最新の米国EC事例から読み解く日本のECの未来

なぜ米国アマゾンは無人機ドローンを飛ばすのか? 米国宅配事情から分かる物流の重要性

米国アマゾンが取り組む無人飛行機による商品配送といった取り組み、米国の宅配事情を踏まえ、自社で物流をコントロールする重要性を取り上げる

角井 亮一

2014年6月24日 10:55

2011年からニューヨークなどに宅配ロッカー「Amazon Locker」を設置している米国アマゾン。今度は無人機「ドローン」を飛ばして宅配をしようとしていることはご存知ですよね?(無人機「ドローン」についてはこちらの記事を参照

なぜ、米国アマゾンこのようなことに取り組んでいるのでしょうか? それは、米国アマゾンを取り巻く米国宅配業界の状況がそうさせているのです。

私は今年6月、米国の流通業界を視察するツアーの一環で、世界最大級のECイベントに3年連続で参加。また、米国企業および実店舗など50以上を訪問してきました。そうしたことと、米国宅配業界を取り巻く環境を踏まえ、米国アマゾンが今後取り組むと考えられる配送部門の戦略などについて今回は説明します。

UPSの宅配市場独占で、アマゾンは宅配の自社コントロールに乗り出すことに

アマゾンがECを開始した当時のECサイトの画面

米国アマゾンが最初に立ち上げたECサイトのインターフェース

アメリカで、東海岸から西海岸に物を配送するためにかかる時間は、通常宅配で7日程度。飛行機を使えば翌日には到着しますが、配送料が高い。そのため陸送を使うのが一般的です。

日本では馴染みのある時間帯指定ですが、実は米国にはありません。そのため、日本では指定した時間枠で2時間程度待てば商品が届けられますが、米国では丸1日待たなければなりません。

その宅配を取り巻く市場環境を説明すると、私の感覚ですが、BtoCの宅配市場はユナイテッド・パーセル・サービス(UPS)が9割近いシェアを握っている状況です。UPSは日本で例えるとヤマト運輸のような企業で、大手のFedExは佐川急便です。

UPSはBtoCで9割のシェアを持っているためほぼ独占状態。これだけのシェアを握っているので、配送料金の値上げが簡単に行える立場にあります。

そのため、アマゾンやeBayをなどの通販企業にとって、配送料金を抑えることができないことから、自社の収益がUPSに左右されることになるのです。別の観点から見ると、宅配に関する部分が収益のボトルネックになっているということ。収益を左右する大事な部分をUPSに握られているのです

そのため、アマゾンはUPSを利用しない配送手段を模索し続けているのです。2011年から始まったアマゾンロッカーや地場宅配業者の活用、物流センターの多拠点化などは、すべて自社で宅配をコントロールするためなのです。アマゾンは顧客中心主義なので、顧客視点ということも大きいのですが、私の考えも的を外していません。

今後5年度商用ドローンが7500機も飛ぶ米国、アマゾンは自社トラックでの配送も

これから米国アマゾンは宅配部分をどのようにコントロールしていくのでしょうか?

昨年、日本でも報道されたドローンについて、国内の多くの人が「夢物語」と捉えているでしょう。しかし、米国では今後5年で商用のドローンが7500機も飛ぶと言われています。

米国で報道されているニュースの論調では、アメリカの運輸省の下部機関で、航空輸送の安全維持を担当する連邦航空局「FAA」(Federal Aviation Administration)は、無人のドローンが旅客機などの有人飛行機と「共存できる」法律を2015年までに作ろうとしています。

また、オーストラリアでは、すでにドローンの使用を許可された企業があり、すでに飛んでいるという現状があります。間違いなく、2015年には、アマゾンプライムエア(Amazon Prime Air)という名のドローンが飛ぶことになり、米国ではドローンによる商品配送が行われるようになるでしょう。

加えて、自社の車両で、アマゾンのフルフィルメントセンターから各家庭に商品を届けることも米国アマゾンは将来的な展望として考えているようです

アマゾンフレッシュ(Amazon Fresh)をご存知でしょうか? 「アマゾン」のロゴがある緑色の小型トラックが、アマゾン・ドット・コムの生鮮食料品宅配サービスで、今は地域を限定して展開していますが、自社のトラックで直接商品を届けます。

実はその「アマゾンフレッシュ」を支える車両の横には、「Computer(コンピューター)」「Office Product(事務用品)」と記載されています。将来は生鮮食品だけでなく、他の商材も自社のトラックで配送するのかもしれません

日本のECや通販を行う企業も、米国同様、日本の宅配会社の寡占化が進めば、自社の収益を自分でコントロールすることができなくなります。そのことを踏まえると、いかに自社でコントロールできる配達手段を、単独もしくは共同で創り出すことの重要性を理解いただけるのではないでしょうか。


セミナー情報

このような話を含め、2014年7月2日に、米国で開かれた世界最大級のECカンファレンス「IRCE」やイー・ロジット主催の米国流通物流視察ツアーで得たことを報告するセミナーを開催します。リアルとネットの流通から俯瞰した現在の米国の状況と、そこから考える日本の未来を学んで下さい。

この記事のキーワード

この記事をシェアしてほしいタヌ!

人気記事トップ10

人気記事ランキングをもっと見る

企画広告も役立つ情報バッチリ! Sponsored

AI時代を勝ち抜くEC戦略。レガシーシステムから脱却し、「Shopify」で実現するPDCA高速化とイノベーション 2025年12月23日 7:00 「声のする方に、進化する。」会社全体最適を目標とするワークマンの「補完型EC」 が実践する「レビューマーケティング3.0」とは? 2025年12月17日 7:00 「所有から利用へ」の潮流をAIで勝ち抜く。事例で学ぶレンタル・リユースビジネスの成功法則とEC構築術 2025年12月16日 7:00 「サムソナイト」「グレゴリー」のEC改善事例。CVR改善+購入完了率が最大45%増の成果をあげたアプローチとは 2025年11月12日 7:00 スマホゲーム「モンスト」ファンがお得にアイテムを購入できる「モンストWebショップ」はなぜ「Amazon Pay」を選んだのか。導入効果+UI/UX向上に向けた取り組みを聞いた 2025年10月30日 7:00 アンドエスティが「3Dセキュア2.0」の超効率的運用に成功したワケ。オーソリ承認率大幅改善、売上アップにつながった不正対策アプローチとは? 2025年10月28日 7:00 EC業界で市場価値を最大化する――「全体を見渡せる人材」になるためのキャリア設計 2025年10月27日 7:00 転売ヤーが引き起こすEC市場の混乱に立ち向かう! Shopifyパートナー・フラッグシップが提案する最新対策 2025年9月29日 8:00 14か月で累計売上30億円超え。 韓国のネイルブランド「ohora」の急成長を支えたEC戦略とは 2025年9月22日 8:00 生成AI検索が変える消費者の購買行動。UGC活用でサイト流入を最大化する 2025年9月10日 8:00