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公正取引委員会と経済産業省が2月後半以降に始める、ECなどのプラットフォームとそこに出店する企業の取引実態調査。注目したいのは、調査に公取委が名を連ねていること。遡ること約10年前。公取委は大手ECモールと出店者の取引間には、優越的地位の乱用などで独占禁止法違反につながる恐れがある取引関係が存在すると指摘した調査報告書を発表しました。約10年の期間を経て動き出した公取委。過去の出来事などを振り返り、その“なぜ?”などについて探ってみます。

調査は2通り、ヒアリングと専用サイトでの意見募集

共同調査の目的は何なのか? 公取委と経産省に聞いてみました。

公取委

編集部:今回の共同調査の目的は何ですか?

公取委:ネット業界は技術の進歩が早く、その実態を把握する必要があると判断したからです。

編集部:どんなことを調査するのですか? 調査対象はネット通販のプラットフォームも含まれますか?

公取委:オンラインビジネスに関連するプラットフォーム事業者と、そこで取引関係にある出店者などです。期間が限られるので20~30社程度のヒアリングになるのではないでしょうか。
(経産省のサイトによると、一般的なインターネット検索エンジン、特定の情報に関する検索ツール、位置情報など提供サービス、ニュースサービス、オンラインマーケットプレイス、オンライン広告、映像・音楽プラットフォーム、動画共有プラットフォーム、決済システム、ソーシャルネットワーク、アプリストア、シェアリングプラットフォームなどが対象

編集部:過去に公取委は大手ECモールと出店者の取引関係に独禁法上の問題がある恐れがあるとの報告書を公表していますが、その流れを受けた、というのはありますか?

公取委:それはありません。過去の調査からは期間が経っていますから、改めて実態を調べるというところです。

経産省

編集部:経産省さんは情報提供受付専用サイトを2月16日にオープンしますが、ここで得た情報はどうするのですか?

経産省:広く取引実態を把握するためです。

編集部:専用サイトで受け付けた情報は、公取委と共有するのですか?

経産省:どんな取引実態があるのか共有していくことになると思います。

編集部:もし取引関係に問題があったら公取委は調査をするんですか?

経産省:そうなる可能性はあると思います。

今回の調査は出店者などにヒアリングを行うことと、経産省が用意した「情報提供受付専用サイト」で意見を広く受け付ける、という2通りの方法。

2月16日にオープンした「情報提供受付専用サイト」(経産省のサイトにジャンプします)を見ると興味深いものが。取引内容に関して入力する項目で、「取引上の課題」が“必須”となっているのです。

公正取引員会がプラットフォームと出店者の取引を再び調査する理由①
出典は経産省の情報提供受付専用サイト

その内容を見てみると……。独占禁止法上、問題となる行為がないかを調査するような設問が並んでいます

  • 一方的に取引の条件を決定・変更される
  • 一方的に取引を拒絶される
  • 特定の決済ルートを強制される
  • 関連技術に係る情報の開示を要請される
  • 関連する特許権を行使しないよう要請される
  • 競合する他の事業者との取引を行わない、または停止するよう要請される
  • 製品の製造販売等につき標準必須特許に基づいて差止請求を行うことを示唆される
  • その他

プラットフォーム事業者とその店子の取引実態の課題・問題を広く受け付け、公取委が2006年に公表した「電子商店街等の消費者向けeコマースにおける取引実態に関する調査報告書」のような取引実態を把握する狙いがあると考えられます。

実際、経産省と公取委が共同で調査を行う理由としてあげた「実態の把握」は、本音でしょう。

過去の調査が行われたのは約10年前。当時と比べると市場規模は一気に拡大し、ネット通販が当たり前のショッピングツールとなりました。また、プラットフォームに出店する事業者は、数万、数十万といった規模にまで拡大。過去の調査では名前があがっていなかったプラットフォームも勢力を広げています。

加えて、スマホアプリ専用サービス、CtoC、越境ECなど新たなサービスも台頭するなど、商環境はガラリと変わっています。

約10年前の調査では、プラットフォームと店子の取引関係に問題なしと判断

ここで公取委が過去に行った調査について振り返ってみます。遡ること2006年の年末。公取委は「電子商店街等の消費者向けeコマースにおける取引実態に関する調査報告書」(国立国会図書館が保存した公正取引員会のページのPDFにジャンプします)を公表しました。

そこで公取委は、大手モール3社とその出店者の取引関係には、「優越的地位の濫用」「拘束条件付取引」など、独占禁止法に抵触する恐れがある取引の存在があると指摘しました。

当時の取引関係について公取委はこう説明しています。

当時、大手モール上位3社と出店事業者の事業規模には格差があり、また、上位3社に取引が集中している状況にあるところ、出店事業者は一般的に電子商店街における取引への依存度が高く、取引先である運営事業者を変更することが困難な場合があり、上位3社の中には、出店事業者に対する取引上の立場において優位に立つ場合がある事業者がある。

公正取引員会がプラットフォームと出店者の取引を再び調査する理由②
大手モールとその出店者の取引依存度(出典は2006年公表の公取委の報告書)

これらのことを踏まえ、報告書のなかで取引実態について独占禁止法上の評価を指摘したところ……

  • ダイレクトメール送付などの影響活動の制限
    → 退店後もダイレクトメール送付などの営業活動が制限されることは拘束条件付取引となり得る
  • 手数料率の一方的変更
    → 出店事業者にとって不当に不利益な手数料率の設定を行う場合は、優越的地位の濫用につながるおそれがある
  • 過大なポイント原資の賦課
    → 実際には使用されないポイント分の原資まで出店事業者に負担を課すようなポイント制度の運用で、出店事業者に不当に不利益を課す場合は、優越的地位の濫用につながるおそれがある
  • カード決済代行業務の利用義務付け
    → 個人情報保護のために必要な制限とはいえないにもかかわらず、カード決済代行会社の利用を義務付けるなど、出店事業者に不当に不利益を課す場合には、優越的地位の濫用につながるおそれがある
  • 定価販売の遵守、値引販売の禁止
    → 値引販売を禁止したり、販売価格や最低販売価格の指示をしたりすることは、再販売価格の拘束の可能性がある

といった内容が盛り込まれました。

公正取引員会がプラットフォームと出店者の取引を再び調査する理由③
公取委が過去に示した独禁法上の留意点(出典は2006年公表の公取委の報告書)

公取委は資料公表後、調査を継続しました。最終的な結論として2007年、大手モール事業者と出店者の間の取引関係について、独占禁止法に抵触する問題はないとの結論を出し、“シロ”判定を下しています。

関係事業者においては、本件調査結果を踏まえ、取引慣行を点検し、競争制限的な慣行を見直すなど、消費者向けeコマース全般の適正化を図ることが必要である。

公正取引委員会は、消費者向けeコマースにおける取引慣行全般について、公正かつ自由な競争の促進の観点から、今後とも引き続きその動向を注視していくこととする。

2006年の調査報告と現在のEC業界はガラリと変わりました。まだまだ大きくなるEC市場なので、今回調査が健全な業界発展に役立ってほしい、と願うばかりです。

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瀧川 正実

ネットショップ担当者フォーラム編集部 編集長

通販・ECに関する業界新聞の編集記者、EC支援会社で新規事業の立ち上げなどに携わり、現在に至る。EC業界に関わること約13年。日々勉強中。

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