Digital Commerce 360 2017/8/10 7:00

商品を購入した消費者とより良い関係を築くのに最適なタイミングは、ブランドに対する興味・関心が最も高い時、つまり商品購入後すぐの場合が多いと言われています。購入から配達までの期間を利用してファンを増やすのは、ネット通販事業者にとって最も重要な施策の1つなのです。

「購入」ボタンを押した直後は、ロイヤリティを高めるチャンス

買い物体験が多様化していくなか、消費者が抱く買い物への期待値はこれまで以上にわかりにくくなっています。利便性を重視するのはもちろん、特に日常的に利用する消費財に関しては、ブランドを気にしない消費者が増えています。

たとえば、Amazonグループのプライベートブランド「AmazonBasics(Amazonベーシック)」は、乾電池のオンライン売上の3分の1のシェアを占め、2015年比で93%も伸びています。

ただ、ハイエンドな商品については、消費者はよりパーソナルで、心地の良い買い物体験を求めています。

持続可能な社会をめざして活動するエシカルなファッションブランド「Reformation」は、オススメの洋服を利用者ごとにカスタマイズして表示。実店舗に設けている試着室ではタッチスクリーンなどのハイテク技術を取り入れるなどして、消費者の興味・関心を引きつけています。

従来の販売チャネルと異なり、ネット通販では消費者と顔を合わせる機会や、強力な関係性を築く機会は決して多くはありません。それは、オンライン小売事業者にとって大きな課題になる一方、別の方法で消費者のロイヤリティを高める、つまり新しい方法を生み出す機会にもなります。

特に、消費者が「購入」ボタンを押した直後は、ロイヤリティを高めことができる可能性が最も高いタイミングです。

伝統的な小売業では、消費者がお店を訪問し、商品購入後はすぐに買い物袋を提げてお店を出ていきます。ネット通販では、購入から商品が手元に届くまで、2~5日間の時間を要します。その間、早く商品を試したいという高い期待を胸に、消費者は商品の到着を待っています

この新しいマーケティング概念である「Moment of Truth」(真実の瞬間、編注:消費行動における重要な顧客接点)は、「購入直後」と言われており、この瞬間が新商品や自社ブランドのPR、注文した商品への期待を高める良い機会になるのです。

購入直後のタイミングを利用し、消費者のロイヤリティを高めることができる3つの方法をご紹介します。

期待値を高める

消費者とより良い関係を築くためのアプローチで最適なタイミングは、消費者がブランドに対してとても関心が高い時です。

最新の調査によると、91%の小売事業者が、購入後に消費者と関わりを持つことによってブランド認知が高まり、消費者の満足度やロイヤリティが高まると回答しています。

商品発送のお知らせメールを送る際、カスタマイズした内容を配信している小売事業者もいます。たとえば、ヨガ関連グッズを販売する「Lululemon」でヨガマットを購入すると、商品の手入れ方法、配送の追跡用リンク、スペシャリストとつながることができるライブチャット、ソーシャルメディアへのリンクが送られてきます。

LVMHモエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン傘下で化粧品などを販売する「Sephora(セフォラ)」の配送追跡ページには、オススメ商品の紹介、「pinterest(ピンタレスト)」に似た自社の写真投稿ページへのリンク、まばゆい色のメイクが施された画像が掲載されています。

このような細かい努力が消費者の満足度を高め、商品到着への期待を膨らませます

新商品への関心を高める

抜け目のない小売事業者達は、消費者が商品の到着を待つ期間を別の商品PRの為に賢く利用しています。90%の小売事業者が、購入後に消費者と関わりを持つことによって、ECサイトへの流入や売り上げにつながると回答しています。

購入後に消費者と関わりを持つことによって、ECサイトへの流入や売り上げにつながるか?
購入後に消費者と関わりを持つことによって、ECサイトへの流入や売り上げにつながるか?(画像は「Pathways to Loyalty and Post-Purchase Success」から編集部がキャプチャし、一部を日本語翻訳した)

たとえば、Amazonプライムでマフィンを注文すると、計量カップやお菓子作りの関連商品といった「オススメの割引商品」が表示されます。パーソナルなオススメ情報を表示させるには、機械学習アルゴリズムを利用するのが簡単で、利益を出しやすいでしょう。

マッキンゼー社によると、消費者がアマゾンで購入する商品の35%は、アルゴリズムをベースにした商品紹介に起因しているそうです。

プロフィールや購買データを活用すれば、消費者が何を必要としているのかを見極めることができます。

Target(ターゲット社)のモバイルクーポンアプリ「Cartwheel」は、過去の購買に基づいて商品をオススメします。ベビーフードを検索した人には、オムツやお尻拭きを紹介するのです。

しかしながら、現在、商品購入後に新商品や関連商品をオススメしている事業者は54%しかいません。比較的新しい方法ですが、消費者が別商品の提案を気に入り、最終的には多くの商品を購入しているというデータもあります

商品購入後の消費者に対して行っているアクションについて
商品購入後の消費者に対して行っているアクションについて(画像は「Pathways to Loyalty and Post-Purchase Success」から編集部がキャプチャし、一部を日本語翻訳した)

積極的に進捗を知らせる

消費者は効率の良い買い物を期待している為、時間がかかることを嫌がります。ですから、小売事業者は消費者のニーズを事前に予測し、行動することが大切です。

定期的に購入した商品の配送状況などを知らせることで、消費者に安心感を与えると同時に、自社にとっても良い影響を与えます。87%の小売事業者は、購入された商品の配送状況を購入者へ頻繁に知らせることで、購入者からのセンターへの問い合わせ電話が減ると答えています。

小売事業者の87%が、購入された商品の配送状況を頻繁に知らせることで、コンタクトセンターへの問い合わせ電話が減ると答えています。

積極的な情報提供でコンタクトセンターへの電話問い合わせは減るか?
積極的な情報提供でコンタクトセンターへの電話問い合わせは減るか?(画像は「Pathways to Loyalty and Post-Purchase Success」から編集部がキャプチャし、一部を日本語翻訳した)

返品状況や、購入者が選択した方法による商品配送予定時間を知らせたりすることはとても大切です。SMSやメール、Facebookメッセンジャーを使ってお知らせを送っている店もあります。

たとえば、化粧品などの「Urban Decay」は、購入したメイクアップ商品の配送状況のお知らせ方法を購入者に選んでもらう方法を採用しています。消費者は便利で使いやすいプラットフォームを選択し、商品の配送状況をテキストメッセージで受け取るのです。

◇◇◇

消費者のロイヤリティを獲得するのが難しい時代に突入しました。消費者の期待値は変わり、より簡単で、便利で、パーソナルな購入体験を求めています

実店舗からオンラインに買い物行動が移行する今、新しい方法でファンを増やす絶好の機会です。購入から配達までの期間を利用してファンを増やすのは、最も重要な方法の1つなのです。

この記事は今西由加さんが翻訳。世界最大級のEC専門メディア『Digital Commerce 360』(旧『Internet RETAILER』)の記事をネットショップ担当者フォーラムが、天井秀和さん白川久美さん中島郁さんの協力を得て、日本向けに編集したものです。

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