角井 亮一 2014/6/26 11:00

「見ると聞くとは大違い」というのはよくあります。日本でも耳にするようになった「オムニチャネル」。このマーケティング手法については米国の方が進んでいると言われています。そこで当社が開催した6月の米国流通業界視察ツアーで、私自身が米国でオムニチャネルを経験してみました。

朝にECサイトで商品を注文、夕方には店舗で受け取れる

日本ではやっと実践段階に入ったオムニチャネルマーケティング。「さあ試してみるか!」と考え、ニューヨークに本部を置く百貨店メイシーズ(Macy’s)のECサービスを利用してみました。ラスベガスのホテルで朝6時にメイシーズのECサイトでタオルを注文。2時間の時差があるシカゴで、その当日の夕方に商品を受け取りに行きました。

ちなみに注文後のシステム上では、きちんと処理され、「受注完了メール」「商品受取り準備完了メール」が届きました。

あるショッピングセンターにテナントとして入っているメイシーズに到着した後、受取窓口を探索。なかなか見つからず、店員に聞きながら探し回ること15分。カウンターを見つけたものの店員がいないという事態でした。

ECサイトで注文した商品がメイシーズの店頭で受け取れるサービス

ECサイトで注文した商品をメイシーズの店頭で受け取れることができる

店員を捕まえ、商品について説明したものの商品が見つからず。上司が呼び出され、商品は見つかりましたが、引き渡し手続に関するシステム処理がうまくいかないというトラブルが発生しました。

その理由は、メイシーズでは本人確認のIDカード(運転免許証)の番号を入力しなければ商品の受け渡しができないシステムになっていたのでした。私は本人確認のIDカードを持っていなかったため、操作していた上司では対応できず。その上のスーパーバイザーに電話をして解決策を教えてもらい、やっと商品を受け取ることができました。店舗に訪問して約1時間後のことです。

ウォルマートの小型店舗の「WALMART Neighborhood Market(ウォルマートネイバーフッドマーケット)」や「WALMART EXPRESS」の売り上げの内、35%がネット経由だと言われていますそれだけ、店頭受取は浸透していると思います。また、店頭受取が可能なチェーン店も、さらにずいぶんと増えていました。

米国のオムニチャネルで感じたのは「店員教育が最重要」

オムニチャネルは店員の教育が一番の難関だと考えています店舗には何人もの店員がいますが、店頭引き取りに関する手続きの教育を受けても、その仕組みを使って商品を受け取りに来る消費者がいなければ、スタッフはすぐに忘れてしまいます

当社では2000年にコンビニ受け取りを行う企業に出資しましたが、その時も店員の教育がネックでした。例えば、1万店舗のコンビニエンスストアー。1店舗あたり20〜30人ものスタッフがいるので、全店で店頭受け取りサービスを始めるには20~30万人の店員に対して教育を施さなければなりません。

しかも、当初はコンビニ受け取りの認知度が低く、滅多にそれを利用する顧客がいないため、来店は少ない。それでは折角記憶した手続きも忘れてしまう。それが普通の人です。そのため、店員への教育が一番の難関となるのです。

実は、今年3月にもウォルマートエクスプレス(WALMART EXPRESS)でオムニチャネル体験をしました。その時も、「うーん」と考えさせられる店員の対応でした。

日本では時間帯指定があるため、店頭受取のニーズが少ないと思われますが、忙しい人が多い都心部ではニーズが高いようです。ヨドバシカメラが店頭受取サービスの24時間化を進めているように、利用者が増えてきています。またカメラのキタムラも4割が店頭受取を希望するそうです。

日本の小売チェーンがシステムおよび店員教育を万全にし、店頭受取サービスを宣伝していくと、今後さらに利用者が増えていくことでしょう。


セミナー情報

このような話を含め、2014年7月2日に、米国で開かれた世界最大級のECカンファレンス「IRCE」やイー・ロジット主催の米国流通物流視察ツアーで得たことを報告するセミナーを開催します。リアルとネットの流通から俯瞰した現在の米国の状況と、そこから考える日本の未来を学んで下さい。

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