドを実現できる点も強みだ。

常に変化する顧客のニーズをAIが分析し、リアルタイムで商品のレコメンドを行う
常に変化する顧客のニーズをAIが分析し、リアルタイムで商品のレコメンドを行う

「アイジェント・レコメンダー」の特長は、AIシステムの設定やチューニングをシルバーエッグ・テクノロジーが行うため、導入企業が手を動かす必要がないこと。「効果を出したい」「ページごとにレコメンドの内容を変更したい」といった導入企業の要望にも、シルバーエッグ・テクノロジーが対応するため、導入企業の運用工数・負荷軽減を実現する。

手間をかけず+大きな負荷なくレコメンドを運用、シルバーエッグの専門家がテストと実装を徹底サポート

シルバーエッグ・テクノロジーのレコメンドサービスはAIがレコメンド商品を自動選定するため、基本的には導入企業が手を加える必要はない。つまり大きな運用負荷がかからない。さまざまな業務を抱える担当者にとって、運用負荷が増えることなく売上増、CVRアップにつながる可能性を高めることができるのも大きな魅力だ。

相関モデルのチューニングについても、定期的にシルバーエッグ・テクノロジーの専門コンサルタントがA/Bテストの提案と実装を行い、結果の良かった方に設定を寄せていくようにしている。導入企業側は成果のレポートを見るだけで、自社で特別な設定は必要ない。実際、シップスでも運用工数や人手を増やすことなく、サイトの成長に合わせてレコメンドも成長させられているという。

シップス側の工数は一切変わらずに運用できているので、とても助かっている。成果を維持・向上し続けるためには継続してテストしていくことが重要だと思うが、テストの提案や実装も含めて安心してサポートを受けられている

当然ながら、導入した当初はシルバーエッグ・テクノロジーさんと一緒にチューニングしたりする時間は多少必要だったが、長く続けるほどシップス側の手間が減っていき、なおかつ安定的にレコメンド経由の売り上げが作れるようになった。長くサービスを利用しているのも、投資対効果の高い状態が続いているからだ。(茅野氏)

投資対効果が高い理由を、園田氏は次のように説明する。

シルバーエッグ・テクノロジーのレコメンドエンジンは、AIと人間のコンサルタントの二人三脚で、ビジネスの成長やトレンドの変化に対応しながらレコメンドの品質を向上させていく。結果的にトータルで見ると高い精度、成果、TCO(Total Cost of Ownership)を維持できるシステムとなっている。(園田氏)

レコメンドは「ニーズ予測AI」。他のツールとの組み合わせでマーケティング成果を底上げ

ECサイトのリニューアル以降、パーソナライズ戦略を進めてきたシップス。これまでも、消費者がお気に入り登録をしている店舗でイベントを開催する際にはメルマガを送るなど、レコメンド以外でもMA(マーケティングオートメーション)ツールを活用してパーソナライズを推進してきた。現在はLINE活用にも力を入れており、顧客が「自分だけのための情報が来ている」と感じられる体験作りの一機能として、レコメンドもますます重視していきたいという。

シルバーエッグ・テクノロジーのAIレコメンドサービスは、言い換えれば「ニーズ予測AI」であり、各種ツールやマーケティング施策と組み合わせたりすることで、成果を底上げする横断的なAIシステムだと言える。シップスの今後のレコメンドの活用に、園田氏も大きな期待を寄せている。

「コンテンツマーケティングはどこまでマネタイズの効果があるのかわからない」と感じている企業は多いと思う。スタッフコーディネートやブログを導入したのに、売上につなげることができていないのではという声はよく聞く。そういったコンテンツにレコメンドによる導線を付けることで、個々のコンテンツが生み出すバリューを上げることができると考えている。シップスさんとは今後も一緒に新たな取り組みを展開していきたい。(園田氏)

シップスも「店舗の接客はシップスが持ち続けていたい強みの1つ。接客の強みをECサイトで実現する上で、AIレコメンドは必須。今後もシルバーエッグ・テクノロジーのサービスを継続利用していく」(茅野氏)としている。加えて、「ライクディスカバリー」のような画期的な新機能の追加に期待を寄せており、積極的に導入して挑戦を続けていきたいという。

パートナー企業の開拓とアルゴリズムの進化をめざす

シルバーエッグ・テクノロジーでは今後、大きく2つのポイントでさらなる発展をめざしていく。1つはサポートサービスの拡充。現時点でも効果レビューとABテストを通じた改善提案を提供しているが、AIが収集したデータの分析と活用に対する期待は高い。今後、データアナリストによる高度な分析や、コンバージョンや併売率向上など売上課題に直結する施策の提案ができる体制を確立していく

もう1つはアルゴリズムそのものの進化。昨今はあらゆる分野において、自社データの活用とAIの導入が注目されているが、「ニーズ予測AI」として多様な業種・業界で実績を積んでいるアイジェント・レコメンダーも、より多様な課題解決に寄与できるようになると考えている。たとえば、企業が持つユーザー情報や店舗情報などに、商圏や天候など幅広い情報を組み合わせることによって、より一層高い精度で安定的な成果が出せるレコメンドが実現する可能性は十分にあるという。

すでに海外の音楽ストリーミングサービスなどでは、曲の調子をディープラーニングで分析し、それを行動情報と組み合わせることでレコメンドする事例も出ている。無論、ただ分析すれば成果が出るというものではないが、そういった技術の蓄積は進んでいる。これからECの領域でも一般化していくのではないだろうか。

生成AIにも注目が集まっているが、「生成」はコミュニケーションに向いている技術であり、レコメンドの「予測」とは用途が違うかもしれない。しかし、たとえば生成AIを活用したチャットのコミュニケーションと「予測」を組み合わせたAIエージェントという形で、新しいサービスの開発も将来的には実現できると考える。予測技術の使い道を広げていくことが当社の提供していくべき価値であり、レコメンドのより良い未来につながっていくと捉えている。(園田氏)

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