渡部 和章 2018/2/21 8:00
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アパレルセレクトショップのナノ・ユニバースは、2016年度のEC化率(全社売上高に占めるEC売上高の割合)が40%を超えるなど、EC事業へ積極投資している企業として注目されている。WEB戦略部・越智将平部長が、公式オンラインショップのサイト内検索エンジンを入れ替え、コンバージョン率(CVR)の大幅な改善に成功した事例、スマホEC時代を勝ち抜くための取り組み、今後のデジタル戦略などを語った。写真◎Lab

ナノ・ユニバースが取り組んだECサイト改善策

ナノ・ユニバースは全国に65店舗の実店舗を展開し、自社サイトのほかは「ZOZOTOWN」、「マガシーク」、「楽天市場」など合計8店舗のECサイトを運営している。

2005年のECサイト運営以来、EC売上高は右肩上がり。2013年からはITやECへ積極的に投資している。基幹システムを全面刷新した上で、2014年に実店舗とECの顧客IDを統合。さらに、店頭には公式アプリを立ち上げると会員の来店を検知するビーコンを設置するなど、ECと実店舗の連携にも力を注いでいる。

ここ数年、ナノ・ユニバースはITやECで積極的に先行投資を行い、失敗も繰り返しながら、EC事業を伸ばしてきた。全社売上高に占めるECの割合(EC化率)は40%を超えた。(越智部長)

WEB戦略部・越智将平部長
WEB戦略部・越智将平部長

「ゼロ件ヒット」をなくすため「goo Search Solution」を導入

EC事業に積極投資を続けるナノ・ユニバースが2017年に取り組み、大きな成果を得た施策の1つが、自社ECサイトのサイト内検索エンジンを入れ替えたこと。NTTレゾナントが提供している「goo Search Solution(グー・サーチ・ソリューション)」を2017年3月に導入した。

サイト内検索エンジンを入れ替えた理由の1つは、「フリーワード検索で使われるキーワードの『表記ゆれ』に対応するため」(越智部長)。

「表記ゆれ」とは、1つの意味の事象に対して、複数の単語が使われることを指す。たとえば、「ナノ・ユニバース」というブランド名は、カタカナ表記のほか、「nano universe」「NANO UNIVERSE」「nano unibarse(※スペル間違い)」「なのゆにばーす」といった単語のパターンが考えられる。

アパレルブランドは英語表記が多いため、フリーワード検索で間違ったスペルを入力するユーザーは少なくない。ナノ・ユニバースが従来使用していたサイト内検索エンジンは、こうした「表記ゆれ」に対応できていなかった。

そのため、「表記ゆれ」で来訪者が検索した商品は、実際のところはECサイトで販売していても、検索結果に表示されない「ゼロ件ヒット」が頻発していたという。

越智部長は、「ゼロ件ヒット」が表示される悪影響について、強い危機感を抱いていた。

「ゼロ件ヒット」が続くと、お客さまはECサイトから離脱してしまう。それ以上に問題なのは、品ぞろえが悪いサイトであると誤解されてしまう可能性があること。その結果、ブランドイメージに傷がつく。(越智部長)

ECサイトのCVRは85%向上

「goo Search Solution」は、膨大な単語の表記ゆれのパターンを蓄積したデータベースを持つ。NTTレゾナントが約20年間も運営しているポータルサイト「goo」で収集した検索履歴から、膨大な量の表記ゆれパターンを蓄積してきた。いわば、「表記ゆれの辞書」を持っているということだ。

また、企業が持つ検索ログを使い、「企業ごとに表記ゆれの辞書を作ることもできる」(NTTレゾナント スマートナビゲーション事業部の北岡恵子氏)。

ナノ・ユニバースは自社ECサイトに「goo Search Solution」を導入したことで、サイト内検索経由のCVRが導入前と比べて85%向上したという。

スマートナビゲーション事業部の北岡恵子氏
スマートナビゲーション事業部の北岡恵子氏

スマホサイトの検索性を改善する「タッチサジェスト」

ナノ・ユニバースはスマホサイトの検索の利便性改善にも注力している。スマホサイトのサイト内検索のユーザーインターフェースを改善するため、NTTレゾナントが開発したスマホ用の検索機能「タッチサジェスト」も導入した。

「タッチサジェスト」とは、ユーザーが入力した検索キーワードに応じて、絞り込み検索の条件を自動的に表示する機能。たとえば、検索窓に「トップス」と入力すると、「無地」「ホワイト」「コットン」「長袖」といった、関連性の高い絞り込み条件を検索窓の下に表示。ユーザーは表示された条件をタップするだけで絞り込み検索を行えるため、片手で操作でき、直感的に欲しい商品にたどり着ける

「タッチサジェスト」のイメージ
「タッチサジェスト」のイメージ

「タッチサジェスト」を導入した理由について越智部長は、「通勤電車の中で、つり革につかまっているときなど、片手でスマホを操作していても使いやすい検索機能にした」と説明する。

ナノ・ユニバースのEC売上高の8割以上はスマホ経由。画面が小さく、片手で操作することが多いスマホサイトでは、サイト内検索の使い勝手の良し悪しがCVRを大きく左右する。実際、ナノ・ユニバースは、「パソコンに比べて、スマホを使ったサイト内検索からの離脱率が高いことが悩みの種だった」(越智部長)と言う。

「タッチサジェスト」の導入後、スマホサイトの訪問者1人あたりの滞在時間が1.5倍に増加した。「検索しやすくなったことで、滞在時間が増えたと考えられる」(同)と分析している。

コンバージョン回z線 検索体験の向上サイト内検索をgooサーチに変更スマホの検索補助タッチサジェストを開発表記揺れに強くなり、検索経由CVR85%向上一人あたりPVが1.5倍アップ
ナノ・ユニバースが取り組んだサイト内検索に関連するCVR改善のためのアクションなど

AIが検索結果を自動最適化

「goo Search Solution」の特徴の1つとして、人工知能(AI)が検索ログを読み込んで検索結果を自動最適化する機能があげられる。ユーザーが入力した検索クエリやクリックした項目、購入まで至っているか否かといった情報をベースに、「検索エンジンが最適な検索結果を学習し、表示順位を決定する」(北岡氏)。

EC事業者が検索エンジンの表示結果をメンテナンスしなくても、「ユーザーが最もクリックしやすい検索結果」を自動で生成するため、運用の負担が軽いこともメリットとなる。

最適化した検索結果 ログ解析 貴社ECサイト検索ログ ユーザー行動ログ 何を検索したか 何をクリックしたか 何を購入したか
ユーザーの行動ログを分析し、最適な検索結果を学習する

ECサイトを「メディア化」する理由

ナノ・ユニバースは近年、ECサイトで掲載する画像の充実化、読み物コンテンツを頻繁に更新したりすることで、「ECサイトのメディア化」を進めている。

ECサイトのメディア化を進める理由は、アパレル製品を購入する前にインターネットで商品情報を検索する消費者が増え、ブランドイメージはある程度Web上の情報で決まってしまうと考えているためだ。

1枚1000円以下でも服が買える時代に、弊社のECサイトで1万円の服を買ってもらうためには、Webを通じて「ブランドの価値」をしっかりお客さまにアピールしなくてはならない。(越智部長)

越智部長が特に重視しているのは、ECサイトの写真のクオリティー。社内にコンテンツ制作部門を設置し、写真撮影チームは14人(カタログ用など含む)、Web制作チームは8人、動画チームは4人を配置するなど、コンテンツ制作に手厚い布陣を敷く。

ECサイトにおけるクオリティーの高い写真とは、どのようなものか。ナノ・ユニバースは客観的な基準で写真のクオリティーを判断できるように、サムネイルや商品写真ごとにクリック率やコンバージョン率を計測している。

さらに、写真を入れ替えながらクリック率(CTR)のABテストを行うなどして、PDCAを徹底。クリックされやすい写真の特徴を言語化して社内で共有し、「感性に頼らず、クリックされやすい写真を作るノウハウを社内に蓄積している」(越智部長)。

感覚と数値で写真を改善 画像差し替えによる効果検証
写真のCTRを計測し、画像を差し替えながらABテストを実施している

ECと実店舗が連動してロイヤルカスタマーを育成

越智部長は今後、「ECと実店舗を組み合わせてロイヤルカスタマーを増やしていく」と強調する。

ナノ・ユバースのロイヤルカスタマーの約90%は、実店舗で会員登録しているという。また、実店舗とECの両方を利用している会員の年間購入額は、顧客全体の平均と比べて約3.5倍。さらに、ナノ・ユニバースのWeb上のコンテンツを見てから来店する会員の店頭でのCVRは、Web上のコンテンツを見ずに来店した場合の約4倍に達するという。

こうした現状を踏まえ、ナノ・ユニバースは「ECサイト経由で実店舗に来店する会員」を増やすことを重視。2017年11月には公式アプリをリニューアルし、ECサイトで「お気に入り登録」した商品が店舗に入荷されるとプッシュ通知する機能を実装するなど、オンラインから実店舗へと誘導する仕組みを強化している。

また、WEB事業部では、ECサイトを閲覧してから実店舗に来店した会員の、購入金額や購入率を経営指標に設定しているという。

ファッションECは飽和が始まっており、今後はますます新規獲得が難しくなる。ロイヤルカスタマーを育てていくことが重要になっており、そのためにECと店舗の相乗効果を狙っていく。(越智部長)

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