フェアトレードってこんなに可愛いって知ってましたか?
「フェアトレード」ってご存じですか? 途上国の原材料や製品を生産者から公正な値段で継続的に買い取る貿易のことです。ピープル・ツリーさんは1993年から、チョコレートやコーヒーなどの食品、衣類やアクセサリーなどのアパレルや生活雑貨の販売を通して、フェアトレードの普及に取り組んでいます。さてさて、どんな商品と出会えるのでしょうか? 写真◎吉田 浩章
突然ですが、エシカルファッションショーをご覧ください!
「フェアトレードの服」と聞くと「ファッションとしてはちょっと…」というイメージを持っている方もいるかもしれません。でもちょっと見てください!
次々と可愛いお洋服を着せていただいて、テンションが上がりまくってしまった私は、撮影が終わるころには酸欠気味でした(笑)
安くて気軽なファストファッション。その裏側にあるもの
ところで、ピープル・ツリーのフェアトレードってどういうものなのでしょうか? フェアトレードカンパニーの広報担当の鈴木 啓美さんにお話を伺いました。
「大量生産されている商品の生産現場の中には、生産者が正当な対価を貰えず、苦しい状況の中で働いていることがあります。
例えばインドではアクセサリー作りが盛んですが、手が小さな子どもが制作者として重宝されることがあります。ちゃんと学校に行きながら手伝っているなら良いのですが、現実には学校に通えず、大人の3分の1くらいの安い賃金で働かされている子どもたちがいます。そういう子どもたちは文字が読めず、計算もできないまま大人になってしまいます。手が大きくなって細かい作業ができなくなって解雇されてしまっても、ほかの仕事に就けない。それでは貧困のサイクルから抜け出せません。
私たちはフェアトレードを通して、生産者がきちんと人間らしい生活を送れるよう、援助活動をしています。具体的には生産者への仕事の機会の提供、公正な対価の支払い、児童労働や強制労働の排除といった、WFTO(世界フェアトレード機関:World Fair Trade Organization)の『10の指針』に沿った活動を行っています。
例えば、仕事の機会の提供ということで言うと、機械での大量生産だと、スイッチを入れる人がいれば良いだけになってしまうので、人手ってあんまり必要ないですよね。私たちは人の手でしかできない刺繍、編み物などの手仕事の製品を継続的に依頼することで、たくさんの人たちに仕事の機会を持ってもらう活動をしています」(鈴木さん)
最近はびっくりするほど安い値段で、可愛い洋服やアクセサリーが手に入ります。でもその裏側で、つらい目に遭っている人たちがいるとしたら……。うすうす知っていながら見ないようにしていた現実を突きつけられた気がして、ちょっとショックです。
ファッション文化がまったく異なる国での服作り
とはいえ、やっぱり「安くて良いものが欲しい」というのが消費者の本音ですよね。
「だからデザインが大切なんです。洋服はバングラデシュ製とインド製が中心なんですが、そもそも日本と現地とはファッションの感覚がまったく違います。彼らが日常的に着ている服とは違う服を作ってもらっているので、分からなくて当然なんですが、デザインの『ここの1センチが大事なんです!』と書類に書いても伝わらないんです。どうしてこのサイズ感が必要なのか、どうしてこれじゃ売れないのかを、現地の人と直接のコミュニケーションを重ねて理解してもらうことは大事な仕事です」(鈴木さん)
「現地で作れる」ことと「日本で売れる」こと。両立するのは大変そうです。生産部門の人たちが現地に行くのはもちろん、逆に現地の生産者団体のリーダーを日本に来てもらい、「日本ってこうなんだ」と、感覚をつかんでもらうことも行っているそうです。
「ファストファッションのように商品を早く入れ替えることはできないんです。手仕事が中心なので、商品の企画から完成までにとても時間がかかります。だいたい2年先の話をしなきゃいけないんですよね。出来上がった製品を運ぶのにも、できるだけ環境に負荷がかからない方法でということで、船便にしたりするので輸送にも時間がかかります。だから、流行と関係なくベーシックに着られる服が中心になりますが、そうは言っても2年先の気分をキャッチできるように、デザインチームががんばっています」(鈴木さん)
理想は「気に入ったから買った。そしたらフェアトレードだった」。
ピープル・ツリーではチョコレートが一番人気ですが「美味しいから買っていたらフェアトレードだった」というお客さまが多いそうです。鈴木さんにとってもそれは理想的なかたち。
「『良いものだから買ってください』とか『フェアトレードだから買ってください』とか言っても、1回だったら買ってくれるかもしれない。でも、どんなものでも気に入らなかったりすぐダメになってしまったりしたら、2回目はないですよね。それではサステイナブルではない。やっぱり、自分が好きだからフェアトレードのコーヒーを飲む、気に入ったからフェアトレードのチョコレートを食べるってならないと。『自分が好きなものを楽しくお買い物して、その先にいる人たちを支援できたら、一石二鳥だな』っていう、シンプルな気持ちで、買い物を楽しむ人たちが増えてくれたら嬉しいなと思います」(鈴木さん)
リサイクルサリーからウエディングドレスまで。ピープル・ツリーの商品をご紹介
最後に店内を見せていただきました。
“世界一のブランド国”とも言われる、豊かな社会で暮らすことができる私たちは、着るものも、食べるものも、住む場所も自分で選択して生きていくことができます。
選ばなければ職があり、働けば最低賃金が保証される日本では「なんとか食いつないで生きる」というハードルは、ほとんどの場合クリアできます。
でも、生まれた場所が違うだけで、子どもの頃から毎日働かなくてはならなかったり、女性は家事をこなす機械のように扱われたり、身を売って生活をするしかなかったり……。そんな人たちが世界中にたくさんいるのだということを改めて学びました。
もし逆の立場で、そんな生活を強いられる環境に生まれていたら、この日本という国は自分の目にどんな風に映るのだろう?
私たち日本人の多くは「自分の人生をどう生きるか」「どんな仕事をするか」という課題を抱えているけれど、そのほとんどは恵まれた生活水準の高さの上にある悩みなのだと、再認識しなければいけないような気がします。
誰かに必要とされたり、人の役に立てたりすること。そして、人に喜んでもらえた数だけ、自分も対価が得られるという、希望が持てる公平な世の中であってほしい。たとえどんな場所に生まれたとしても。
たくさんの人を幸せにできるフェアトレードの精神が、1人でも多くの人の日常に届きますように。
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