1日の出荷量は1万件超! コスメ・サプリのメーカー系単品通販を支える物流の現場に潜入
今回訪れたスクロール360は、親会社であるスクロールの通販物流を長く手がけ、1997年に楽天がスタートすると「売上は伸びたけど出荷がうまくいかない」というネットショップからの相談を受けるようになり、通販物流代行を事業としてスタートさせました。要望に応え続けるうちに取扱商材が増え、いまやクライアントは約100社。1日の出荷件数は約3万5,000件。年間流通総額はおよそ750億円! さてさて、どんな秘密が隠されているのでしょうか?写真◎吉田 浩章
最初に案内していただいたのは、今年2月に竣工したばかりの「コスメティクス・サプリメント通販専用ロジスティクスセンター」(以下、コスメ・サプリ専用倉庫)です。場所は静岡県浜松市。ちょうど東京と大阪の中間くらいに位置していて、物流の拠点としても便利な場所なのです。
「コスメとサプリメントは、弊社の出荷量のおよそ半分を占めています。今回コスメ・サプリ専用の物流センターを作ったのは、専用の建物で作業品質と衛生管理を担保しながら出荷を効率良く行おうという目的です。建物に加えてマテリアルハンドリング(編集部注:物流業務におけるあらゆる作業を効率的に行うための技術や手法)も大がかりに導入しようということになりました。
弊社の主なクライアントは、メーカー系単品通販の企業です。単品通販の特徴はワンロットの入荷量が非常に多いこと。トラックいっぱいの化粧水、本数にして2万本〜3万本が入荷するなんてこともあります。ですから大量に保管できるスペースが必要になります。
今回は保管、ピッキング、その後の検品梱包、運送会社への出荷渡し、それぞれをゾーニングして、流れ作業できるように設計しました。
また、単品通販は販促によって出荷量がずいぶん変わります。いつもは1日数千件のクライアントが、全国紙に広告を入れたり、テレビCMが放映されたりすると注文が急増します。加えて定期のお客さまの注文もあるので、出荷量が一気に1万件を超えることもあります。もちろん事前にある程度の出荷予測はいただいていますが、まずはその出荷量の波動を吸収しなければなりません。弊社の作業者は約200名ですが、隣接するスクロール ロジスティクスセンター浜松西は約600名の作業者を抱えています。出荷過多になったときは人を借りて作業にあたっています」(栗林さん)
単品通販はスケールが大きいんですね! 人員確保が大変そうです。グループ会社同士のネットワークが不可欠なんですね。
2,000パレットの保管を実現した移動ラック
ここは保管エリア。各メーカーから送られてきた商品を保管する場所です。ここの目玉は「移動ラック」。普通のラックだとフォークリフトが動くスペースを空けておかなければなりませんが、ラックごと動く移動ラックを導入したことで、約2,000パレット分、従来のおよそ2倍の保管量を確保することができました。柔軟性と正確さを追求した梱包・出荷エリア
次に着いたのは商品のピックアップと梱包をするエリア。ちょっと天井が低めです。梱包と出荷に特化しているので、保管エリアのように天井を高くする必要がないため、あえて低くしているそうです。他にはどんな工夫をしたのでしょうか?
「今まではクライアントごとに決まった場所で、その商材に特化した作業者が作業し、その日の出荷が終わったらそのエリアは使わない、という使い方でしたが、新しいセンターではすべてのクライアントの出荷場を共用することにしました。クライアントA社の出荷量が増えたら、それまで2レーンしか使ってなかったのを10レーンに増やし、今までB社の出荷をやっていた作業員さんに今日はA社をやってもうというように、柔軟に対応できる設計にしました。あとは、商品の間違いがないようにWMS(Warehouse Management System・倉庫管理システム)を改変していて、商品が間違っていたり不足があったりした場合は、送り状が出ない仕組みになっています」(栗林さん)
魚眼レンズで見守る管理スペース
続いて案内されたのはパソコンのモニターが並ぶ部屋。ここは倉庫全体をモニターで見渡せる管理スペースなのです。
魚眼レンズの画像がたくさん並んでいます! 倉庫内に設置されたカメラで360度の映像を録画し、1か月半保管しているそうです。平面しか撮れない普通のカメラより、少ない台数で広い範囲をカバーできます。それぞれ拡大したり、平面に展開したりも自由自在! でもなんでこんな大がかりシステムを?
「梱包ミスが発生しない仕組みは作業現場にできているのですが、それでも商品やクーポンが入っていなかったという連絡が来ることがあります。これまではちゃんと入れたことを証明するすべがありませんでした。でもこのシステムを導入すれば、ピッキングした時間にさかのぼって、ちゃんと入れたことを確認できます。作業員を監視するわけではなく、作業員を守るためのシステムなんです」(栗林さん)
システムで作業の進ちょくを見える化
続いては進ちょく管理のシステム。1つの画面に1つのクライアントを表示して、入荷、ピッキング、検品など、進み具合がわかるようになっています。
今日の出荷に間に合うか、問題がなければ晴れマーク。少々雲行きが悪ければ曇りマークといったように、作業がだいたい何時頃終わるのか、予測値も表示されます。作業者についても、誰がどのクライアントのどんな作業をしているかがわかるので、「そっちは余裕があるからこっちを手伝って!」なんて時にも助かります。
また、倉庫内だけでなく、拠点間の情報共有も行っています。スクロール360には、ここや委託先を含めて全国に6か所の配送センターがありますが、このシステムで他のセンターの様子が一目瞭然。例えば東京本店にから出荷状況をリアルタイムにチェックすることも可能です。
スクロール360のコスメ・サプリ専用倉庫の見学はここまで。
ほかにも、二酸化炭素濃度が上がると作業効率が下がるため、空調に気を配っていたり、テンポ良く作業してもらうために、テンポが一定のBGMを流す計画があったり、「特定のお客さまに特定のチラシを同封したい」というクライアントのために、チラシを自動投入する機械も購入済みだったりと、栗林さんの物流センター最適化計画はまだまだ続きます。
動画でもレポートしていますので、こちらもご覧ください!
スクロール360の見学ツアーもまだまだ続きます。後編の「アパレル・雑貨倉庫&本社編」もごらんください!