買い物体験の向上で重要性が高まるサイト内検索、EC事業者が知っておくべきこと
買い物体験の向上で重要性が高まるサイト内検索、EC事業者が知っておくべきこと
ECのサイト内検索で評価が高いNTTレゾナント。AI型ECサイト内検索ソリューション「goo Search Solution(グーサーチソリューション)」を通じて、「買いやすいECサイトづくり」「利便性の高いECサイトづくり」に貢献している。ユーザーがキーワード検索を利用した際により目的の商品を見つけやすくする新機能「キーワード置換検索」の開発など、買い物体験向上のための機能開発も強化している。スマートフォンの利用増加による最近の傾向、買い物体験の変化、新機能などについて松野繁雄氏(スマートナビゲーション事業本部 サービステクノロジー部門 セールスマーケティング シニアマネージャー)、北岡恵子氏(スマートナビゲーション事業部)に語りあってもらった。
コロナ禍で変わった消費行動、検索利用ユーザーはコンバージョンが高い
――ここ数年、スマートフォンで買い物をするユーザーの増加に伴い、サイト内検索の重要性が高まっています。
北岡恵子氏(以下、北岡氏):新型コロナウィルス感染症拡大によってECユーザーが増加したこと、スマホ利用者が増えたことがポイントにあげられます。これまでECサイトを使うユーザーはネットリテラシーがそこそこ高いユーザー層。コロナ禍をきっかけにリテラシーの低いユーザーまでECを使うようになりました。それに伴い、「適当なキーワードで商品を探す」「そもそもサイト内検索の使い方がわからない」といったユーザーが増えたと感じます。
スマホはPCと異なり、サイト内検索の使い方が変わります。PCは画面が広いため、特定ボタンをクリックすることで絞り込み検索の項目を確認したり、マウスを動かすことでクリックできたりします。一方、スマホは便利な反面、狭い画面内でいかに商品を見つけやすくしてあげるかという、ユーザビリティがとても求められると感じています。
スマホ利用者の検索体験の多くが「google」だと思うんです。その検索体験に慣れているため、ECサイトの検索でも、適当なキーワードで商品を探そうとするんですよね。1回の検索でほしい商品が検索結果に表示されなければ、そのサイトを離脱してしまう……。こんなユーザーも増えていると感じています。
松野繁雄氏(以下、松野氏):新型コロナウィルス感染症拡大によって、可処分時間の奪い合いが顕著になりましたよね。そのため、以前のように長くECサイト内に滞在して商品を探す・買い物をするというよりも、ほしい商品を瞬時に見つけて購入して、他のことをする――こんなユーザーが増えてきたと感じています。こうした状況を踏まえて、EC事業者が気を付けなければいけないのは、サイト内検索でほしい商品が表示されなければユーザーはECサイトを離脱する……つまり、次のECサイトに移動してしまうんですよね。だからこそ、ECサイト内検索によって、ユーザーが欲している情報を適切に表示するということが今まで以上に求められています。このことが、コロナ禍で起きた大きな消費者行動の変化だと感じています。
――ECに慣れたユーザー、不慣れなユーザーに対するEC事業者のアプローチも重要になりますね。
松野:あるEC事業者は、リピーターはサイトのことを熟知しているため新規ユーザー向けのサイト作りに注力していると伺いました。初めて自社ECサイトを利用するユーザーは、その時の検索体験、買い物体験が将来のリピート購入の有無に直結するため、“良いサイト”と感じてもらえるように細心の注意を払っているそうです。ECに不慣れなユーザー、つまりコロナ禍をきっかけにECを頻繁に使うようになったユーザーは、リアルでの接客体験を多く経験してきた人たち。実店舗で体験した接客をECサイト、サイト内検索に求めてくる。それが顕著になっているように感じます。
北岡:その影響もあるのか、私たちが以前からお伝えしていた「サイト内検索を使うユーザーはコンバージョン率が高い」という現象を、NTTレゾナントのクライアント企業も強く実感してきているようです。当然の考え方ではありますが、サイト内検索を使うユーザーは商品を探しているため、ほしい商品が見つかったら購入する割合が高いわけです。そのため、ユーザーに対してどのように検索を使ってもらえるようにするか、ということを提案しています。EC事業者さんもそのことを認識するようになりました。「どうやったらサイト内検索の利用数が増えますか」。こんな相談をいただくことが増えました。
――PC画面ではサイト右上に検索窓を置く企業が多かったですが、最近は左上や、スマホやアプリでは真ん中に置くケースが増えているように感じます。
北岡:検索ボックスは設置する場所でサイト内検索の利用状況は大きく変わりますから。設置する場所に加え、よく利用されている人気の絞り込み条件を検索内容に合わせて優先して表示する「タッチサジェスト」を設置するといった工夫は、検索体験の向上、およびコンバージョンアップにつながるはずです。
サイト内検索でもコンテンツを表示する企業ニーズが増加
――サイト内検索の重要性が増してきていますが、ここ数年でクライアントからの要望で変わってきたことはありますか。
松野:検索結果にコンテンツを表示しようとする企業が増えましたね。私の推測ですが、ユーザーのニーズが多様化しているので、その変化に対応するため企業側は検索結果へのコンテンツ表示を実現しようとしているのではないかと考えています。
「時間がないため早く買い物を済ませたい」という人が増えた一方、「じっくりコンテンツを見て、しっかり判断する」というニーズも拡大しています。実店舗に足を運んで商品を見て、触ってから購入を判断していたユーザーが、ECでも同様にじっくり意思決定に時間をかけるんです。そうしたニーズに加え、コンテンツ拡充による検索経由の流入・購入増というSEO対策のニーズもありますね。私の所感ですが、サイト内検索でコンテンツを表示させる取り組みは、ユーザーにとってはパーソナライズのように感じるのでは、と思っています。
北岡:オンライン接客、コーディネート、ライブコマースなどもコンテンツの一種ですよね。「goo Search Solution」は商品だけではなく、コンテンツまで検索結果に表示させることができます。確実に「じっくり時間をかけて商品を選びたい」というニーズが増えているので、お問い合わせを頂く中でもコンテンツ検索を導入したい、というお客様が増えましたね。
パーソナライズされていないことに不満を抱く消費者が出てくる可能性も
――サイト内検索でコンテンツを表示させる取り組みはユーザーにとってはパーソナライズになるというお話が出ました。パーソナライズニーズは高まっていますか?
松野:ここ最近、「カスタマーファースト」のEC事業者が増えてきたように感じます。消費者の購入の選択肢が増え、選ばれるECサイトにならなければリピートされない、といったことを感じる企業が増えてきたのではないでしょうか。それを裏返すと、消費者に良い買い物体験をしてもらう重要性に企業が気付いてきたんだと思います。カスタマーエクスペリエンスを向上させる施策の1つとして、パーソナライズに注目が集まっているのでしょう。
「goo Search Solution」はユーザーの購買履歴といった行動ログをAIが自己学習し、毎日自動で検索結果を最適化します。個人の属性や興味、趣味嗜好に合わせて、それぞれ最適な結果を表示することが可能です。消費者を無視できないと危機感を抱いたEC事業者が消費者に対して最適な検索結果を出したい――こんな風に考え方が変わってきたと実感しています。
コロナ禍になってサブスクリプションサービスを利用する消費者が増えました。そのため、パーソナライズされることに慣れた買い物客がECを利用するようになってきていることでしょう。そういう人からは「何でこのECサイトはパーソナライズされていないのか」と見られてしまう。パーソナライズされていないこと自体に不満を抱き、そのECサイトに訪れないということが起こり得るんじゃないかなと思っています。
北岡:ユーザーからすると、パーソナライズはもう「接客」に近いもののように感じているのではないでしょうか。洋服屋では、「何をお探しですか?」と店員が来店者に尋ね、消費者の興味・関心やスタイルなどから適した商品を提案します。来店者に適した商品を掲示しなければ、店舗スタッフの仕事としてはゼロ点。前回はA商品を購入したから、今回は「B商品はどうですか?」のようにケアすることが接客の役割のひとつ。こうした提案ができない店員に接客されると、購買意欲が削がれますよね。ECも実店舗の接客にどんどん近づいており、パーソナライズもそのひとつのサービスとして利用されてきているのでは、と感じています。
商品を見つけやすくする「キーワード置換機能」を開始
――ユーザーがキーワード検索を利用した際により目的の商品を見つけやすくする新機能「キーワード置換検索」について教えてください。
北岡:「キーワード置換機能」は、ECサイト内でユーザーがキーワード検索を利用した際、より目的の商品を見つけやすくするための機能です。キーワード検索では、カラー情報や「セール品」といった付加情報を商品名に追加して検索するケースがあります。しかし、通常のキーワード検索では商品説明文に該当キーワードを含んでいなければ、商品を検索結果に表示できません。
本機能は、キーワード検索の情報を自動で絞り込み条件の情報へ置換してくれます。たとえば、ユーザーが「かばん 赤」と検索した場合、「赤」という言葉を絞り込み条件のカラー情報に置換し検索します。その結果、商品説明に「赤」という言葉がなくても絞り込み条件の「赤」というカラー情報を加味して検索結果を表示します。カラー情報のほかにも、送料情報、セール情報などのキーワード置換が可能です。これにより、直感的にキーワード検索を行うユーザーへより要望に合った商品を表示することができます。
カテゴリを1つずつ選んで絞り込んでいくという検索方法は今でも主流だと思いますが、若い人はキーワードを直接検索ボックスに入力し、検索する人が多いようなんです。スマホの小さい画面で何かを検索しようとすると、操作が煩雑になってしまいますので、そのような課題を解決するために新機能を開発しました。
松野:単純なキーワードだけで検索すると探すことができないことも、絞り込みに置換することで、適切に情報を表示することができるため、ユーザーの検索の手間を大きく省くことができると思います。
北岡:ECサイトで多いキーワードは「セール」と「送料無料」。ただ、「送料無料」というキーワードが商品情報に入っていなければ検索結果に表示することができません。たとえば、「購入金額3000円以上で送料無料」の場合、絞り込み条件を3000円以上にすれば送料無料の商品が表示されます。あとは「送料無料」フラグがあればそれに置き換えることも可能ですね。
松野:この機能は物販サイト、求人サイトなどさまざまなサービスに対応できると感じています。物販などは、絞り込みをすればするほど、目的買いに対応できます。ユーザーは購入する商品を明確にイメージしていますから、その人に対して適した商品を表示させることができます。普通、検索ボックスにキーワードをたくさん入力するほど、商品はヒットしにくくなるんですよね。「goo Search Solution」は、検索ワードの表記ゆれ対策やサイト内検索・行動ログの分析などを、AI活用によってユーザー目線のECサイト内の検索精度アップと手動チューニングからの解放を実現しています。キーワード置換機能を使うことにより、検索の手間をかけることなくほしい商品を探し出せることができるようになります。複数キーワードを入力すればそれだけ搾り込むことになるので、確実にコンバージョンが上がるというイメージを持っています。