石居 岳 2021/3/30 9:00
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新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、新規顧客とサイトアクセス、売り上げが“爆増”したECサイトがある。菓子・パン作りの材料や道具のネット通販などを手がける株式会社cottaが 運営するECサイト「cotta(コッタ)」だ。巣ごもり消費を捉え、2020年9月期の売り上げは2ケタ増。その後も右肩上がりで売り上げが伸びているという。「cotta」では何が起きたのか? 新規顧客急増の背景、アクセス増をコンバージョンにつなげる施策など、売り上げ“爆増”の裏側を取材した。写真◎吉田 浩章

ネット通販、レシピ、BtoB、メディアなどを展開する業界最大級のECサイト「cotta」

「cotta」は菓子・パン作りの材料や道具のネット通販、菓子やパンのレシピコンテンツを展開する日本最大級のECサイトである。月間アクセス数は約2900万PV(2020年2月時点)、会員数は119万人(2020年9月時点の個人、法人、モール、ゲスト会員の合計会員数)、SNSフォロワーは87万人(Facebook、Instagram、Twitter、LINE、Pinterest、YouTubeのフォロワー数の合計)にのぼる。

菓子・パン作りの材料や道具ジャンルでは日本最大級のECサイト「cotta」
菓子・パン作りの材料や道具ジャンルで日本最大級のECサイト「cotta」

cottaの2020年9月期連結売上高は前期比22.8%増の78億6000万円。cotta単体では現在、主に4事業を手がけており、最も業容が大きいのはBtoC事業。個人顧客や個人店を対象としたECサイト「cotta」を運営し、菓子やパン作りに必要な食材、道具、ラッピングアイテムを販売。2020年9月期のBtoC売上は33億円で前年比56%増と大幅に拡大した

cottaの2020年9月期連結業績について
2020年9月期連結業績について

このほか、「cotta」と同一のプラットフォーム上で運営する法人会員向け「cotta business(コッタビジネス)」などのBtoB事業を展開。全国の菓子・パン店・飲食店などに、食材から道具までをワンストップで販売している。

3つ目はメディア事業。月間アクセス数約2900万PVのトラフィックを活用し、クライアント企業のプロモーションやPRを支援するサービスや、自宅にいながら受講できる菓子・パンの通信講座、一流のパティシエや料理研究家によるオンラインレッスンを手がける。

cottaの売上高推移と商品と、主力チャネルの変遷
cottaの売上高推移と商品と、主力チャネルの変遷

ECサイト「cotta」が業界最大級と評されるゆえんの1つに、PB(プライベートブランド)商品の展開があげられる。成長が鈍化した2013年。仕入れ商材の販売がメインだったcottaは「商品力」の不足に気付く。独自性のある商品をそろえるために、オリジナル商品の開発を強化。このPB商品が2020年の新規顧客、売上増の“起爆剤”となる。

現在約3万点のアイテムを販売しているが、その約半分はPB商品だ。自社でイチから企画して製造・加工しており、売上高に占めるPB比率は年々上昇。お客さまが繰り返し買い物する大きな要因となっている。新規顧客も同様で、最初に購入する商品のジャンルにおいてもPB比率は高い新規顧客獲得という意味での入口商品、かつLTV(顧客生涯価値)向上につながる重要な商材になっている。(cotta EC事業マネージャー・黒須則彦氏)

ボウルに関するメーカー商材とcottaのPB製品の比較 cotta
ボウルに関するメーカー商材とcottaのPB製品の比較

1年で49万人の新規会員増加、「新たな気付き」「攻めの戦略」「課題」を得たTVCM

消費行動の大きな変化が起きた2020年。cottaは巣ごもり消費などの需要を獲得するため、初の試みとなるテレビCMに着手した。このテレビCMは、「新たな気付き」「攻めの戦略」を採用する契機となった一方、顕在化した課題の解消など、ビジネス面での大きな転換期となる。

話をテレビCMに戻そう。マスマーケティングの効果は絶大的で、BtoC事業の新規会員は1年で49万人増加2020年9月期末時点の累計会員数は119万人まで拡大した。

初のテレビCMは2020年1~2月、福岡県を対象にテストマーケティングの位置付けで実施。その後に行った消費者アンケート調査によると、テレビCMで「cotta」を認知して「使ってみたい」という顧客層は、既存顧客層の7.3倍に増加テレビCM実施後の「cotta」の認知率は、放送前9.0%から25.9%に向上した

cotta初のテレビCMは九州の一部地域で放映したほか、インターネットでも配信した。テレビCMはバレンタイン商戦でのcottaの認知度向上を図る狙いもあり、バレンタイン需要期(1/20~2/14)における新規会員登録件数は過去最高を記録。「売り上げも順調に推移するなど、一定の効果を得ることができた」(黒須マネージャー)

cotta 初回のテレビCMについての調査
初回のテレビCMについての調査

テレビCMは認知度の向上やアクセスの増加につながったが、想定よりも売り上げは伸びなかったという。つまり、新規訪問客の伸びに対して、計画よりもコンバージョンにつながった件数は少なかった。

黒須マネージャーはメンバーとその分析を急いだ。出した仮説は、新規のアクセスが増えても「買いやすい商品がないからコンバージョンにつながっていないのではないか」。そこで、新規訪問者をコンバージョンにつなげるためのキット商品が必要と判断。そして、巣ごもり消費が加速した2020年5月の緊急事態宣言中、1万人にパンキットを無料進呈するキャンペーンを実施した。

cottaにとって初のパンキット商品。大きな反響があった。その影響を受けて2020年9月、再度無料パンキットのテレビCMを実施。約25万人の新規会員を獲得した。

2020年夏のテレビCMにおける新規の会員登録数は約25万人で、商品購入にもつながったブランド認知度は向上し、製菓材料通販カテゴリにおける純粋想起率は大手通販サイトを抑え1位となった。その後、「cotta」の指名検索も上昇した。テレビCMを実施する前からデジタルマーケティングの投資は増やしているが、マスマーケティングの影響を受けて刈り取りが促進できており、テレビCMの効果は大きいと感じている。(黒須マネージャー)

2020年9月に実施したテレビCMに関する調査 cotta
2020年9月に実施したテレビCMに関する調査

バケツに穴が開いている状態の「cotta」。真水がほぼ出てしまう課題

cottaのテレビCMは、「菓子作りをしたい」という気づきのない潜在ユーザーに対して菓子作りニーズを喚起、顕在化したユーザーをコンバージョンにつなげるという戦略だ。

だが、テレビCMでアクセス数や新規会員ボリュームは増えたものの、一定のコンバージョン獲得、継続利用といったLTVの向上といった点には大きな課題が残った。この先、2024年9月期までに約25億円のマーケティング投資を計画するcotta。テレビCMで浮き彫りとなった課題解消は急を要した。

cottaは中期経営計画で売上高100億円の会社をめざすことを掲げた。テレビCMでニーズを創造し、デジタルマーケティングでコンバージョンにつなげ、CRMでLTVを引き上げる戦略を策定。これは、これまでの戦略からの大きな転換となった。テレビCMがきっかけで浮かび上がった課題の1つが「サイト内検索」「cotta」はバケツに穴が開いている状態で、テレビCMで真水をどんどん入れても、その多くが出ていってしまう状況。すぐにふさぐ手立て対策を考えた。(黒須マネージャー)

cotta EC事業マネージャー・黒須則彦氏
cotta EC事業マネージャー・黒須則彦氏

2020年8月まで使っていたサイト内検索は、「既にAIを活用したものを導入しており、検索性能としては悪くはなかった」(黒須マネージャー)。だが、安定性に欠けており、障害が頻発。2020年2月にテレビCMを行った際も、サイト内検索で障害が発生した。気づいてから復旧までは相応の時間を要し、サイト内検索が未稼働の状態でテレビCMの放映が続いた。

この反省点を踏まえ、「安定している『サイト内検索サービス』を実装したかった」(黒須マネージャー)。ただし大前提として、ユーザーの検索ワードに対して正しい検索結果を返すリクエストの精度も重要視し、サービスを選定した。

サイト内検索は、表示ロジックのチューニングなどの負担が大きい。「なぜこの検索ワードでこの商品が表示されないのか」など、気軽にサービス提供企業に問い合わせした場合の対応力などは重要視した。コミュニケーションのしやすさや回答の精度は、導入後の運用や今後の機能追加を考えた場合、とても重要だと感じていた。(黒須マネージャー)

「サイト内検索サービス」の選定を始めたのは2020年3~4月。「サイト内検索」を提供するベンダー各社のサービスを比較検討、実際に各社のサービスを導入している企業のECサイトを使うなどの検証を行った。検索の精度や正確性、それを裏付けるロジックなどを比較・検討した結果、NTTレゾナント(現在はNTTドコモ)の「goo Search Solution(グーサーチソリューション)」の導入を決めた

選定期間は約2か月。導入決定後の開発着手から4か月で新しいサイト内検索をローンチした。

「goo Search Solution」の特徴
cottaが導入した「goo Search Solution」の特徴(画像およびテキストリンクをクリックすると、「goo Search Solution」のページにジャンプします)

「goo Search Solution」でCTR、CVRの大幅改善を実現

「goo Search Solution」は、導入するECサイトに蓄積するユーザーの行動ログを学習し、検索結果を常時最適化するのが特徴だ。またポータルサイト「goo」で24年間にわたって蓄積した「表記ゆれ辞書」が利用できるほか、導入企業のログからも自動でサイト独自の「表記ゆれ辞書」を生成。人の手では対応できない部分の表記ゆれまでサポートする。

どのようなECサイトでも、サイトの特性やユーザーの行動はすべてログに蓄積される。このユーザーの行動ログをAI(人工知能)が解析することで、「サイトの特性を反映した」検索結果の提供が可能だ。検索の基本である高速レスポンス、サイト独自の仕様や新機能などの要望に柔軟に対応している。

「goo Search Solution」はAIがログから表示結果を最適化する
「goo Search Solution」はAIがログから表示結果を最適化する

「goo Search Solution」を導入した「cotta」では、ゲスト購入、会員購入、レシピコンテンツ、ラッピング、法人会員向け「cotta business」というKPIの5項目すべてで、サイト内検索結果からのCTR(クリック率)が改善。特にレシピコンテンツでは導入前(2020年9月)の45.7%から2021年2月には54.3%へと8.6ポイント改善している。

上述のKPI5項目のCTRは、右肩上がりで改善し続けている。これは「goo Search Solution」の導入から数か月経過し、AIが「どのキーワードで検索された時」に「何の商品を出すべきか」を学習し続けその効果が顕著に表れてきているのだ。

従前のサイト内検索でも、AIを活用していたため、その精度に大きな差異はないと考えていた。しかし、検索エンジンを入れ替えたその成果は、想定とは異なり大きく改善したのだ。「goo Search Solution」ではAIがすべてサイト内検索の表示結果を最適化しているため、cotta側で手運用を一切していないスタッフの作業を増やすことなく、コンバージョンに直結する数値を改善――。こんな理想的なECサイト運用を実現した。

cotta レシピ、ラッピングのCTR推移
レシピ、ラッピングのCTR推移

個人、法人に適した検索結果を表示するパーソナライズを実現

ECサイトの「バケツの穴」をふさぎ、買い物体験の向上を実現するために「goo Search Solution」を選定したわけだが、cottaは他のECサイトよりも優れたCX(カスタマー・エクスペリエンス)を追求するため、ユーザーごとに検索結果を最適化する「パーソナライズ機能」も導入した

パーソナライズ機能は、「cotta」を使う個人ユーザーや個人店、法人会員でそれぞれ、サイト内検索の表示結果が変わるという。

訪問者の購入や閲覧の履歴から興味や関心を分析。たとえば、個人客、法人もしくは個人店が同じキーワードで商品を検索しても、ユーザーごとに表示される商品が異なるのだ。

菓子屋さん、パン屋さん、カフェ、飲食店など、cottaが重視している業種・セグメントごとに分類、検索した結果を学習させるという提案を受け、採用した。同じワードをサイト内検索に入れても、分類した業種・セグメントごとにコンバージョンしやすい上位表示する仕組みを構築した。機能としても見え方としても同じ「サイト内検索」だが、確実に成果が変わっている。(黒須マネージャー)

たとえば小麦粉。個人ユーザーが小麦粉を「cotta」のサイト内検索で探した場合、1kgや2.5kgのサイズの小さい商品が上位表示される。これが個人店や法人会員になると、25kgなど大きなサイズの小麦粉が上位表示されるのだ。

cotta 個人が「小麦粉」とサイト内検索で表示されると、1kgや2.5kgの商品が上位表示される
個人が「小麦粉」とサイト内検索で表示されると、1kgや2.5kgの商品が上位表示される

「パーソナライズ機能」を導入した結果、コンバージョン率(CVR)は大きく改善。法人会員向け「cotta business」では、2020年9月に3.0%だったCVRが2020年12月に4.8%へと改善した。

cotta 法人向け商品検索経由のCVRの推移について
法人向け商品検索経由のCVRの推移について

こうした「goo Search Solution」の「パーソナライズ機能」を活用するcottaの取り組みについて、NTTレゾナントの北岡恵子氏(スマートナビゲーション事業部)は次のように話す。

同じサイトを訪れるユーザーでも、年齢や性別、場合によっては地域や趣味嗜好などで消費の傾向は異なる。こういったサイトの特性に合ったセグメントごとの傾向を把握しサイト内検索サービスへ反映すると、コンバージョンに影響が出てくる。(NTTレゾナント スマートナビゲーション事業部 北岡恵子氏)

NTTレゾナント スマートナビゲーション事業部 北岡恵子氏
NTTレゾナント スマートナビゲーション事業部 北岡恵子氏

CVに大貢献のレシピコンテンツ、「鮮度」よりも出会いを創る「おすすめ度」が重要

cottaのECサイトには、コンバージョンに寄与する競合にはない特徴がある。それはレシピコンテンツだ。サイト訪問者のコンバージョンに貢献している全体のコンテンツの内、レシピが占める割合が圧倒的に高いという。

レシピコンテンツでは、菓子やパンの種類、特集などさまざまな切り口のレシピを配信しているcotta
レシピコンテンツでは、菓子やパンの種類、特集などさまざまな切り口のレシピを配信している

「cotta」のユーザー行動で一般的なのは、特定商材の目的買いではなく、「何を作ろうか」と考えてECサイトを訪問、レシピを確認してから材料や道具を買うというもの。「何か作ろうか」というユーザー行動を解決するのがレシピコンテンツであり、すぐにその目的を実現する場としてECが機能し、コンバージョンに大きく寄与しているという。

「goo Search Solution」は商品だけではなく、レシピコンテンツにも実装。キーワードに適したコンテンツを検索結果として表示できるようにしている。「cotta」のレシピコンテンツを軸とした商品購入導線に、「goo Search Solution」導入が大きな変化をもたらした。

「goo Search Solution」の実装でレシピの活用法が大きく変わった。以前のレシピは、鮮度が重要だと考えていたため新着順で記事を表示していた。既存のお客さまには、新しいレシピとの出会いが重要だと考えてきたためだ。テレビCMによって新規訪問者や顧客が急増。その人たちにとって大事なのは「出会い」。総合的に考えて、鮮度よりも「作ったら喜んでもらえるレシピ」との出会いが重要ではないかと考えた。コンテンツに関するデフォルトの表示順を、新着順から「goo Search Solution」の推奨する「おすすめ順」に変えた。(黒須マネージャー)

cotta 「小麦粉」でサイト内検索した際のイメージ
「小麦粉」でサイト内検索した際のイメージ

その効果として上述したレシピコンテンツにおけるCTRの8.6ポイント改善にもつながった。「キーワードと関連する良いコンテンツ(ユーザーの行動を喚起するコンテンツ)が上位に表示されるようになった。会員層が広がりそのユーザーニーズに対応できた」(黒須マネージャー)

cotta テレビCM起点がレシピコンテンツの展開方法を変えた
テレビCM起点がレシピコンテンツの展開方法を変えた

また、「cotta」におけるロイヤルカスタマー創出の道筋も見えてきた。

テレビCM起点で展開しているキット商品はあくまで新規顧客を獲得するための入り口商品であり、それだけではロイヤルカスタマー化しない。テレビCM、キット商品の開発、サイト内検索サービスの改善などから見えてきたことは「体験の重要性」だった。

自分でイチから菓子やパンを作り、家族や友人に喜んでもらえる経験がロイヤルカスタマーにつながることがわかった。cottaにとってはこの体験の提供が極めて重要になる。キット製品などをきっかけに訪問してきたユーザーが「何か作りたい」といった時に、最適なレシピコンテンツを提供。興味・関心などを想起し、ほしい商品はサイト内検索ですぐに表示される、購入できる――。こんな体験の提供がロイヤルカスタマー化には重要になる。(黒須マネージャー)

「cotta」で扱う商品アイテム数は3万点超、レシピコンテンツもある。そのため、ユーザーは「目的の商品やレシピへすぐにたどり着きたい」「買い物で失敗したくない」といった消費心理が働いているのだろう。それを踏まえ北岡氏はこう説明する。

ロイヤルカスタマー化の実現には、ECサイトでの細かな気配りも重要になる。3万点以上の商品、加えてコンテンツが掲載されていると、その実現は容易ではない。大幅なリソースを増やすことなく買い物体験を向上するECサイトの実現には、AI活用が1つの手段となるだろう。(北岡氏)

cotta EC事業マネージャー・黒須則彦氏とNTTレゾナントの北岡恵子氏
インタビューはcottaの東京支社で行った
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